ふるいを通過した要件も、なお検討が必要です。ここから解きほぐしに入ります。
その前に1つ。「これは目的、これは手段」という仕分けから始めると、大抵行き詰まります。目的と手段は、要件に貼り付いた絶対的な属性ではないからです。「原価○円以内」という要件は、採算から見れば手段ですが、部品選定から見れば目的になります。
ここでやることは仕分けではありません。要件の階層を1段ずつ上げていくことだけです。
例えば「厚さ10mm以下」という要件なら、「ポケットに入れても邪魔にならないこと」まで上げます。その先の「毎日持ち歩いてもらうため」まで行ってしまうと、開発部門だけでは答えられなくなり、しかもその目的ならどんな手段でも通ってしまいかねません。答えられる人が変わるところで止めるのが目安です。
もう1つの目安は、ぶつかっている相手の要件と同じ高さにそろうまでです。片方だけを上げても、比べることができません。
そして、聞き方も重要です。「なぜ10mmなんですか」と聞くと、相手は理由を守る答えに回りがちです。「10mmを外したら、誰がどう困りますか」と聞けば、困る人と困り方――つまり目的が出てきます。
高さをそろえると、別々の要件だと思っていたものが、実は同じ目的から降りてきた別の手段だった、というケースが出てきます。こうなれば、問題は「両方を立てる」から「どの手段を採るか」に変わります。両方を70点ずつ採用する必要はありません。
マージを終えると、目的のレベルで本当にぶつかっているものが残ります。多くの場合、四方から殺到していた要件の山は、決着をつけるべき1つか2つの論点にまで絞り込まれるのです。
ここで社内の議論だけで優先順位を決めれば、声の大きさと役職で決まってしまいます。連載第2回で述べた「形のない言葉の空論」への逆戻りです。目的のレベルで競合が残っているということは、どちらを優先すべきかがまだ分かっていないということですから、議論だけでは答えが出ません。それは意見の対立ではなく、未検証の仮説です。
まず確かめるのは、外れたら製品が成り立たず、かつ正しいか自信がないものです。そして合否ラインは、確かめる前に決めておきます(この点は次回詳しく扱います)。
ここまでの手順そのものは、聞けば当たり前に思えるでしょう。差がつくのは、誰がそれをやれるかという点です。
他部署が強く主張する要件を正面から疑えば、角が立ちます。それが分かっているから、多くのPMは疑えません。そこで私たちは、疑うのではなく、同じ目的を満たす別の手段を「形」にして見せます。簡単な図解でも、粗いモックでも構いません。否定ではなく選択肢の追加として渡せば、相手は自分の判断で元の要件を手放すことができます。
別案を出しても、作れるのか、いくらかかるのかが分からなければ、絵に描いた餅になってしまうでしょう。意匠(いしょう)と筐体(きょうたい)設計の担当者が同じチームにいれば、「では分離型にしたら」と案が出たその場で、コストと工法の当たりがつきます。ここで判断が止まらないことが、実務では欠かせません。
PMがご自身でこれをやるなら、代案を出す前に「その案が成立するかを即答できる人」を1人だけ同席させておくとよいでしょう。全員を集める必要はありません。
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