オートデスクの3D CAD「Inventor」とデル・テクノロジーズのワークステーション「Dell Precisionシリーズ」を用いて、実務で重要となるファイルオープン、描画品質、レンダリングのパフォーマンスを検証した。
設計現場を取り巻く環境が変化している。顧客ニーズの変化や多様化により、これまで機械設備の設計がメインだった産業機械業界は機械設備を含めた生産ライン全体、工場全体を対象とする大規模設計にシフトしつつある。その結果、設計者が取り扱うデータの規模や種類も増え、従来の3D CADモデルだけでなく点群やBIM/CIMへの対応が急務となっている。
そこで必要になるのが3D CADモデル、点群、BIM/CIMといった各種3Dデータに対応し、大規模モデルでもストレスなく扱える設計環境だ。プレゼンテーション資料やカタログの制作といった設計以外の領域で3Dデータを活用したいというニーズも高まっており、マルチな対応が可能な設計環境が強く望まれている。
このような要求に対し、業界標準のソフトウェアやサービスを長年手掛けてきたオートデスクは製造業、建設/土木、メディア&エンターテインメントの各業界固有の業務に適したソフトウェアとサービスを1つにまとめた「業界別コレクション」を展開するなど、3Dデータの生成から活用まで一気通貫で支援する環境を提供している。
オートデスク 日本地域営業統括 技術営業本部 業務執行役員 本部長の加藤久喜氏は「われわれは40年以上にわたる『AutoCAD』の歴史の中で、常に設計者のニーズを捉え、それを製品に反映し続けてきました。業界別コレクションには、今見えている課題を解決できるソフトウェアやサービスだけではなく『設計者が次にやりたいこと』が実現する製品も含まれており、ステップアップしながら3Dデータ活用の幅を広げられます」と説明する。この理念に基づいてオートデスクが製造業向けに展開する3D CADソフトウェアが「Inventor」だ。
Inventorは製造業の設計現場で20年以上の実績を誇る。部品点数が多い機械設備の設計や流用設計はもちろん、大規模モデルの扱いにも優れ、配管や配線といった業界専用の機能や図面化機能などを網羅している。最新版の「Inventor 2024」ではファイルオープンや描画などのパフォーマンスの向上、クラウドベースの3D CAD、CAM、CAEソフトウェア「Fusion 360」やBIMソフトウェア「Revit」との連携などが強化されている。「大規模モデルを扱う上で、設計者の生産性に直結するパフォーマンスの向上は重要なテーマだと認識しており、バージョンアップのたびに改善してきました」とオートデスク 技術営業本部 製造アカウント 技術営業エンジニアの松本哲氏は述べる。
大規模モデルでも優れたパフォーマンスを発揮するInventorだが、その性能を最大限に引き出すためにはハードウェア環境が重要となる。特に部品点数が10万点を超えるモデルを扱う場合は、CPUやメモリ容量の違いがパフォーマンスに現れる。忠実度が高いレンダリングを施す際はGPU性能の差が処理時間を大きく左右する。
Inventorを利用する上で、ワークステーションの性能がどの程度パフォーマンスに影響するのか。デル・テクノロジーズのワークステーション「Dell Precisionシリーズ」のタワー型製品「Dell Precision 3660 Tower」とモバイル型製品「Dell Precision 3581」を用いて、実務での生産性に大きく影響するファイルオープン時間、描画品質、レンダリング(レイトレーシング)時間についてベンチマークテストを実施した。
最初に、前バージョンの「Inventor 2023」とInventor 2024のファイルオープン時間を比較した。検証に用いた機種はDell Precision 3660 Tower(CPU:インテル Core i7-12700 プロセッサー、メモリ:32GB)だ。部品点数が4万1041点(うちBIM用Revitデータ565点)、ユニーク部品数が2341点(うちBIM用Revitデータ32点)、点群データが154万8931ポイントで、1.25GBにもなる大規模モデルのファイルを用いた。
その結果、Inventor 2023は21.03秒、Inventor 2024は19.24秒となり、Inventor 2024にするだけで約9%の時間短縮効果が得られることが分かった。
続いて以下の機種でInventor 2024のファイルオープン時間を比較した。部品点数12万1434点の大規模モデルを用いた。
検証の結果、いずれの機種でも50秒以下という良好なパフォーマンスが得られた。最も速かったのがDell Precision 3660 Tower(CPU:インテル Core i7-12700 プロセッサー、メモリ:64GB)の41秒だ。
ここで注目したいのは、43秒台を記録したモバイルワークステーションのDell Precision 3581だ。
この結果について、デル・テクノロジーズ クライアント・ソリューションズ統括本部 アウトサイドスペシャリスト部長の中島章氏は「Dell Precision 3581はエントリークラスのモバイルワークステーションでありながら予想以上に健闘してくれました。性能を重視したCore Hシリーズを採用した結果と言えるでしょう。GPUに関してもメインストリームの『NVIDIA RTX A2000』を搭載できるため、幅広い活用が見込めます」と自信を見せる。
続いて、Inventor 2024で大規模モデルの回転や移動時の描画品質を検証した。使用した機種と対象のモデルは「ファイルオープン時間の検証」と同じだ。
検証の結果、いずれの機種でもモデル回転中にポリゴン化や操作遅延などは起こらず、詳細なモデル表示のままでレビューできることが分かった。モデルの断面移動表示も同様の結果が得られた。「Dell PrecisionシリーズとInventor 2024の組み合わせであれば、大規模モデルでも表示崩れや遅延なしで回転、断面移動表示などができるため、デザインレビューやプレゼンテーションにも十分にご活用いただけます」(加藤氏)
Inventor 2024には光の反射や屈折まで忠実に再現し、フォトリアリスティックなレンダリングを施せるレイトレーシング機能がある。GPU性能によるパフォーマンスの違いを確認するため、GPUモードによるレイトレーシング処理の時間を検証した。対象のモデルは「ファイルオープン時間の検証」と同様で、検証に用いた機種は以下の通りだ。
結果、CPUのみを使用した場合(CPUモード)と比較して、いずれの機種でも「NVIDIA RTXシリーズ」の高い性能が発揮された。中でも「NVIDIA RTX A4500」「NVIDIA RTX A5000」を搭載した機種の結果が顕著だ。処理時間がCPUモードの約6分の1に縮まり、圧倒的な性能の違いを見せつけた。
ちなみに、Dell Precision 3660 Towerを用いた検証はグラフィックスカードの入れ替えを伴うものであったが、「工具など使うことなく筐体内の各種ユニットやパーツの交換が可能であるため非常に効率良く作業できた」と松本氏はメンテナンス性の高さにも太鼓判を押す。
検証結果を踏まえ、松本氏は「大規模モデルを扱ったファイルオープンや描画、レンダリング(レイトレーシング)など実務の生産性に大きく影響するシーンで、Dell PrecisionシリーズがInventor 2024のパフォーマンスをより一層高めてくれることが分かりました。高負荷作業で発生する処理待ち時間がぐっと縮まり、『待つのが当たり前』の状態から脱却して本来業務や新たなチャレンジに集中できるようになります。最適なツールの選定が生産性の向上や業務負担の軽減、さらなる3Dデータの活用につながるとあらためて感じました」と手応えを述べる。
パフォーマンスのさらなる向上のため、「Windows 11」への移行も検討したい。「Dell Precisionシリーズに搭載されている第13世代インテル Core プロセッサーはPコア/Eコアに効率的にタスクを割り当てることでシステム全体のパフォーマンスを引き出すハイブリッドアーキテクチャを採用しており、Windows 11と組み合わせることでその性能が最大化されます。Inventor 2024の利用においても、より高いパフォーマンスの向上を期待したいと思います」(中島氏)
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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2023年12月23日