仮想と現実のループ構築が大きな価値に PLM市場リーダーのモノづくり構想PLMシステム

日本を含めた世界的な需要増により、徐々に拡大しつつあるPLM市場。その中で特に大きな存在感を示すのが「Windchill」を手掛けるPTCだ。PLM市場のリーダー企業である同社の最新グローバル戦略について、シニアバイスプレジデントのマーク・ロボ(Mark Lobo)氏に聞いた。

» 2023年04月10日 10時00分 公開
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 製造業を取り巻く環境の変化が著しい昨今、多くの企業が競争力を高めるためにデジタル技術の活用に注力している。それには製品の企画、設計といったモノづくりの上流から開発、生産、販売、廃棄といった下流に至るまで、製品ライフサイクルに沿ったデータの一元管理が不可欠だ。これが、日本を含めたグローバル全体でPLMシステムの需要が増す理由だ。

 PLMシステムの市場は毎年約13%の拡大を続けている。その中でも過去4年間連続で20%という著しい成長率を記録しているのがPTCだ。GartnerやFrost & Sullivanなどのグローバル市場調査レポートでも、PTCのPLMシステム「Windchill」は非常に強力で優れたツールとして高い評価を得ており、同社は市場のリーダー的な存在として位置付けられている。同社の最新のグローバル戦略について、シニアバイスプレジデントでPLM製品管理担当のマーク・ロボ(Mark Lobo)氏に聞いた。

PTC シニアバイスプレジデント PLM製品管理担当のマーク・ロボ氏

激変する環境下でPLMが果たす3つの役割

 近年、製造業が最も影響を受けた環境変化といえば、まず挙がるのはコロナ禍だろう。COVID-19の拡大によるサプライチェーンの混乱を最小限にとどめるべく、レジリエンス強化が喫緊の課題となった。人々の行動様式そのものに多大な影響を与えた。現地現物主義が基本だった製造業にリモートワークやハイブリッドワークを普及させるなど、働き方にも大きな変化がもたらされた。

 こうした背景の下に製造業各社はDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる。その中でPLMシステムも変革に大きく貢献しているが、特に期待される役割が3つあるとロボ氏は指摘する。

 1つ目は社内外における円滑なコラボレーションの実現だ。社内においてはエンジニアリングチェーンとサプライチェーンを横断する形で情報を共有し合い、効率的で効果的なモノづくりを実現する。社外ではサプライヤーの情報をリアルタイムで適切に管理しつつ、企業間で協力し合って調達リスクを可能な限り減らせる仕組みをつくっていく必要がある。

 2つ目はコンカレントマニュファクチャリングの実践だ。生産手法の1つで、設計部門と生産部門が連携してモノづくりを進めることを指す。先に挙げた社内でのコラボレーションの具体例といえるだろう。より良いモノづくりを実現するには、設計データを工場に渡して終わりとするのでは十分ではない。各部門が連携して作業を進める必要がある。その点で、部門を超えた情報共有を容易にするPLMには大きな期待が寄せられている。

 そして3つ目が、フィードバックプロセスを考慮した「クローズドループ」の構築だ。企業内に情報が循環するサイクルを構築し、各部門で分断されていたデジタル情報を連携させてフィードバックし合うことで、生産の効率化や高水準の品質保証を実現する。

 クローズドループの主な活用領域として生産(CLM)と品質管理(CLQ)の2つがある。ロボ氏は特にCLQの重要性を指摘する。製品の構想企画や設計、生産、利用の各段階で製品品質を評価し、これによって得た品質に関する情報を生産、設計プロセスにフィードバックする。

 「電動化が進む自動車業界をはじめ、新たな規制対応やコンプライアンス管理が必要な企業にとってCLQは非常に重要です。ハードウェアやソフトウェアの品質に関わる情報を全てトレースすることが求められます。これによって、製品のライフサイクル全体の情報を生かして製品品質を向上させる取り組みが可能となるのです」(ロボ氏)

デジタルツインを通じた製品改善力の強化

 まさに今、PTCが注力しているのが製造業におけるクローズドループの強化だ。このために、2022年11月、アセット中心型のクラウドネイティブなフィールドサービス管理(FSM)ソフトウェアを提供するプロバイダーのServiceMaxを買収した。

 Windchillにはデジタル化されたさまざまな製品構成情報を記録、管理する仕組みがある。ServiceMaxは工場から出荷された各製品の状態モニタリングとサービスの情報を記録するシステムなどを提供する。両社のサービスを合わせることで、デジタル(仮想世界)の情報だけでなく製品が市場に出てからのフィジカル(現実世界)の情報を取得、管理できる仕組みを構築できるようになった。

 これによって、PTCは製造業のデジタルツイン実装をより効果的に推進する力を得た。デジタルツインはフィジカルの情報をデジタル上で再現するものだ。PTCのWindchillがデジタル側、ServiceMaxのソフトウェアがフィジカル側の領域をカバーして連携することで、製品のリアルタイム情報をデジタル環境に随時フィードバックできるようになる。製品の使用状況や品質といった最新情報が、設計や開発の現場で活用可能になる。製品のアップデートにつながるクローズドループの完成だ。

WindchillとServiceMaxの組み合わせによるクローズドループの強化[クリックして拡大] 提供:PTCジャパン

 ロボ氏は「ServiceMaxを通じて、より最適化されたサービスライフサイクル管理(SLM)領域の環境を顧客に提供できるようになりました。クローズドループの仕組みも進化し、アセットの情報をAI(人工知能)でまとめて把握、分析してデジタル側にフィードバックすることも可能です。今後、さらに製造のプロセスやサービスの改善、強化を推進していきます」と意気込みを見せた。

重要性高まる製造業のソフトウェア管理にも対応

 PTCは製品ライフサイクルを巡る他の最新テーマにも適宜対応している。そうしたテーマの1つがカーボンニュートラルだ。

 PTCはソフトウェアベンダーと提携して、WindchillでBOM(部品表)情報を基にしたカーボンフットプリントのトラッキングを実現している。GHGプロトコルのスコープ3のCO2情報を参照しつつ、設計段階から適切な部品選定が可能になる。最適な製品設計を生み出すジェネレーティブデザインも実現できるので、ユニットの部品を一部統合して数を減らすなどの形でもカーボンフットプリントの削減に貢献できるだろう。

 もう1つのテーマが、製造業におけるソフトウェア開発と情報管理の重要性の高まりだ。最新のモノづくりでは、ハードウェアを作り込むだけでなくソフトウェアを組み合わせて顧客に提供することが重要になっている。

 PTCは2022年4月にアプリケーションライフサイクル管理(ALM)に強みを持つIntland Softwareを買収した。同社のクラウド対応ALMソフトウェア「Codebeamer」をWindchillと組み合わせることで、製品のハードウェアとソフトウェアの情報を一元的に管理してテストやバリデーションに利用できる。

 「今後の製造業は、ソフトウェアを軸としたビジネスモデルの重要性が増します。ソフトウェアの性能を高め、品質を保証することは他社との差別化につながる。この点で、私たちのCodebeamerが貢献できると確信しています」(ロボ氏)

「Digital Transforms Physical」の未来に向けて

 グローバルに見て、日本のPLMシステムの導入率は高いとは決して言えない。ロボ氏は「日本の製造業は基本的にリスク回避型であり、事業の継続性強化を優先する傾向にある。この中でDXにつながる強い動きは生じにくかった」と指摘する。加えて、生産や設計、サービス部門など各部門で異なるシステムを使っており、スムーズな連携がなされていないという問題もある。

 しかし、以前と比べて日本の製造業でもPLMシステムのニーズは高まっており、トレンドの変化は確実に生じているという。「DXの取り組みは海外企業がかなり先行していますが、それらの事例は日本企業にとって大いに参考になる部分があると考えます。蓄積してきたグローバルのベストプラクティスをもって、私たちも日本の製造業を全力で支援します」(ロボ氏)

 製造業を取り巻く環境の変化は著しい。この変化の波を捉え、迅速に対応することが今後も引き続き重要になる。そのためには製品の企画から生産、販売、廃棄まで製品ライフサイクルに沿ったデータの一元管理が不可欠だ。製造業におけるPLMの重要性はさらに増していくことだろう。

 PTCは「Digital Transforms Physical」というコンセプトを掲げている。文字通り、デジタルの力でフィジカルの世界を変革するという意味だ。PLMをベースにしてデジタルとフィジカルの情報を統一的に管理し、両者間のフィードバックを生み出す仕組みづくりを続けるPTC。今後も製造業のDXをさらに推進すべく、より強力に進化するだろう。

PTCは「Digital Transforms Physical」の実現に向けてPLM市場をけん引していく

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提供:PTCジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2023年5月19日