いまさら聞けない「PLM」 これからのモノづくりの現場に必要な理由基礎解説「PLM」

製品を企画し、設計し、製造し、出荷して使用してもらう。この一連のバリューチェーンの情報を活用し、複雑化するモノづくりをより高度に効率的に行えるようにする取り組みが広がっている。その基盤として、PLMへの注目度も改めて高まりつつある。そもそもPLMとは何なのか、なぜ求められているのか。本稿では基本的な知識から分かりやすく解説する。

» 2023年03月16日 10時00分 公開
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 自動車やPC、携帯電話、家電など、あらゆる製品づくりには設計、部品、構成情報などさまざまなデータが欠かせない。モノづくりの過程ではこれらのデータを複数部門で活用する必要があり、そのために最新のデータを必要なタイミングで入手できる仕組みづくりが重要になる。

 しかし、これまで日本の製造業では設計、製造、調達、サービスなどの各部門や担当者が個別に製品データを管理することも多かった。必要なデータを入手するには複数システムや部門にまたがって検索する必要があったり、担当者への問い合わせが発生したり、古いデータを最新のものと誤認して次の作業に進み手戻りが発生したりするなど、非効率なケースが散見された。

 課題解決には体系的な情報管理が必要だ。そこで求められるのがPLMシステムである。PLMシステムの導入実績をグローバルで豊富に持つPTCジャパン 製品技術事業部 CAD/PLM技術本部 プリンシパルソリューションコンサルタントの有末晋也氏に、PLMの概要や製造現場にもたらすメリットを分かりやすく解説してもらった。

PLMとは何か

 PLMは「Product Lifecycle Management」の略語で、日本語では「製品ライフサイクル管理」と訳される。簡潔に言えば、ある製品が企画されてから設計、製造などの工程を経て市場に出て廃棄されるまでの情報を管理する手法のことだ。

 そしてPLMシステムとは、PLMを支援するシステムを指す。BOM(Bill Of Materials)データに加えて2D/3D CADデータやモックアップデータ、ポートフォリオ、製品設計、開発スケジュール、原価、取引先情報など、製品に関連するあらゆるデジタルデータを一元管理する。BOMの変更/修正履歴や部材などの購入製品情報、最終製品の情報管理も可能だ。

BOMを軸としたデータ管理を実現[クリックして拡大] 提供:PTCジャパン

 有末氏は「BOMには品名や型名、品目コード、製造元、製造品の構成など、製品の製造に必要な部品情報がまとめられています。これらは製造部門はもちろん、調達部門や設計部門でも活用される、製造業にとって欠かせない情報です。PLMはこのBOMを中心に製品にまつわる情報を集約して管理し、全社で共有して活用できる仕組みを提供します」と説明する。

正確な情報を必要なタイミングで共有する

 PLMシステムの活用で「正確な情報を、必要なタイミングで必要な人に共有する」ことが可能になる。これは大きなメリットだ。

PTCジャパン 製品技術事業部 CAD/PLM技術本部 プリンシパルソリューションコンサルタントの有末晋也氏

 国内製造業では従来、部門横断的に活用できるプラットフォームが存在していなかった。そのため、CADやBOM、その他の製品情報が他の情報とひも付けられず、部門や個人ごとに独立したシステムで管理されていることも多かった。この場合、システム同士の連携に必要な“つなぎ”の仕組みは、既存システムをカスタマイズして対応していた。しかし、昨今のDX(デジタルトランスフォーメーション)であらゆるデータを連携させて活用する必要が生じると、個別で対応していた「システム連携の仕組み」を全て作り直さなければならなくなる。最新の技術やトレンドのツールを活用できないなど非合理的な状態が生まれていた。

 一方で世界に目を転じると、20年ほど前からモノづくりのデータを単一システムで効率的に統合管理する動きが進んでいる。最近では国内製造業も海外の企業や自社拠点との連携が必要になり、製品情報の共有の仕方が国内での個別最適化からグローバルでの全体最適化へと徐々に移り始めている。有末氏は「グローバルでの製品開発において、従来は各拠点で情報共有が完結していれば問題なかったのですが、最近ではコスト効率化の観点から収集した情報をグローバルで共有する仕組みが必要になってきています」と語る。このため、複数拠点間で迅速かつ正確な情報共有が可能なPLMシステムの注目度も高まっている。

PLMをグローバル製品開発で活用する[クリックして拡大] 提供:PTCジャパン

部門間の情報連携でメリットを生む

 製造業の各部門にPLMシステムはどのような価値をもたらすのだろうか。例えば、調達部門はいかに安く早くタイムリーに部品を調達し、資材を必要とする部門に適正なタイミングで届けられるかが重要だ。PLMシステムを導入することで、部品情報とコスト情報を組み合わせて仕入れ先の選択や調達、発注のタイミングを適正化できる。サービス部門であれば、部品のメンテナンス方法を設計データから判断したり、次に問題が起こらないためにメンテナンス情報を設計部門にフィードバックしたりする利用方法が考えられる。製品に不具合やトラブルが生じた際には、原因が設計にあるのか製造工程の問題なのか、部品情報をたどって根本的な問題を究明することが可能だ。

 PLMシステムは部門間連携も促進する。設計段階での最適化の情報を製造部門に早いタイミングで共有することで、製品の軽量化や燃費の向上など、より顧客の要求に沿った素早い改善案を実行可能になる。設計データを営業部門で利用することで、効果的な製品PRも行えるだろう。

 最近ではAR(拡張現実)をデザインレビューやマーケティング、営業、保守に生かす事例も増加している。ここでもPLMシステムが果たす役割は大きい。ARの作成には設計段階での3D CADデータが必要だが、最新のデータをPLMシステムで参照することで利活用の促進が期待できる。PLMは3D CADデータ活用基盤にもなり得るのだ。

 これらのPLMシステムのメリットは業種や規模によらず、モノづくりをする企業であれば必ず享受できるものだ。有末氏は「中小企業でも部門間で情報のやりとりは当然発生します。むしろ社内の従業員が少ない分、個々人の生産性を高めなければいけません。システムで個人の業務負担を減らし、生産性を高める業務改革をいかに効率的に進められるかが企業規模を問わず重要になっています」と説明する。

PLMで社内データを効率的に活用する[クリックして拡大] 提供:PTCジャパン

現場に細かくシステムを合わせてきた国内製造業

 とはいえ、これまでPLMシステムなしでも業務を進めてきた国内製造業も多く存在する。その理由について、有末氏は「現場のスキル、特に設計者のスキルが非常に高かったからです」と指摘する。

 国内製造業の設計者は、調達や製造に関わる設計以外の情報も設計段階で全て織り込んだ上で製造部門と共有していた。そのため情報を一元化する仕組みを用意しなくても、現場では業務がうまく回っていた。しかし、熟練設計者の高齢化が進んでおり、これまで個人が担ってきた部分をシステムでいかにカバーしていくかが課題となっている。

 だが、日本ではシステム導入の際に現場の声を優先する、部門最適化の考え方が非常に強い。前述の通り設計者のスキルが高いため、「設計者が使いやすいシステム」の構築を重視しがちだ。その結果、横連携の視点が置き去りにされて、独自にシステムをカスタマイズ開発するなど別の方法で帳尻合わせをする必要が生まれていた。部門の横連携や情報共有に重きを置き、各部署のニーズを100%満たせなくても会社全体で使いやすいシステム構築を優先する欧米とは対照的だ。

 これまで現場の事情に合わせて細かくシステムを最適化してきた企業は、全社統一的なPLMシステムを導入することに不安を感じるかもしれない。しかし、PTCのPLMパッケージ「Windchill」シリーズであれば、そうした不安もなく導入が可能だ。

豊富な標準機能とベストプラクティスでPLM導入を容易に

 WindchillはPTCが20年以上にわたり展開するPLMソリューションだ。製造業への長い導入経験の中で、現場が求める機能を開発してきた。その結果、標準機能が非常に充実しており、製造業の現場の多種多様な業務にカスタマイズなしで対応できる。汎用(はんよう)性の高さが大きな特徴だ。企業がより柔軟にIT戦略に組み込みやすい、SaaS版の「Windchill+」も提供している。

 PTCのさらに大きな強みが、豊富なベストプラクティスだ。ソリューションの提供だけではなく、これまでにグローバルで培った多くの導入経験を基に、さまざまな業種やシーンにおける効率的な使い方も提案してくれる。

 「PTCのベストプラクティスは、世界中の顧客がこれまで実装してきた方法を一般化してまとめたものです。顧客のPLMの活用フェーズに合わせて、当社が持つベストプラクティスを提案します。実績がある手法をご提案することで、PLMソリューションの導入が初めての方でもスムーズに活用できるようにします」(有末氏)

 部門横断的な社内データの活用は、より良いサービスの提供やグローバル市場への迅速な対応につながる。製造業にとっては欠かせない視点だ。将来的に危惧される熟練技術者の引退や労働力不足への対応という視点でも、社内データを効率的に活用するシステムは必須になるといえる。

PLMシステム導入が初めてでも万全の支援を提供[クリックして拡大] 提供:PTCジャパン

 その基盤となるPLMシステムの有無は、企業の今後を左右するほどのインパクトがある。しかし、これまで個別最適で回っていた現場に、新たなシステムを導入することに不安があるのも確かだろう。導入に向けた最初の一歩が踏み出せない企業にとって、グローバルで豊富な知見を持つPTCは、PLMシステム導入のよき相談相手となってくれる。

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提供:PTCジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2023年8月9日