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» 2021年12月01日 10時00分 公開

工場のスマート化支えるエッジコンピューティング、考慮すべきデータの置き所工場におけるクラウド活用

工場のスマート化の進展により、工場内でもデータの蓄積や活用が加速している。この中で関心が高まっているのが、エッジコンピューティングだ。工場内でのクラウド活用におけるデータの置き所と処理の仕組みの在り方について解説する。

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 工場のスマート化が加速する中でにわかに注目を集めているのが「エッジコンピューティング」だ。

 エッジコンピューティングとはその名の通り「エッジ(端)」、つまり「データの収集、活用における端」の部分で使用するコンピューティングデバイスおよびコンピューティングパワーを使った処理を指す言葉だ。製造業でいえば現場(データの発生源)近くに情報処理端末を設置し、その場ごとに"自律分散型"で情報処理を実施する仕組みを意味する。それでは、なぜこのエッジコンピューティングが注目を集めているのだろうか。

エッジコンピューティングの5つの利点

 工場にエッジコンピューティングを導入する主なメリットについて、シスコシステムズの吉原大補氏(クラウドインフラストラクチャ ソフトウェア事業 システムズエンジニアリング テクニカル ソリューションズ アーキテクト)は「データ処理最適化」「データ流量最適化」「コスト最適化」「セキュリティ最適化」「事業継続計画最適化」の5つの利点を挙げている。

photo シスコシステムズの吉原大補氏

 特に“現場”で大きな課題となっているのが、遅延とコストの問題だ。エッジコンピューティングの対をなすものとして、全ての情報をクラウド環境に集約する「クラウドコンピューティング(クラウド)」があるが、クラウドは情報を一カ所に集約できる利便性はあるものの、通信で情報をやりとりするため、一定の遅延が必ず発生する。さらには通信環境にも大きく依存するため、この点がリアルタイム性を求める現場において大きな問題となる場合がある。その点、エッジコンピューティングであれば、工場のラインの近くに設置することからある程度までは遅延を低減できる。

 また、多くのパブリッククラウドサービスは従量課金制のため、全ての情報をひとまずクラウドに保存してから有用なデータを選別するというやり方では、不要なデータの蓄積や通信コストにも多大な費用を費やすことになってしまう。エッジコンピューティングにより現場に近いところで“意味のあるデータ”を選別して収集し、不要なデータを取り除くことでコスト面でもメリットを得られる。

 吉原氏は「エッジでデータを蓄積したり、クラウドに上げても問題ないデータを選別したりすることで、情報漏えいなどのセキュリティリスクを軽減することもできます。また、分散処理することで、クラウドで障害が発生した際でもそれによって事業を中断することなく、事業を継続できるというメリットもあります」と語っている。

 工場のスマート化を進める中では、クラウドコンピューティングとともに、こうしたエッジコンピューティングの利点を組み合わせた形で、データ活用基盤を構築する動きが加速している。

 シスコシステムズの西村克治氏(デジタルトランスフォーメーション事業部 インダストリー事業推進部)は「スマートファクトリー化により工場で収集するデータ量が増大しており、そのデータを誰がどうやって管理するのか、どこに保存すべきかという点が課題となっています。クラウドは利便性が高い一方でコスト面やセキュリティ面での課題もあるため、エッジコンピューティングで必要に応じた処理をしてから、クラウドで処理するという使い分けをしている企業が増えています」と語っている。

photo 図1 工場エッジコンピューティングのメリット[クリックで拡大] 出所:シスコシステムズ

エッジコンピューティング向けのハイパーコンバージドインフラ

 ただ、エッジコンピューティングを導入したいと考えても、現段階では最適な機器やソリューションの選択肢はあまりないのが現実だ。エッジコンピューティングは、ここ最近注目度が増した領域であり、専用の機器やソリューションはまだまだ少なく、既存の産業用PCやサーバなどを活用して仕組みを構築している場合が多いため、理想とするシステムを構築するには大きな負荷がかかる。

 こうした中でシスコシステムズが提案しているのが「エッジコンピューティング向けのハイパーコンバージドインフラ(HCI)」だ。HCIとは簡単に説明すると、仮想化技術を活用することで、サーバ、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアというITインフラの全ての機能を1台のマシンでオールインワン化する仕組みだ。システム構成がシンプルになり、個々のハードウェアを用意する必要がなくなるため、スモールスタートからの増強など、システム構成の柔軟性を生む点が特徴となる。もともとは企業内の基幹系ITシステムなどで活用される場面が多かったが、それをエッジコンピューティング向けで展開しているのがシスコシステムズの提案の特徴だ。

 吉原氏は「工場ではもともとデータ活用の基盤が整備されていなかった場合も多く見られます。その中で、サーバやストレージ、ネットワーク、ソフトウェアを個々にハードウェアから準備して設置するのは大きな負担となります。これらをまとめて整備でき、さらに将来的な増強なども見据えて、フレキシブルに対応できるエッジコンピューティング向けHCIの特徴が発揮できると考えています」と考えを述べている。

photo シスコシステムズの大塚洋氏

 シスコシステムズのエッジコンピューティング向けHCI「Cisco HyperFlex Edge」は、インターネットに接続できる環境であれば、最小2台のサーバでHCI構成が可能だ。従来のHCIには実質的に最小構成に加えて、「Witnessサーバ」という3台目の管理サーバの設置が必要になる場合もあったが、「Cisco HyperFlex Edge」は最小構成である2台のサーバのみで構築できる。

 また、最大で4ノードまでを柔軟に選択でき(2021年中には最大8ノードまで選択可能になる見込み)、ストレージリソースも含めて完全冗長構成が可能だ。1Gbpsもしくは10Gbpsの帯域接続が可能で、シスコシステムズ製のネットワークスイッチはもちろん他社製スイッチなどによる既存のネットワーク環境をそのまま利用することも可能だ。さらに、GPUも搭載可能なので、解析用のエッジコンピューティング基盤としても活用できる。

 「製造現場にとって『コンピューティングリソースをひとまとめにして仮想化する』と聞くと、ハードルが高そうに感じるかもしれませんが『システム構成をシンプルにする』というのがHCIの最大の利点であり、実は物理サーバや物理PCよりも管理が簡単だといえます。仮想化して階層分けをすることで、柔軟なネットワーク環境の構築ができます」とシスコシステムズの大塚 洋氏(クラウドインフラストラクチャ プラットフォーム・セールス・スペシャリスト)は語っている。

photo 図2 エッジコンピューティング用のHCIの特徴[クリックで拡大] 出所:シスコシステムズ

 「Cisco HyperFlex Edge」は製造現場だけでなくIT管理者にとっても管理を容易にする利点がある。クラウドサービス「Cisco Intersight」を利用することで、リモート管理が可能で、インターネットにつながる環境であれば、クラウドを介して世界各地に点在するサーバの管理、セキュリティ設定、障害管理などを簡単に実施できる。ファームウェアの更新やOSのインストールなども同様に遠隔から操作できる。

 さらに最近では「Cisco Intersight」に「Intersight Kubernetes Service(IKS)」という新たなサービスも追加された。IKSはオープンソースのコンテナ管理基盤「Kubernetes」で必要な機能をパッケージ化したものだ。このIKSとクラウドサービスを組み合わせることで、1つのダッシュボードからAWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどを組み合わせたマルチクラウド管理ができる。またこれらのクラウド環境で開発したアプリケーションなどを容易にエッジ環境に展開することなども可能となる。「シスコシステムズは開発環境の最適化についても強みとしています。開発者に対し、クラウドもオンプレでもほぼ変わらない開発環境を実現できます」と大塚氏は語っている。

photo 図3 「Intersight Kubernetes Service(IKS)」の仕組み[クリックで拡大] 出所:シスコシステムズ

エッジコンピューティングで工場データのクラウド連携も可能に

 こうした技術を活用することで、現状のサイロ化した工場全体のコンピューティングリソースをモジュール化し、工場内のあちこちに秩序なく配置されていたデータを1カ所にまとめて管理することができるようになる。

 吉原氏は「一元化されたデータ基盤をエッジ側(工場側)で実現することで、将来的にはクラウドとエッジがシームレスに連携しながらデータを活用し、工場内や工場間でこれらのデータやそこから導き出された知見を意識せずに利用できる環境が構築できます。各種クラウドとCisco HyperFlexによるエッジコンピューティングデバイスが連携してハイブリッドクラウドを構成するイメージです」と語っている。

photo 図4 工場のデータ活用基盤の将来像[クリックで拡大] 出所:シスコシステムズ

 これらエッジコンピューティングのさまざまなソリューションを導入するのに、気になるのが導入後のサポート体制だが、その点においてもシスコシステムズはカスタマーエクスペリエンス(CX)部門により最適な支援を進めるという。

 トラブルに直面した顧客に対し、グローバル企業のメリットを生かし各国における事例や市場、多種多様な業種で培ってきた成功事例と技術情報を活用して解決策を提供する。「われわれは“売ったら終わり”ではなく、CX部門とも連携しながら運用で成果を生むまでをトータルでサポートできるという点が特徴だと考えています。総合的な支援を進めていきます」と大塚氏は述べている。

 こうしたIT関連技術を製造業に最適な形で提供してもらえるのかという懸念もあるが、現在シスコシステムズでは「カントリー デジタライゼーション アクセラレーション(Country Digitalization Acceleration:CDA)」プログラムとして、日本政府と連携しながら、製造業のデジタル化支援を強化している。工場内のデータ活用基盤については、まだまだ正解例が見えない状況もあるが、日々増大するデータ管理方法から、将来を見据えた管理システムの構築まで、製造業特有の事情にも踏み込んだ積極的な支援を進めるシスコシステムズの知見を活用するのも一つの手だろう。

photo シスコシステムズの大塚氏(左)と吉原氏(右)

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提供:シスコシステムズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2021年12月15日