「BricsCAD」ユーザーは、実際にどのようなきっかけでBricsCADの導入に踏み切ったのか。仮設機材をはじめとする製品の開発・製造や販売・レンタル、仮設の設計・施工などの事業を展開するタカミヤに、3年前「AutoCAD LT」からBricsCADに乗り換えたきっかけと、BricsCADの導入効果などについてお話を伺った。
タカミヤは現場の仮設機材の販売・レンタル、アグリ事業、太陽光パネル架台の設置販売、災害関連用品などを扱っている。
「最近では、仮設工事の情報の見える化にも力を入れ、『タカミヤのBIM』を展開し、建設現場の足場の3Dモデリングやデータ解析に取り組んでいます」(タカミヤ 営業本部 技術部 BIM推進課長の浜田和樹氏)
以前は「AutoCAD LT」を用いて、マンションやビルなどの建設現場における足場の配置に関する設計図面を2次元で描いていたタカミヤ。しかし、2017年にライセンス体系がサブスクリプション方式に変更されたことを受け、CADの運用コストが高騰。また、ちょうどその頃「3D化を検討したい」という声が社内から上がっていたこともあり、もっと良い選択肢はないかと他のCADを探し始めたという。
「国土交通省が推進する建設現場の生産性向上を図る『i-Construction』の取り組みにおいてCIM化が進み、今後は土木の案件でも3D化が必須になるのではないかという世の中の流れを感じ取りました。3D化によって、今まで図面から手作業で拾っていた支柱などの数量の積算が効率化できたり、2Dでは見えなかった所を3Dで可視化することで、お客さまへの提案力がアップしたりなど、さまざまな業務改善が期待できると考えました。
また、3Dで設計することで、これまで実際に組んでみなければ分からなかったことが、設計段階で事前に分かるようになり、われわれだけでなく、お客さまを含めた全体の効率化が図れるのではないかと感じました」(浜田氏)
当時、業界全体ではまだ3D化がそれほど進んでおらず、どの会社も着手し始めたばかりの状態であったため、タカミヤでは「いち早く対応すべきである」と判断し、3D化の検討を本格的に開始した。
タカミヤでは乗り換え予定のメインのCADとは別に、そのまま以前のCADを残す予定でいたため、「.dwg」データ対応であることがCAD選定の絶対条件だった。
候補としては、BricsCADの他にも3〜4つのCADソフトが挙がっていたが、使用感が今までとほぼ同じで違和感なく作業できたことから、最初の体験版利用の早いタイミングで、BricsCADに絞り込んで検証を進めていった。
「CAD選定を進める上では、ポイントが2つありました。1つは操作感です。同じ.dwg対応のCADであったとしても、一から操作を覚え直すのであれば意味がないため、同じような操作感であるかは重要なポイントでした。
もう1つのポイントは互換性です。AutoCAD LTで描いた図面を検討中のCADで開いて、編集・保存し、それをまたAutoCAD LTで開くという互換性については、寸法や角度を変えてさまざまな設計パターンを試すなど、入念に検証を行いました。その結果、BricsCADであれば問題ないという結論に至りました」(浜田氏)
「最初はとにかく、2D図面を描けるものとして探していたのですが、ちょうど3D化も検討していたので、『BricsCADであれば3Dもできてしまう』ということで3D設計についても併せて検証しました。
別のCADソフトと比べると、いろいろと直感的に操作でき、今までのなじみのある業界標準的なCADの操作方法に+αでいくつか操作を覚えれば3D化に取り組めるのではないかと、そのメリットに気が付き、会社としても3D初心者だったので『BricsCADで全部やらない手はない』と判断しました。
BricsCADを“3D CAD”として位置付けて考えると非常にリーズナブルであり、3年、5年という期間でのトータルコストを検証すると従来のCADよりも安く、かつ3Dも使えるということで、『BricsCAD Pro』の導入を決めました」(浜田氏)
「当時、3D CADとして『SketchUp』も使っていたのですが、同じ.dwg対応CADであれば連動性がありますし、使い方として、既存図面の2D要素をそのまま3D化したいとの思いもありました。また、3D CADとしてのSketchUpの費用と、2D/3Dに対応できるBricsCAD Proの費用が同等だったので、これはコスト面で考えてもBricsCADにメリットがあると判断しました」(タカミヤ 技術部 技術課長の長野成弥氏)
BricsCADによる2D設計の操作感は、従来のCADと大きな違いはなく、操作研修なども不要だった。
「実際、アイコンの配列などの違いはありましたが、設計者から不満が出ることもなく、スムーズにBricsCADへ移行できました」(長野氏)
また、3D設計については業務フローに合わせたBricsCADの操作マニュアルを社内で整備し、研修を実施。基本的なモデリングの操作であれば、すぐにマスターできているという。
BricsCADを導入したタカミヤでは、具体的にどのような効果が得られたのだろうか。まず、2Dについては、コストが下がったこと、永久ライセンスなので管理がしやすいことがメリットとして挙げられる。3Dについては、データを.dwg形式で見られることがお客さまからも喜ばれ、「3D対応してくれるからタカミヤにお願いする」という声もいただくようになったという。
「社内的な効果として、複雑な数量算出については、図研アルファテックに数量算出の独自コマンドを作成してもらい、大幅な時間短縮を果たしました。これにより、後工程がとても楽になり、残業時間が減り、技術として別の案件の提案や企画ができるようになったことは業務改善の大きな成果となりました」(浜田氏)
BricsCADの最大の特長は、2D−3D−BIMとメカ機能を同じ環境、つまり“ワンプラットフォーム”で利用できる点だ。実際にワンプラットフォームを体感してみると、その便利さは想像以上だったという。
「2D図面をポリラインで描いて、そこから3Dを立ち上げられるのでとても便利です。変換なども必要なく、1つの画面で特に2D/3Dを意識することなく操作できます。PCに複数CADソフトを入れる必要はないので、ストレージ容量の心配もありませんし、BricsCADが1つ入っていれば誰でも2Dも3Dも利用可能です。何よりも1つのCADの操作を覚えるだけでよく、2D/3Dそれぞれ独自のコマンドはありますが、保存や線を引くなどの基本操作やUIが一緒であることは、3D初心者であったわれわれとしても、3D導入のハードルが下がりとても助かりました」(浜田氏)
「BIMソフトなどで3D化されたデータを切り出し、2D図面に落とし込んで寸法を入れることが増えるといわれていますが、実際はまだ9割くらいのお客さまが2Dでの納品を希望されており、『2Dで作成したものを3D化してほしい』との声が多く聞かれます。将来的には3Dモデルから切り出した2D図面が増えていくのでしょうが、現状はまだ2Dベースの方が圧倒的多数です。その中でも、2D図面を一部立ち上げて3Dで見せたり、数量を出したりなど、2Dと3Dを併用した運用が求められているのが現状です。そのため、2Dと3Dを同じCADでシームレスに対応できるBricsCADの利用メリットは非常に大きいといえます」(長野氏)
タカミヤはBricsCAD導入による設計の3D化を実現した後、「もっと情報活用していきたい」との声を受け、BIM推進にも着手した。BIMというと単に“BIMソフトを使うことだ”と考える人もいる。また、BIMソフトを導入したのはいいが情報活用に役立てることなく、3Dモデリングで設計しているだけのユーザーも多い。しかし、タカミヤでは部材データなどの情報を活用することがBIMの本質であると考え、BIM推進の取り組みを進めている。
「例えば、建築事務所で、細かい意匠設計をする場合などにはBIMソフトの機能が必要かもしれません。しかし、仮設の設計で必要な情報は部材の数量や重量といった非常にシンプルなものばかりなので、本格的なBIMソフトの機能はほとんど必要なく、オーバースペックであり、BricsCADで十分に情報管理ができるのです」(浜田氏)
「基本的な業務の流れは、最初に2Dで建物図面を描き、それを3D化したものに対して、部材名称、重量、番号などのプロパティを入力した足場モデルを3Dで組んでいきます。3Dであれば、2Dでは表現するのが難しい複雑な柱や梁(はり)などの建物データとの干渉や、現地の地形データとの組み合わせなどが確認できますし、足場の数量や重量の自動算出もできるため、『効率化が進んだ』と現場から喜ばれています」(浜田氏)
他にも、3Dビューアの「Navisworks」に取り込んでアニメーションなどを使ってプレゼンをしたり、3Dデータを提供することで営業力の強化につなげたりすることができたという。各社でBIMの取り組みやソフトも異なるため、業界標準の.dwg形式でデータのやりとりができる点はBricsCADの強みだといえる。
自動算出された数量のデータ活用を進める「タカミヤの仮設BIM」は現場の効率化を実現できるものとしてお客さまからのニーズと期待は大きい。
「当社はタカミヤグループとして、通常であれば各専門業者に発注しなくてはならない、3D計測、地盤計測、躯体モデリング、仮設など、現場の乗り込み時から終わりまで、BIMを持ってでも一気通貫でサポートできることが、他社にはない大きな強みです。
製造もあるので、部材がない場合でも対応できますし、資材の保管から、物流までも相談に乗れるなど、『製造・開発、販売・レンタル、設計、施工、管理・物流』の一流に磨き上げた5つの事業を柱として対応できるメリットは大きく、『情報活用』という意味でも製造から物流まで一貫体制のプラットフォームの中での活用を進めています」(タカミヤ 経営戦略本部 広報室IR室の田村陽湖氏)
今後は、足場を組んだ状態をVR(仮想現実)で確認できるような安全教育を提供したり、数量算出したデータからオンラインで部材注文が受けられたりなど、さまざまな開発を検討しているという。
最後に、BricsCADをどのようなユーザーにオススメしたいかを聞いた。
「日本の建築/建設業界は2D設計が主流ではありますが、お客さまから3D/BIMデータをいきなり受け取ったり、3Dデータが受注条件になったりなど、2Dと3Dが混在しています。2Dありきで、3Dのメリットを発揮してほしい、というのが国土交通省の考え方なので、2Dと3Dがセットというのは必要不可欠となっています」(長野氏)
「2Dと3Dが混在している今こそ、2Dと3DとBIMを同じソフトで対応できるBricsCADのワンプラットフォームは最適な選択だと思います」(浜田氏)
BIM推進で業界をリードするタカミヤの挑戦をBricsCADは今後も応援し続ける。
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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2021年7月29日