工場でIoTデータを活用して生産性改善や自動化などを進めるスマート工場化への取り組みが加速している。その中で最初の一歩とされているのが「見える化」である。DXも見据え、工場の「見える化」を進める上で重要なポイントには何があるのだろうか。
スマート工場化への取り組みが加速している。スマート工場化にはいくつかのステップがあるが「データ活用」の最初のステップとされるのが「見える化」である。センサー情報や機械の稼働情報をIoT(モノのインターネット)などで集め、それぞれの業務に必要な「情報」として整えて発信することで、監視や改善などにつなげていく取り組みだ。
従来、日本の製造業では「見える化」に関するシステムは各工場やラインが独自で構築するのが当たり前のものだった。しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)などで企業の活動全てをデジタルデータとして活用する動きが広がる中で、個別システムを個々につないだり、調整したりする仕組みは負荷が高くなりすぎる。そこで、あらためて大きな注目を集めているのが現場データの情報共有基盤である「SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)」システムだ。
これらを背景に、2021年3月にSCADAソフトウェア「GENESIS64」を新たにリリースし現場データ「見える化」への取り組みを強化するのが三菱電機だ。
三菱電機は、オートメーション機器の展開に加え、2003年にFAとITの情報を統合して工場の生産性を高めるFA-IT統合ソリューション「e-F@ctory」(※)を打ち出し、早期からスマート工場化の支援に取り組んできた。その流れで、SCADAソフトウェアを扱う米国ICONICSと2011年に提携。2016年からはICONICSからOEM供給を受け「MC Works64」の国内展開を開始した。さらに2019年にICONICSを100%子会社化したことで、三菱電機との一体開発を開始。2021年3月に「GENESIS64」を発売した。
(※)e-F@ctory(イーファクトリー):FAとITの両方の技術を活用することで開発・生産・保守の全般にわたるトータルコストを削減し、改善活動を継続して支援するとともに、一歩先のモノづくりを指向する三菱電機が提供するFA-IT統合ソリューション。
三菱電機 名古屋製作所 ソフトウエアシステム部 部長の可知祐紀氏は「GENESIS64」の狙いについて「SCADA製品のブランドを『GENESIS64』に統合するとともに、開発から販売、保守までの一貫体制を構築しグローバルでの展開を強化します。一貫体制により、最新技術を取り入れた新機能の迅速なリリースが可能となります」と語っている。
加えて、展開面でも「見える化」に関する一貫ソリューションとしての展開を進める。「三菱電機では以前から機器情報の見える化を実現する表示器『GOT』や『SoftGOT』を展開してきましたが、これらと生産ラインや工場全体の一括監視を行える『GENESIS64』を組み合わせることで、それぞれの情報連携を容易にしたり、より高度なフィードバックを実現したりすることができるようになります」と可知氏は統合で生まれる価値を強調している。
「GENESIS64」は監視規模や要求機能により、2種類の製品を用意する。必要十分な機能に絞り込んだ低コストでリーズナブルな「GENESIS64 Basic SCADA」と、豊富な機能で高度なIoTシステムを構築できる「GENESIS64 Advanced」である。「GENESIS64 Advanced」は二重化対応など高信頼性が要求される大規模システムにも対応。BI機能も備えているため工場全体やプラント、社会インフラ分野やビルオートメーションなどにも活用できる。さらに、クラウドやAR対応など最新技術への対応も進めているという。
2D/3DライブラリやCADデータを用いた3Dモデル表示など各種情報を分かりやすく表示する。また、Webブラウザやモバイル機器などマルチデバイスでの閲覧が行える他、ARを用いた表示や操作、AIスピーカーによる操作も可能だ。また、異常発信時のメール通知なども行う。毎秒10万点の高速データ収集が可能で、二重化や分散などにも対応し、システムの高信頼性を確保する。ERPやMESなど上位系システムとの柔軟な連携機能も標準搭載し、OPC、EtherNet/IP、BACnet、Modbusなど各種プロトコルに対応。さまざまなラインや設備、機器と接続した監視システムを構築できる。
さらに一貫開発体制構築により、三菱電機FA機器との連携を強化。直結可能な通信ドライバーを提供しOPCサーバを導入しなくてもデータを収集できる。さらに「GOT」との連携で、「GOT」画面データを「GENESIS64」用に変換し、より現場で使いやすい形で情報表示が行える機能を2022年から提供する。
三菱電機 名古屋製作所 ソフトウエアシステム部 次長の冨永博之氏は「工場全体で大規模に『見える化』に取り組むケースもあれば、各機器の情報を徐々に集めて規模を大きくしていくケースもあります。『GOT』と『GENESIS64』を一体で扱えることで、これらのどちらから入った場合でも現場で違和感なく活用できるインタフェースなど、シームレスな連携が可能となります」と語っている。
三菱電機では、これらの導入推進のために新たに「GENESIS64」専門のパートナー制度である「GENESIS64 SIパートナー制度」を設立した。1年間有効な開発ライセンスを提供する他、システム開発支援の専用窓口を用意する。またプロモーション支援なども行う。
三菱電機 名古屋製作所 営業部 次長の南澤一成氏は「『GENESIS64 SIパートナー制度』は、以前から取引のある商社やFA系SIなどに加え、IT系SIなども含めて新たなパートナーを募り、導入しやすい環境を作っていくつもりです」と語っている。また、今後の事業展望として南澤氏は「当社は、シーケンサやサーボモータなど強いハードウェア事業があり、それに加えて、SCADA製品や新しいパートナー制度などを組み合わせてソフトウェア・サービス事業を伸ばしていきたいと考えております。今まで培った製造現場での知見を生かし、お客さまに新しい付加価値を創出し、e-F@ctoryソリューションとして事業を拡大して参ります」と意気込みを語る。
製造業でスマート工場化が進む中でSCADAへの期待はますます高まっている。可知氏は「SCADAには『データを収集する仕組み』という面と『データを分析して見える化する』という大きく分けて2つの面があります。日本の製造現場ではこれらの仕組みをそれぞれで独自に作る傾向が強くありましたが、DXを推進する上で、共通したデータを共通の視点で管理することが求められるようになっています。この観点で見た場合、現場データを見える化するITプラットフォームは必須で、FA-ITオープンプラットフォームEdgecross(※)とSCADAを組み合わせた『高度な見える化』が求められる場面も増えると考えます。三菱電機として豊富なハードウェア群と製造現場の実績を持つ点を生かし、SCADAなどのソフトウェアを組み合わせることで、さまざまな成果を短期間で生み出せるようにしていくつもりです」と今後の抱負を語っている。
(※)Edgecross:Edgecrossコンソーシアムが展開するエッジ領域のオープンなソフトウェアプラットフォーム。エッジコンピューティングを含め、エッジ領域のデータ連携を可能とする。
スマート工場化の第一歩となる「見える化」だが、今後を見据えた共通基盤の構築には取り組み始めたばかりの企業も数多い。その中で、ハードウェアから一貫して工場のスマート化を支えてくれる三菱電機の新SCADAシステムは、現場データを基軸にさまざまな環境を「つなげる」新たな情報共有基盤として力を発揮してくれることだろう。
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提供:三菱電機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2021年4月23日