FOOMA幹部企業が語るモノづくり革新、ネジレス安全・省スペース・増し締め不要で装置革新を実現し業界へ貢献食品製造現場の省スペース化・省人化へ装置盤革新で成長

日本文化の再評価が進むにつれ、日本製食品の人気も急上昇し製造装置の技術が注目を集めている。中小規模企業が多いといわれる食品装置メーカーの中で、そのスピードと判断力を生かし、FOOMA(日本食品機械工業会)幹部企業が装置盤革新で次世代装置の革新へ乗り出した。四国化工機グループとして、業界けん引と貢献を続けてきた創業110年を迎える植田酪農機工業に革新に向けての取り組みを聞いた。

» 2019年08月27日 10時00分 公開
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自動化ニーズの高まりと機器開発の難しさ

 人手不足が深刻化する中、食品機械へのニーズは高まるが、開発の難易度も上がっている。特に多くの機能を盛り込む必要がある制御盤はスペースがなく、機能を入れ込むかが難しい状況だ。こうした省スペース化の要求に対し端子機器をプッシュイン型のねじレス式に切り替えることで解決を目指したのがFOOMA(日本食品機械工業会)の中心企業の1つでもある植田酪農機工業である。

photo 植田酪農機工業の外観(クリックで拡大)出典:植田酪農機工業

 植田酪農機工業は、1910年創業の老舗の食品機械メーカーである。現在は四国化工機グループの一員として、長年培ったノウハウをもとに、小型食品充填(じゅうてん)、包装機などを製造。「品質第一」を掲げ、ユーザー満足度の高いモノづくりを行ってきた。

 植田酪農機工業が製品を展開する食品業界は、消費者の多様化するニーズに合わせて生産品目が拡大する一方で、それぞれの商品も安全性やビジュアル性などで高度化が進む。一方で生産現場では人手不足が進んでおり、自動化ニーズが高まっている。

 需要や生産種目が増え、さらに求められる機能も高度化や複雑化が進み、食品機械がこなすべき役割は大幅に増えている。一方で、機械を操作する作業者の数は減り、設置スペースにも限界がある。そのため、機械には自動化や自律化に加えて、1台でさまざまな作業をこなせる柔軟性が求められている。

 食品機械の開発において、こうした相反を含む複雑なニーズを満たすために、しわ寄せ的な形で影響が出ているのが制御領域である。1台でさまざまな作業をさせようとすると当然機械も複雑な制御が必要になり、必要な制御機器は増えることになる。一方で、セーフティ機器など必要性も増えており、制御盤内に収められる機器は増加する傾向にある。ただ、食品業界の工場はスペースが限られる場合も多く、食品機械にはより小さなスペースに収めた上で必要な操作性を確保する省スペース設計が求められている。

プッシュイン端子機器を採用した選択

 こうした厳しい条件の中で、植田酪農機工業が新たに取り組んだのが、制御盤内の制御機器でプッシュイン型のねじレス式スプリング端子機器の採用である。

photo 植田酪農機工業 技術部 部長の末永芳朗氏

 「お客様の工場レイアウトの問題で、機械を設置するスペースがあらかじめ決められているという案件がありました。機械のサイズが制約され、機械のフレームの寸法に合わせるために制御盤の省スペース化も図る必要があり、プッシュイン端子機器の採用の検討を進めました」と植田酪農機工業 技術部 部長の末永芳朗氏は語る。

 ただ、プッシュイン端子機器の採用が簡単に実現できたわけではない。食品業界では、顧客企業側で仕様がほぼ決まるために「ねじ式」が条件として指定されていれば、使用することができないためだ。

 もともと、食品機械に伴う制御盤のコンパクト化は、植田酪農機工業にとっても以前からの課題の1つだったという。「機械を省スペース化するために制御盤をコンパクト化したいというニーズは年々高まってきていました。設計面だけを考えれば、無理やりにでも機械を押し込めればよいのですが、製造工程での作業性やアフターサービスでのメンテナンス性などを考えると、どうしても難しくなります。制御盤内の端子台などの部品がこれまで以上に小さくなればと考えていました」(植田酪農機工業 技術部電装設計課 技師の實籾智也氏)。

photo 植田酪農機工業 技術部電装設計課 技師の實籾智也氏

 そこで、新たな技術への挑戦を積極的に進めてきた。「仕様として指定されているものはそのまま開発を行いますが、指定がない場合にさまざまな新しい技術を取り入れて、お客様に新たな技術の価値を提供していく必要があると考えています。以前から展示会などでプッシュイン型のスプリング端子台を見て、制御盤のコンパクト化に使えるのではないかと考えていました」と實籾氏は述べている。

 ちょうどそのタイミングで、ねじについて指定がない案件を受注し、まず1台でプッシュイン型端子機器を使ってみたという。この1台での採用をベンチマークとするため、設計面だけでなく、製造面での工数なども考慮し、十分に成果が得られるということを確認していった。

 プッシュイン端子機器の利点は、イヤフォンジャックを差し込むような感覚で簡単に配線できる一方で、従来のねじ式端子台と同等以上の電線保持を実現できるため、作業効率の向上と、従来ねじ締めに必要だった作業スペースの削減につなげられる点にある。また、ねじを採用していないため、ねじの緩みによる増し締めが不要である点もメリットだ。

 その結果、「今までのねじ式では、作業確認や増し締めなどねじ関連作業を3回行う規定としていましたが、プッシュイン式では増し締めが不要なため、作業工数を大きく軽減できました。作業時間で考えると、約4分の1程度に削減できたと考えています」と實籾氏はその効果について語っている。

photo 従来の増し締めチェックの様子。チェックする度にペンで印を入れている(クリックで拡大)出典:植田酪農機工業

 さらに工数や作業時間だけでなく、制御盤のスペースについても、端子機器の幅を4分の1程度に抑えることができるようになり、制御盤のコンパクト化とともに制御盤内での作業スペースを十分に確保できるようになったという。「製造面での作業性などに大きく貢献できました。総合的な効率化を実現できていると感じています。製品の輸送の際もねじの確認が必要でしたが、これらの作業も減らすことができています」と實籾氏は語っている。

 これらの効果検証を進めているところで受注したのが先述した大手製菓メーカーからのピッキングラインの案件である。末永氏は「ちょうどねじについての指定はなく、スペース面で厳しい案件でした。検証の効果なども得られていたので、採用を決めました」と当時を振り返る。

photo 大手製菓メーカー向けのピッキングライン(クリックで拡大)出典:植田酪農機工業

オムロンのプッシュイン端子機器を採用

 この中で植田酪農機工業が採用したのが、オムロンの制御機器群である。具体的には、オムロンが新たに統一デザインで展開する制御盤用部品「Value Design for Panel」の中の「プッシュインPlus端子台」シリーズである。

 オムロンでは「制御盤革新」を目指し、デザインや操作性などをそろえることで、制御盤全体で、省スペース化や操作性の改善など、新たな付加価値を生み出すことに取り組んでいる。植田酪農機工業についてもその総合力を評価したという。

 實籾氏は「まずは、安全リレー、センサーなど他の制御機器も使った実績があったためで、端子台だけでなくリレーなどもプッシュイン方式の製品を使用し、制御盤全体で設計効率や作業効率を高められるという利点があると考えました。オムロンの製品をそろえたことで、制御盤全体を統一してコンパクト化が図れた要因となりました」と語っている。

 最終的に全体で13ライン向けに1万点以上の「プッシュインPlus端子台」シリーズ製品を採用し、装置の小型化を実現した。

photo オムロンの「Value Design for Panel」対応機器を採用した制御盤内部(クリックで拡大)出典:植田酪農機工業

食品機械の高速化と兼用化を加速

 食品機械については今後もますます高度化や複雑化が進む一方で省スペース化が進む見込みだ。食品の安全性を求める声の高まりから、工場の中で使用される検査機の数が増えており、製造機械はよりコンパクトで、生産能力が高く多機能であるということが求められているからだ。

 また、1つの機械に異なる機能を搭載し、機器の兼用化を求めるケースも増えているという。例えば、ピッキングをしながら画像検査するなど、ある程度の検査機能などを製造装置に組み込むことで、異物混入などを製造工程の中での検査を行うというものだ。日付管理機能も含めて、不良品の混入を防ぐためのダブルチェックの機能なども搭載してほしいという要望も増えており、工程集約を求める声が高まっている。

 末永氏は「単位面積当たりの処理能力の向上は受注を決める要件の1つとなりつつあります。処理能力を高めていく一方で省スペース化はさらに進めていかなければなりません」と語る。

 こうした状況を考えるとまずは制御盤内の機器にはますますコンパクト化が求められることだろう。「制御盤の中をシンプルにすっきりさせていくことが重要です。機械の高速化や新しい機能、安全性を実現するためには、制御盤内の機器は増えることはあっても減ることはありません。制御盤のサイズを大きくすることなく、機能を増やすことができるように設計することが求められています」(實籾氏)。これらに対応していくために植田酪農機工業では「指定が無い場合は、新しい技術や製品を積極的に採用していくつもりです」と實籾氏は述べている。

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提供:オムロン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年9月27日