IoTやAI、ロボティクスの進化により、製造現場も大きな変化が進みつつある。ベッコフオートメーションは「SCF2017/計測展2017 TOKYO」に出展し「産業機器の知能化」をテーマに、デンソーウェーブやエクサウィザーズと共同開発した「マルチモーダルAIロボット」などをはじめ、先進技術による製造現場の将来像を示した。
IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ロボティクスなど、先進技術の目覚ましい進化が進む中、製造現場の在り方はどのように変わるのだろうか。こうした問いの1つの可能性を示す取り組みを進める企業がある。工場などの制御機器を展開するベッコフオートメーションである。
ベッコフオートメーションは、「SCF2017/計測展2017 TOKYO」(2017年11月29日〜12月1日、東京ビッグサイト)に出展し、「産業機器の知能化」をテーマに同社の製品群とともに、デンソーウェーブやエクサウィザーズと共同開発した「マルチモーダルAIロボット」を紹介した。
「マルチモーダルAIロボット」は、多指ハンドを装着した双腕型ロボットアームをディープラーニングでリアルタイム制御をし、不定形物を扱う複数の作業を同一のロボットアームで実現するというものである。ベッコフオートメーションの他、デンソーウェーブ、エクサウィザーズの3社で共同開発した。SCF2017ブースでのデモでは、タオルをたたんだり、サラダを盛りつけたりするデモを行い、大きな注目を集めた。
そもそもロボットを動作させるためにはプログラミングが必要だが、双腕型ロボットアームでさらにハンド部分が多指となると、プログラミング量が膨大になるという課題があり、なかなか実用化に近づけることができなかった。しかし、「マルチモーダルAIロボット」は、ディープラーニング(深層学習)とVR(仮想現実感)技術を組み合わせることで、人が人に作業を教えるのと同じようにロボットに作業を学習させることが可能となっている。そのため、現場でプログラミングをする必要がなく、専門技術者に頼らなくてもロボットを利用できるという可能性を示している。
また、ロボットがモノをつかんだり組み立てたりする場合には、そのワークに最適なハンドなどを新たに開発したり製作したりする必要があったが、多指ハンドを採用することで、人が行っている動作をそのまま模倣することが可能となる。ハードウェア的に毎回新たなハンドを開発する必要がなく、複数の作業を同じハードウェアで行わせることができる。
ティーチングについては、具体的にはVR技術とロボット操作を連携させ全天球カメラを利用した視覚と触覚に訴えるVRティーチングシステムによって、双腕型ロボットアームの軌道を直感的に教える。VRと触覚センサーによってロボットの視覚や触覚を得た人間が作業をまずやってみせることで、記録された軌道とロボットアームやハンドから得られるセンサー情報をロボットに学習させる。これにより複雑なプログラムを組むことなく、人の作業を覚えさせることが可能となるという仕組みだ。
産学連携のオープンイノベーションで推進。ベンチャー企業であるイクシーから多指ハンドの提供を受けた他、AIロボットの研究で知られる早稲田大学理工学術院の尾形哲也教授からのアドバイスを受けたという。
ベッコフオートメーション 代表取締役社長の川野俊充氏は「ロボット、AI、VRをシステムとして融合させる試みは専用のハードウェア開発を伴うためコストと時間がかかるのが課題だった。今回は「ORiN」「TwinCAT」「EtherCAT」、ディープラーニングなど、それぞれのオープンシステムや汎用的な要素技術を組み合わせ、ハードウェアの開発を一切せずに短期間かつ現実的なコストで実現できたことが価値だと考えている。マルチモーダルAIロボットそのものを発売するわけではないが、製造現場の将来像の一端を示すことができたと考えている」と述べている。
マルチモーダルAIロボットの知見は今後それぞれの企業で「製造現場の知能化」に向けて活用するという。例えば、ベッコフオートメーションで今回活用した技術に最大18コアのXeonプロセッサを二つ搭載した産業用PC「C6670」がある。組み込み型PCとしては「高機能すぎる」と見られていた「C6670」だが今回の「マルチモーダルAIロボット」では、制御系の「TwinCAT」はCPUで駆動し、ディープラーニングおよびVRなどの「Phython」「Unity」はGPUで駆動。これらを1つの産業用PCで駆動させることに成功した。川野氏は「このコンセプトを『インテリジェントコントローラー』としてさまざまな生産財の知能化に応用していく」と今後の展開について述べている。
この他、超高速、高同期性、省配線のEtherCAT対応製品や電力と通信をケーブル1本で行える「EhterCAT P」、ソフトウェアPLC、CNC、RCの「TwinCAT3」によるモーション制御、拡張性の高い省配線安全ソリューション「TwinSAFE」なども出展した。
TwinCAT3によるモーション制御のデモンストレーションでは、コンパクトさが特徴の産業用PC「C6015」に、モバイルルーターなどをつないだ計測・制御システムを紹介した。
TwinCATは、PLC、NC、CNC、RCを1つのパッケージに統合したオートメーションソフトウェアで、同製品をPCに導入することで、マルチPLCシステム、NC軸制御、プログラミング環境、操作ステーションとともにリアルタイムコントローラーを構築できる。従来のPLC、NC/CNCコントローラー、操作デバイスの代替となる。新バージョンの「TwinCAT3」では、C/C++をはじめとした幅広いプログラミング言語に対応し「Microsoft Visual Studio」を使用した統合開発環境を提供する。産業用PCとソフトウェアPLC、EtherCATを組み合わせたシステムにより、高速な演算処理や入出力による計測、制御能力などを実現する他、システムとしての柔軟性を確保できる。また、オールインワンコントローラー化によるコストダウンも可能だ。
さらにITシステムとの親和性が高くIoTシステム導入を容易に実現できる。クラウドサービスにもファンクションブロック(FB)を用意したことで簡単にアクセスできる。これにより仮想データ保存や各製造機械のレシピ管理、生産状況のリアルタイム配信などが可能となる。さらに、AI機能を用いた予知保全や機械学習など、クラウドサービスを用いた各種ソリューションとの連携が容易となる。
省配線安全ソリューション「TwinSAFE」では、安全コントローラーを組み込み、機械と人との「隔離原則」から「協調安全」への取り組みを紹介。さらに安全ソリューションとしてセーフティモーション「AX5805」、安全PLC「EL6910」などをつなぎ「止める安全」から「止めない安全」についての提案を行った。
川野氏は「生産設備の知能化などをコンセプトに、双腕型ロボットをはじめ技術・機械をよりインテリジェントに使う動きは広がりを見せている。セーフティシステムやロボットコントローラーなどもこれまでのように単体ではなく、他の設備と連携してより簡単に使えるようになる。そうした時に重要になるのが、ソフトウェアベースでのアプリケーション展開だ。そして、その基盤となるのが、制御性能を確保しつつ汎用性の高いコンピューティング技術である。ベッコフオートメーションはPCベースの産業制御について30年前から取り組んできた企業で、インテリジェントを求める製造現場の新たなニーズに応えていける」と強みについて強調した。
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提供:ベッコフオートメーション株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2018年3月31日