高い技術力で組み込み機器の開発と製品化に高い評価を得ている日立産業制御ソリューションズが「Embedded Technology 2014/組込み総合技術展(ET2014)」に出展した。SoC導入をトータルでサポートする「SoCコンシェルジェ」やADAS開発支援、広域施設管理ソリューションなどで、同社の「支援力」が具体的に紹介されており、来場者の関心を集めていた。
自動車向けを中心とした組み込み機器の開発で定評のある日立産業制御ソリューションズは、「Embedded Technology 2014/組込み総合技術展(ET2014)」に出展し、組み込み機器の開発を総合的にサポートする「SoCコンシェルジェ」などを出展。さまざまな用途の組み込み機器の開発を支援する体制をアピールする他、画像合成、画像認識、AR技術を使った広域施設管理ソリューションも紹介していた。
同社ブースで最も広いスペースを用いて紹介されていた「SoCコンシェルジェ」は、さまざまなメーカーのSoC(System-On-Chip)に対応した開発支援ソリューションだ。
現在、さまざまな組み込み機器でSoCは利用されているが、そのCPUコアはもとよりベンダーも多種多様でその選択肢は非常に多い。機器の開発メーカーは、SoCにGPUやDSPなどのヘテロジニアス化に加え、LinuxやAndroid、Windows、QNXなど様々なOSを使いこなしながら、機器を開発していくわけだが、製品開発にあたり、どのSoCが適しているのか、システムデザインをどうすればいいかなど多くの課題がある。SoCコンシェルジェでは、そのサポート、支援をトータルで行う。
SoCコンシェルジェとして用意されているメニューは「システム設計」「マイコンとSoCのシステムインテグレーション」「Linux(Yocto、Ubuntu)導入やOSS活用支援」「不具合解析」「ライブラリ販売およびサポート」「リファクタリング」「マイコン置き換え」の各サービス。同様の支援サービスはこれまでも用意していたが、より幅広いSoCを対象とすることで、スムーズな機器開発支援を実現していく。
不具合解析サービスは、ハードウェア、ソフトウェアのどの部分に不具合があるか分からない場合でも、各SoCメーカーと連携しバグを切り分け、不具合を対策する。顧客側が解決できない不具合を解決できる点が特徴といえる。
リファクタリングサービスは、過去のソフトウェアを再利用する場合に、「一度ソフトをキレイにして利用する」(同社)というもの。この2つのサービスは、いわば「出口」のサービスで、システム設計という「入口」から始めて、不具合のないように開発を進めていくためのサービスだ。
同社はその支援スタンスの目標として「最終的には製品の状態で提供し、お客さまが操作体系を変えたり、独自機能を実装したりする仕組みにしたい」と語る。同社顧客には自動車・車載機器メーカーが多く、例えば、カーナビならば基本的な機能が実装されたハードウェアを提供し、顧客側の必要に応じてカスタマイズするようなビジネスを想定している。
今はまだ多くの組み込み機器がハードウェアで差別化をしているが、同社では今後、機器と連携したサービスが差別化のカギになると見る。その段階は、プラットフォームの標準化が求められSoCを意識しなくても開発ができる環境を必要とするため、同社では、多種多様なヘテロジニアスSoC、OSでシステムを構築できる技術とサービスメニューを整えることで、そうした流れに対応していく。
現在、SoCコンシェルジェの一部サービスは、その「準備段階」(同社)であるが、今後1〜2年でハードウェアまでも含めた支援を提供できるようにしたいという。当面は、自動車向けに機能安全やセキュリティを取り込んだサービスとして拡充していく考えだ。
製品開発支援の一環として紹介されていたのが「ADAS(先進運転支援システム)」関連のサービスだ。ADAS向けの画像認識開発支援サービスや画像認識評価用映像制作サービスが用意されており、画像認識開発支援では、同社の画像処理・認識ライブラリを提供。道路の白線や信号、標識などを認識することができるライブラリで、車載カメラと連動してADAS実現を支援する。
画像認識評価用映像制作サービスは、実写映像にCGを合成するほか、画像処理で天候などを変化させた映像を作成し、車載や監視用途での画像認識処理を効率的にテストできる。こうしたさまざまな条件の映像はテストにおいて重要だが、「実写では手間がかかったり、状況を作るのが難しい」(同社)映像だった。そのため、テスター用としてこのサービスを利用して、事前に問題をチェックすることができるようになる。
ADAS向けで普及が進むデジタルデータ伝送、セキュリティ、制御といった技術を融合した開発支援サービスも準備。ルネサス エレクトロニクスの最新SoCである「R-Car V2H」や「RH850」ファミリをサポートしたメニューで、最新のチップを使った開発にもいち早く対応していく点をアピールする。
テレビやカメラ開発で培った映像技術を自動車分野を中心として展開していたが、それをさらに進めたのが広域施設管理ソリューションで、見える化、自動化、作業支援という3つの側面から導入効果が紹介されていた。
見える化としては、複数のカメラで撮影した映像をふかん合成してリアルタイムに表示できるというもので、今まで多くのカメラ映像を個別に見ていたような現場で、全体を1つの映像として見通せるようになる。
現在の合成ハードウェアでは、8台のカメラまでをサポートしており、全体を見通す場所だけでなく、各所に設置したカメラから得られる映像も合成することで、死角を設けずに施設全体を監視できるようになる。また、8台のカメラで合成した映像を、さらに別のカメラ群から合成した映像と組み合わせることで、より広いエリアを監視することもできるという。8台のカメラでは収められないような広い施設や道路の監視に利用できるそうだ。
自動化としては、画像認識技術により、古いアナログメータ、ランプやスイッチの状態を読み取り、デジタルデータとして集中管理することにより、管理運営を効率化するという。
作業支援としては、画像認識にAR(拡張現実)とBLE(Bluetooth Low Energy)を組み合わせた「AR作業支援」ソリューションも紹介していた。具体的には作業員が現場を歩いていると、ビーコンを検知して点検する場所を通知、タブレット端末のカメラを向けると現場の画像を認識して、必要な作業や点検手順を端末画面に表示して作業支援するといったものだ。
画面に作業手順が表示されるので作業者が慣れていなくても確実に作業を行えるような環境が実現できるほか、その作業をカメラで記録するので、「確実なエビデンス(証拠)も残せる」(同社)という。カメラと画像認識技術を組み合わせることで、手間の削減と作業の確実性を同時に実現した好例と言えよう。
今回のET2014で同社は、主に自動車向けを中心とした組み込み系の技術だけでなく、広域施設管理のインフラ向けシステムも展示。これまで培ってきた技術を応用して、自動車からさらに社会インフラにも対応するサービスに拡張している同社の最新技術を、具体例とともに確認できる展示となっていた。
・Linuxは、Linus Torvalds氏の米国およびその他の国における登録商標または商標です。
・Androidは、Google Inc.の商標または登録商標です。
・Windowsは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標です。
・QNXは、特定地域におけるQNX Software System Ltd.の登録商標です。
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提供:株式会社 日立産業制御ソリューションズ
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2015年1月31日