松岡氏は最近の組み込み市場の傾向として、システム開発が複雑かつ大規模化していると説く。
「電話1つとっても、黒電話の時代は電気配線だけでよかったものが、最新のスマートフォンになると非常に複雑な機能を持ち、数百万行ものコードを要するシステムを構築しなければならなくなった」。
また松岡氏は、単なる機能追加ではダメで、そこになぜその機能が必要かという必然性が求められてきているとも分析。それを解決するためには、開発する側が一致団結して取り組んでいかなければいけないと語る。
「テレビもアナログからデジタルに変わったが、ではデジタルならばどんなメリットをユーザーに提供できるか、を示さないとユーザーは買ってくれなくなっている。そのメリットはコストかもしれないし、もっと別のものかもしれない。そこのところは、われわれも開発者の皆さんと一緒になって考えていきたい。また今後は、提供するものをわれわれがパートナーと一緒に作り込んでいかなければならないのかもしれない。それがアナログからデジタル、あるいは単機能から複合機能へ変化しているマーケットのトレンドの中で必要なこと」。
システムはどんどん複雑になり、昔では4ビットや8ビットで動かしていたようなシステムも16ビットや32ビットと高機能なCPUを使う時代になっている。必然的に、コードのボリュームも今まで数十KBで済んでいたものが、数MBあるいは数GBのボリュームが必要となり、それに伴って開発環境も変化してきている。
「今まで作れたものが作れなくなった、あるいは必要な機能を追加するために今までは既存の環境でよかったものが、今後は環境そのものを変えなければいけなくなっている。その変化はOSかもしれないしハードかもしれない。これが組み込み市場での現在の大きなトレンド」。
経済産業省の統計によると、これまで日本ではOSを使っていないシステムというのが多かった。だがこの何年かの間に、これらのプラットフォームでOSを使うケースが増えてきている。さらに、日本固有のμITRONから、LinuxやWindowsのようなより高機能なOSにシフトするという動きが出ている。
「われわれが目指している組み込み機器のマーケットは、ただ単により高機能でより高速動作する環境というだけでなく、ほかのデバイスほかのシステムとつながる“相互接続型の端末”のマーケット。これが、現在の組み込み機器のキートレンドにもなっている」。
マイクロソフトはすでにWindows Embedded Standard版のSilverlightなどを提供している。これらの新しいUI向けのソリューションあるいはミドルウェアを使ってもらうことで、いままでにないインターフェイス、あるいはユーザーエクスペリエンスを提供していくことが可能だ、と松岡氏はアピールする。
「単体で完結するという時代ではなくなっている。いかにいろんなものをつなげて、お客さんに新しい使い方、新しい価値、いままでにない考え方を伝えていくかということを推進するのがマイクロソフトの役目」。
複雑で大規模、さらにさまざまな要求に対応しなければならなくなった現代の組み込み市場。Windows Embeddedが提案するソリューションとは?
「マイクロソフトが考える組み込みの世界(後編)」に続く。
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