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同じ機械なのに、なぜ性能が違う? 超音波溶接機の共振ずれとボルト破断:冴えない機械の救いかた(14)(4/4 ページ)

本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第14回は、同じ図面で製作された4台の超音波溶接機で、ある号機は溶接強度が出ず、別の号機ではボルトが1週間で破断した事例を取り上げる。CAE解析と振動計測から、ねじ締結部のフレッチングや共振状態のずれを読み解き、ボルト破断の対策と溶接強度の安定化に至った過程を追う。

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ツールの疲労破断の有無を予測する

 壊れるとしたらツールなので、ツールが疲労破断するかどうかを予測する必要があります。図14にツールの疲労破断評価法を示します。応力集中箇所からき裂が進展するので、危なそうなところの第一主応力を評価しました。

ツールの疲労破断評価法
図14 ツールの疲労破断評価法[クリックで拡大]

 有限要素法は応力集中部の応力を求めるのが得意なのですが、応力集中部の最大応力をクソ真面目に求める必要はありません。図15は、連載第7回で紹介した応力集中係数αと切欠係数βの関係です。応力集中係数αがどれだけ大きくなっても、切欠係数βは頭打ちになります。

応力集中係数αと切欠係数βの関係
図15 応力集中係数αと切欠係数βの関係[クリックで拡大]

 図14の応力観測点とY座標値との関係を図16に示します。切欠係数βの定義は式1でした。

応力観測点の第一主応力
図16 応力観測点の第一主応力[クリックで拡大]
式1
式1

 この定義から、「部材の疲労限度」は応力集中成分を含まない公称応力となります。βは焼き入れ鋼なので4[-]でいいでしょう。

 CAE解析ソフトから公称応力がそのまま出てくるわけではありませんね。そこで、すみ肉溶接止端部の疲労強度評価で使われているホットスポット応力(参考文献[2])を、公称応力の代用としました。

 図16に示すように、応力集中の影響を受けない部分の第一主応力を直線でカーブフィットし、最も応力が大きくなるであろうR部の位置の応力を推定します。これがホットスポット応力です。

 式1を用いて、切欠などで応力集中が発生している部材の疲労限度を求め、これとホットスポット応力を比較します。マージンが2[-]以上あれば、疲労破断しないと判断できます。

 ここでマージンを「安全率」と言ってもいいのですが、安全率の定義はいろいろあります(例えば「引張強さ÷単純計算した応力」などです)。そのため、ここでは「マージン」と表現しました。

 前述した方法を記載した文献は、筆者が調べた限りありません。しかし、今回問題を起こした4台の後継機の開発で、この方法を用いてツールを設計したところ、一発設計で疲労破断しなかったので、そこそこ信頼できる方法だと考えています。

 今回は読者の皆さんにとって少々退屈だったかもしれません。しかし、下記のような内容が含まれておりますので、何かのお役に立てればと思い執筆しました。

  • ダブルナットの使い方の注意点
  • フレッチング疲労
  • 共振機器の性能がばらつく理由
  • 共振機器で共振状態を維持する方法
  • 振動シミュレーションにおける減衰力の表現方法
  • 応力集中係数が大きい場合の疲労破断の有無を予測する方法
  • ホットスポット応力の考え方

 えっ〜と、次は疲労破断対策の失敗事例の2例ですね。溶接と焼き入れの話をします。 (次回へ続く)

⇒「連載バックナンバー」はこちら

Profile

高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表

1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。

構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ


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