ストップ! 外注丸投げ――CAE解析や冷却系の設計を自分でやれるようになろう:CAE解析とExcelを使いながら冷却系設計を自分でやってみる(1)(1/3 ページ)
CAE解析とExcelを使いながら冷却系の設計を“自分でやってみる/できるようになる”ことを目指す連載。連載第1回では、冷却系設計に関する題材をいくつか紹介し、本連載で取り上げるトピックスについて整理する。
いよいよ、新シリーズのスタートです。本連載では、CAE解析と「Excel」を使いながら冷却系の設計を“自分でやってみる/できるようになる”ことを目指します。
前々回(連載「CAEと計測技術を使った振動・騒音対策」)と前回(連載「CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる」)のシリーズでは「冴えない機械の救いかた」について取り上げました。
今回のテーマは「ストップ! 外注丸投げ」です。CAE熱解析や冷却系の設計を発注するのではなく、自身で設計する習慣を身に付けようとするものです。そのために、
(1)熱解析、流体解析、熱流体解析をCAE解析ソフトで行う方法
(2)CAE解析ソフトが出す計算結果と同じ結果を紙と鉛筆で計算する手順
を説明していきます。
紙と鉛筆で計算するといっても、実際にはExcelで計算することになります。読者の皆さんが(1)の方法を選択するか、(2)の方法を選択するかは自由ですが、設計している最中はいくつかの設計案の比較や設計パラメーターのサーベイをすることになります。CAE解析ソフトを何回も動かすことになるので、Excelで設計計算シートを作りパラパラとパラメーターサーベイを行って、最終案をCAE解析するという方法がよいかと思います。それでは始めましょう!
冷却系設計の題材いろいろ
冷却系設計とはどのようなものでしょうか。以下、6つの例を順番に紹介します。
1.ヒートシンク
図1にヒートシンクと冷やしたい部品を示します。高性能PCのフタを開けると大体こんな感じですね。
冷やしたい部品(冷却対象)は、CPUの他にも高性能カメラやモーターなど、いろいろなものが挙げられます。例えば、CPUの冷却などに使用されるヒートシンクの場合は多くの製品が市販されているので、その中から選ぶことになります。
このとき、選択したヒートシンクが所望の性能を満たせるかどうかを予測しなければなりません。冷やしたい部品の最高温度が何度(℃)になるかを計算し、部品の最高許容温度を下回ることが求められます。このような場面で、CAE熱解析や放熱計算が必要になります。
冷やしたい部品の形状が円筒面など曲面であったり、熱量が大きくて巨大なヒートシンクが必要になったりする場合は、ヒートシンクの調達が難しくなるため、図2に示した各部位の寸法を決めてオリジナルで製作することになります。本連載を通じて、ヒートシンクの設計を自身で行えるようになりましょう。
2.コイル
次の例はコイルです。図3にホローコンダクターを使ったコイルを示します。
図3右図のような形状で、銅で作られたものをホローコンダクターといいます。筆者が会社勤めをしていた当時、コイルの設計もしておりました。コイルの設計といえば、コイルが作る磁場の精度を所望の精度にするための磁場解析が必要になることもあるのですが、コイルの設計労力の3分の1が磁場発生のための導体レイアウト設計、3分の1が冷却系の設計、3分の1が絶縁設計となることが多いようです。そう、コイル設計の3分の1が冷却系の設計なのです。極低温で使うコイルなどは断熱設計と冷却系の設計がメインとなります。
図4にコイルの断面を示します。銅が発熱しているので、銅と断熱材が高温となります。A寸法とB寸法の違いからC点で最高温度となります。また、断熱材は発熱していないので断熱材温度は銅の温度と同じになります。銅が溶け出す温度よりもはるかに低い温度で絶縁材がダメージを受けるので、設計ではC点の温度を予測して絶縁材の耐熱温度と比較することになります。
C点の温度が耐熱温度よりも高いときは、冷却水流量を増やすことになります。この場面では、図3左図の入口圧力をどれくらいにすべきかを計算しなければなりません。流体解析の出番です。冷却系の熱設計では、水路設計と隣り合わせとなります。図4右図のようなホローコンダクターもあるので、以降の連載の中で四角形断面流路の圧力損失も計算してみることにします。
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