設計者なら一度はやってみたい形状最適化、お金をかけずにどこまでできる?:フリーFEMソフトとExcelマクロで形状最適化(1)(1/4 ページ)
原理原則を押さえていれば、高額なソフトウェアを用意せずとも「パラメトリック最適化」「トポロジー最適化」「領域最適化」といった“形状最適化”手法を試すことができる! 本連載ではフリーのFEM(有限要素法)ソフトウェア「LISA」と「Excel」のマクロプログラムを用いた形状最適化にチャレンジする。
設計者は、仕様から必要とする機能を明確化し、必要な部品を選択してそれらを組み合わせ、機械として組み立て、仕様を満たしていることを確認し、顧客に引き渡す……といった業務を担っています。そして、こうした設計の過程では、次のような問題の解決に多くの時間を費やします。
- 量産品の場合は特に部品の材料費削減、つまり肉抜きなどによる部品の体積削減が強く求められる
- 生産機械などでは、生産性向上のために高速化が求められるが、高速化には振動問題が付きまとう。この解決には高剛性化と軽量化が必要となる
- 強度計算で部品に作用する応力を許容応力より下回るように設計しなければならない。このとき、部品体積をそのままにして応力が下がる形状を考え出す必要がある
いずれの作業も設計経験を積まなければなかなか解決できない問題ですが、「パラメトリック最適化」「トポロジー最適化(位相最適化)」「領域最適化」という手法を使うと、ソフトウェアが答えを出してくれることがあります。領域最適化という言葉は聞き慣れませんが「形状最適化」のことです。しかし、本連載では“この3つを合わせて形状最適化”と呼ぶことにします。
一般的に形状最適化を行うには高額なソフトウェアを用意する必要があり、気軽に始めるには少々ハードルが高いといえます。そこで、本連載ではフリーのFEM(有限要素法)ソフトウェアと「Excel」のマクロプログラムで形状最適化にチャレンジしてみようと思います。原理原則を押さえていれば、高額なソフトウェアを購入しなくても自分でできるのです。
このような方にオススメ!
本連載の対象読者については、以下のような方々を想定しています。
- 初期コストゼロで形状最適化をやってみたい
- 形状最適化ソフトを導入したいが高額なため、どのような効果があるか確かめたい
- 形状最適化ソフトを運用しているが、ブラックボックス的に使っている。その仕組みを知りたい
- 形状最適化ソフトを運用しているが、誰がやっても同じ結果なので少々つまらなく感じている
トポロジー最適化を最初に知ったときは、ちょっとしたカルチャーショックでした。図1のように設計空間、固定位置、荷重条件を設定するだけで、ソフトウェアがアーチ形状を考え出してくれるのですから、設計者なら誰でも使ってみたいと感じると思います。
本連載を単に読み物としてご覧いただくだけでなく、ぜひご自身の手で試してみてください。フリーのFEMソフトとExcelのマクロファイルをダウンロードして、ポチポチッとボタンを押せば、真っ白な状態から図1のような形状に至る過程を見ることができます。骨がにょきにょきっと現れて成長していくイメージです。これを眺めるのも面白いかと思います。もちろん境界条件を変えると、自分がやってみたい条件でトポロジー最適化ができます。
なお、本連載ではなるべく数学的な厳密性を重視しますが、難しい用語は一切使いません。微分は出てきますが微分方程式を解くようなことはしません。そもそもコンピュータは積分ができないので、Excelの表計算機能で総和を計算することになります。必要な知識は以下の通りです。
- ラグランジュの未定乗数法(参考文献[1])
- 微分・積分
- 材料力学の応力、ひずみとポアソン比
- 片持ちはりの応力
- ベクトルの内積と外積
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.