メカトロ機器を素早く動かしたい! LMガイドのレイアウトで変わる機械剛性:冴えない機械の救いかた(12)(1/6 ページ)
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第12回は、LMガイドのレイアウトに着目。1軸アクチュエーターのフィードバック制御と機械剛性の関係を整理し、LMブロックの配置によってテーブル剛性がどのように変わり、それが位置決め動作にどう影響するのかを、計算と実験データを交えて紹介する。
今回は、「LMガイド(直動ガイド)」のレイアウト失敗事例とその対処法です。LMガイドのレイアウト次第で装置剛性が大幅に変わることを、実験データ付きで説明します。
LMガイドのレイアウトについてくどくどとお話しする理由
前回は、(1)面と面の接触剛性に比べて、球と面の接触剛性は2桁程度小さいこと、(2)LMガイドの単純荷重に対する剛性に比べて、モーメント荷重に対する剛性も2桁程度小さいことを述べました。
そして、ここでの目的は以下の2点です。
- 機械の生産性向上と位置決め精度向上を最終目的として、機械をスピードアップしたときの位置決め完了時間を短縮する
- 上記目的の達成に向けて振動問題を解決するため、その手段の1つである機械剛性向上の必要性を説明する
題材として、図1に示すサーボモーターを使った「1軸アクチュエーター」を取り上げます。これは「1軸テーブル」や「1軸ステージ」とも呼ばれるものです。
サーボモーターの回転角をロータリーエンコーダーで測定し、フィードバック系を構築することでステージの位置決めを行います。図2は、そのフィードバック系を単純化したものです。
例えば、夏休みの宿題を例に取り上げましょう。高校野球が始まり、お盆休みのころです。あと2週間くらいで夏休みが終わります。ここで、夏休みの宿題の進捗(しんちょく)を見てみましょう。2週間では処理し切れない宿題が残っています。そこで、「よし、1日の宿題消化時間を1時間増やそう」と考えた状態が「ゲインの出力信号が1[-]」の状態に相当します。「これでは間に合わないな、1日の宿題消化時間を2時間増やそう」と考えた状態が「ゲインの出力信号が2[-]」の状態です。このように、夏休みの最終日に宿題が終わるように調整していくのがフィードバック系となります。
でも、お盆休みには父母の実家(田園風景のある田舎です)に帰ります。虫かごなど気の利いたものなんてないので、捕まえた蛍は青ネギの中に入れて楽しんだものです。そのような予想外のイベントがあるから、日々ゲインを調整するわけです。
図2にプラス記号「+」とマイナス記号「−」があります。順調に宿題が進んでいれば、宿題の進捗(A)とその日までに処理した宿題量(B)が一致することになります。AとBが一致しているので、その差はゼロです。プラス記号とマイナス記号は、目標と現在位置の差を計算することを意味しています。差がゼロなので、ペースを変えずに宿題をこなしていけばよいことになります。慣性走行なので外力は不要ですね。
フィードバック系を少し深掘りしてみよう
1軸アクチュエーターの例を2つ紹介します。図3に示すように、「セミクローズドループ」と「フルクローズドループ」です。
フルクローズドループは、例えば加工点にリニアスケールを設置して、加工点の位置を目標位置に移動させる仕組みです。一方、セミクローズドループは、サーボモーターに直接取り付けられたロータリーエンコーダーによってモーターの回転角を制御します。
ここではセミクローズドループで説明します。結局、機械の剛性が低いと機械をスピードアップできない点は同じなのですが、セミクローズドループの方が真意が伝わりやすいと思います。
機械を素早く動かし、ピタッとした位置に停止させるためには、前述したゲインを上げればよく、「OpenModelica」(参考文献[1])を使ってシミュレートした例を図4に示します。図4左図は、順調にゲインを上げた計算結果です。位置決めに要する時間は短縮されていきます。図4右図は、欲を出してゲインをもっと大きくした計算結果です。オーバーシュートが発生して、位置決めに要する時間は10[s]より短くできません。ゲインを上げるにも限界がありそうです。
セミクローズドループによる1軸アクチュエーターの変形を考えてみましょう。図5は1軸アクチュエーターのヨー角変形です。急加速によってボールねじ推力が生じます。可動部重心(テーブル重心と図示)の位置はボールねじ推力の作用線上にないので、推力によってモーメント荷重が発生します。この結果、LMガイドにホリゾンタル荷重とヨーイングモーメントが発生してボールがつぶれ、テーブルが変形します。
弾性変形する箇所はこれだけではなく、推力が発生しているボールねじのボールもつぶれます。また、ボールねじのアキシャル荷重を支えているベアリングのボールもつぶれています。あと、シミュレーションで分かったことですが、ボールねじそのもののねじれ角と縮み量も無視できません。
このようにサーボモーターの先には、多くの弾性変形する要素、つまりばねがあります。何度も言ってきましたが、ここでも言っておきましょう。
機械の弾性変形する要素をばねとすると、これらのばねは直列つなぎである。
「オイラは可動部重心がボールねじ推力線上から外れるようなヘタな設計はしないぜ」とお考えの読者もいるかと思います。次はXYθ軸テーブルを考えましょう。X軸アクチュエーターにY軸アクチュエーターが乗っかっており、その上にθ軸アクチュエーターが乗っかっています。これを図7に示します。
今度は急減速した状態を図にしました。Y軸テーブルとθ軸テーブルが「おっとっと」と前のめりしています。一番下の軸のボールねじ推力の作用線上に可動部の重心を位置させることは無理な相談ですね。ほとんどの機械の場合、ボールねじ推力の作用線上に可動部の重心がないと考えた方がよいと思います。この結果、急加速時と急減速時にテーブルは弾性変形します。
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