ボルト1本でどこまで耐えられる? 応力集中と許容繰り返し荷重を考える:冴えない機械の救いかた(7)(1/5 ページ)
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第7回は、ボルト1本がどれだけの繰り返し荷重に耐えられるのかを考える。ねじ谷底の応力集中や疲労限度線図の基礎を整理しながら、ボルト1本構成の許容繰り返し荷重を求める。
MONOistでボルトの話をするのは3回目です。今回も設計初心者向けに全面的に書き直しています。
連載第7回では、ねじ谷底の応力集中によって疲労強度が低下する現象を説明しながら、ボルト1本構成における許容繰り返し荷重を考えていきます。
ねじ谷底の応力集中係数α
ボルトの疲労破断箇所は図1のかみ合い第1山のねじ谷底か首下が多いようです。ここでは、ねじ谷底の疲労破断を考えましょう。
ボルト類では、ねじ谷底に応力集中が発生するため疲労強度が低下します。まずは、その応力集中の度合いを調べます。
といっても、いくつかのねじに関する文献にはねじ谷底の応力集中係数が載っており、その値は5〜6[-]程度です。では、本当に応力は5〜6倍になっているのでしょうか。シミュレートしてみましょう。
図2にシミュレーション結果を示します。ボルトの締め付けトルクは、断面の公称応力(応力集中成分を含まない応力、つまり荷重/有効断面積です)が降伏応力の70[%]程度となるようにすべきだと過去の記事で述べました。この例では、公称応力を152[MPa]としました。
半径3.96[mm]の位置がねじ谷底で、相当応力は1289[MPa]でした。よって、応力集中係数αは以下となります。
文献値より大きな結果となりました。
ここではαの不一致は大きな問題としません。少なくとも5[-]より大きいという結果だけを利用しましょう。
ただし、最大応力が1289[MPa]ということは、降伏応力(例えば320[MPa])よりかなり大きいということです。つまり、ねじ谷底は塑性変形しているはずですね。
では、材質が塑性変形するとして解析し直してみましょう。
材料の応力−ひずみ線図は本来なら引張試験結果から持ってくるべきですが、ここでは2直線近似移動硬化則で変形するとしましょう。図3左図にモデル化した応力−ひずみ線図を示します。
弾性領域の傾きはヤング率ですね。塑性変形領域の傾きは「接線係数」と呼ばれていて1.45[GPa]としました。強度区分4.8の場合、降伏応力は0.8×400=320[MPa]ですが、計算は250[MPa]で行いました。この点はご容赦ください。
半径3.96[mm]の位置がねじ谷底で、相当応力は276[MPa]でした。降伏応力より少しだけ大きくなりました。どれだけ応力集中係数αが大きくても、実際に発生している応力は降伏応力程度だということです。
応力集中による疲労強度の低下 切欠係数β
では、応力集中によってどれくらい疲労強度が低下するのかを見積もってみます。切欠係数βの定義を以下に示します。
切欠係数βは実験でしか求まりません。αからβを求める式もいくつか提案されてきましたが定着していないように思えます。
αとβの関係について、日本機械学会の便覧など多くの文献で引用されているグラフを図4に示します。文献の図はそのまま掲載できないので、応力の単位をSI単位系に変換して描き直しました。疲労強度の計算をする設計者の方々は、この図を頭にたたき込んでおいてください。
引張強さが400[MPa]の場合(強度区分4.8のボルトですね)、αが3[-]よりどれだけ大きくなってもβは2[-]程度です。
引張強さが780[MPa]の場合(強度区分8.8のボルトでしょうか)、αが4[-]よりどれだけ大きくなってもβは3.4[-]くらいです。
A2-70のステンレスボルトはこれに従いません。この点は後で説明します。
先ほど「応力集中係数αは少なくとも5[-]より大きい結果だけを利用しましょう」と説明しました。今回の解析結果では、αは5[-]より大きいので、βはαの値にかかわらず一定値だと見積もれますね。
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![応力集中係数αと切欠係数βの関係(参考文献[1])](https://image.itmedia.co.jp/mn/articles/2606/22/ay4328_saenai07_fig04_w490.jpg)