ボルト1本でどこまで耐えられる? 応力集中と許容繰り返し荷重を考える:冴えない機械の救いかた(7)(2/5 ページ)
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第7回は、ボルト1本がどれだけの繰り返し荷重に耐えられるのかを考える。ねじ谷底の応力集中や疲労限度線図の基礎を整理しながら、ボルト1本構成の許容繰り返し荷重を求める。
ボルトの疲労強度
では、締め付けられていないボルトの疲労強度を見積もりましょう。ボルトには強度区分があります。例えば以下となります。
- 強度区分4.8だと、引張強さは400[MPa]、降伏応力は400×0.8=320[MPa]
- 強度区分12.9だと、引張強さは1200[MPa]、降伏応力は1200×0.9=1080[MPa]
- A2-70のステンレスボルトなら引張強さは700[MPa]、0.2%耐力は450[MPa]
(※0.2%耐力は降伏応力と考えてください)
鉄鋼材料の場合、疲労限度はどのように求めるのでしょうか。本来は実験でしか求められないので、普通はネットで検索して調べることになります。SS400なら220[MPa]くらいでしょうか。
図5に鉄鋼材料の引張強さと疲労限度の関係を示します。参考文献[2]の図(過去の多数の実験データを集めてプロットしたもの)をそのまま掲載できないので、図5は筆者が作成しました。なお、プロットの位置は乱数を使って決めています。
図5から、ステンレス鋼を除く鉄鋼材料について次のことがいえます。
- 引張強さと疲労限度は比例関係にある
- 疲労限度のばらつきを考慮し、その下限を採用して引張強さの0.35倍を疲労限度としてはどうだろうか
- 引張強さが700[MPa]を超えたあたりから、疲労限度の上昇が頭打ちになり、かつばらつきが大きくなる
筆者はネットで検索した値を使わず、引張強さの0.35倍を疲労限度としています。後工程で安全率を大きめに取る場合は引張強さの0.5倍です。
SS400、つまり引張強さが400[MPa]の場合に注目します。図5のプロットは上下にばらついています。では、ネットに載っていた疲労限度は、これから設計しようとする材料の疲労限度と一致するのでしょうか。
SS400のJIS規格(参考文献[3])を見ると、炭素やマンガンなどの化学成分量は規定されていません。また、鋼板は圧延工程や熱処理によって強度が決まります。そのため、ネットで見つけた疲労限度と一致している保証はありません。
一方、図5のデータは多くの鉄鋼材料の実験データを集めたものなので、条件の違いもある程度織り込まれています。このような理由から、筆者はネットに載っている疲労限度を使わないのです。
では、応力集中が発生しているボルトの疲労限度はいくらになるでしょうか。式2の定義から、疲労限度を切欠係数βで割れば求まります。次式です。
前述した疲労限度は、ちゃんと締め付けられていないボルトを前提としたものです。これから規定トルクで締結されているボルトについて述べます。
はじめから変動しない荷重(静荷重)がかかっていて、
それに繰り返し荷重が作用する場合
ボルト締結体は定められたトルクで締め付けられているので、機械が動いていないときでもボルトには静的な引張荷重が作用しています。これを「平均応力」と呼ぶことにしましょう。
引張りの平均応力が作用しているときに、疲労限度がどれくらい低下するのかを説明します。
図6に応力の時間変化を示します。今まで述べてきたのは図6左図の状態で、平均応力がゼロの場合です。
今、図6右図のように部品が引っ張られていて、さらに繰り返し荷重が作用している場合を考えます。例えばボルトがこれに相当します。ボルトは初期締結によって常に引張応力(平均応力)が発生していて、ボルトによって固定されている部品に繰り返し荷重が作用すると、ボルトに発生する応力は「平均応力+応力振幅」となります。
最初に引っ張られているときの応力、つまり平均応力が材料の引張強さだったとすると、少しの刺激によってその材料は破断しますね。
ということは、平均応力が作用しているときの疲労限度は、平均応力がないときの疲労限度より小さくなるはずです。
では、どれくらい小さくなるのでしょうか。このためには疲労限度線図というグラフを描いて数値を読み取ります。
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