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余計な溶接が疲労破断を招く!? L金具の取り付け方法に潜む落とし穴:冴えない機械の救いかた(15)(1/3 ページ)

本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第15回は、繰り返し荷重が作用しないL金具を溶接したことで、ベース板が疲労破断する事例を取り上げる。溶接部の疲労強度を評価し、ボルト締結との違いを考える。

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 今回は余計な溶接をした結果、疲労破断してしまった例を紹介します。

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問題提起

 図1に示したように、板にL金具をすみ肉溶接した部材を考えましょう。機械の稼働時には、この部材に繰り返し荷重が作用します。一方、アイボルトには装置の搬入時などに1度か2度しか荷重がかかりません。繰り返し荷重は無視できないので、ベース板の金属疲労を検討します。

 考え方のポイントは以下です。

L金具には繰り返し荷重がかからず、ベース板のみに繰り返し荷重が作用するので、ベース板の疲労強度計算だけでOKだろう。

今回の問題提起
図1 今回の問題提起[クリックで拡大]

 図1に、上記の発想でベース板の強度計算をした結果を示します。今回は繰り返し荷重なので、安全率は5[-]です。これを用いて許容応力を計算したところ、繰り返し荷重による応力より大きかったので「これでOK!」と判断しました。この考え方について考察しましょう。

溶接して疲労破断するかの予測

 溶接ビードへの荷重のかかり方には2通りあります。非荷重伝達型と荷重伝達型です。図2に示します。ちなみに、図1は非荷重伝達型ですね。

非荷重伝達型と荷重伝達型のすみ肉溶接
図2 非荷重伝達型と荷重伝達型のすみ肉溶接[クリックで拡大]

 ここで力線という、力の流れ(流線)のようなものを想像します。非荷重伝達型すみ肉溶接では、力線は板の中だけを通ると考えられます。荷重伝達型すみ肉溶接の力線は溶接ビードを通ることになるので、溶接ビードが疲労破断の対象となります。今回は非荷重伝達型すみ肉溶接(図2左側)の疲労破断について考えましょう。

 ちょっと応力を計算してみましょう。図3のようになりました。溶接ビードの付け根(「溶接止端部」といいます)に応力集中が発生しています。一方、L金具には荷重が作用していないので、応力はほとんど発生していません。

すみ肉溶接したL金具周辺の第一主応力分布
図3 すみ肉溶接したL金具周辺の第一主応力分布[クリックで拡大]

 図3のA線上の第一主応力をグラフで表しましょう。図4に示します。図の公称応力は図1で計算した応力です。最大応力は275[MPa]程度となり、溶接止端部に応力集中が発生しています。図1の判定をやり直す必要が生じました。

A線上の第一主応力分布
図4 A線上の第一主応力分布[クリックで拡大]

 考えられる金属疲労によるき裂は図5のようになります。図に示した止端部破壊の有無を予測しましょう。

考えられる金属疲労によるき裂
図5 考えられる金属疲労によるき裂[クリックで拡大]

 単なる板に何らかの目的でL金具を取り付けたいとしましょう。例えば、1、2度しか荷重が作用しないアイボルトや、荷重のかからない部品を取り付けたいときなどです。方法としては、(1)ボルト締結、(2)すみ肉溶接が考えられます。

 「う〜ん。部品点数が増えるから、1枚の図面で済む溶接にしよう」とした場合を考えます。図6左図です。後に図6の2つのケースを比較します。

板にL金具を付けた例
図6 板にL金具を付けた例[クリックで拡大]

 鉄鋼材料はSS400材としましょう。疲労限度については図7を参考にします。これは参考文献[1]のプロット図(過去にASME(米国の機械学会)が集めたデータをプロットしたものです)を見て、筆者が作ったものです。軸の単位が違いますし、重ねてみると原文と各プロットが少しずれていることが分かると思います。

鉄鋼材料の引張強さと疲労限度の関係
図7 鉄鋼材料の引張強さと疲労限度の関係[クリックで拡大]

 SS400の疲労限度をググってみると、例えば235[MPa]など、いろいろな値が出てきます。しかし、鉄鋼材料は板厚、過去の圧延履歴、曲げ加工などの塑性変形履歴、切削履歴などにより、その強度はばらつきます。今まで何度も言ってきたように、ググった値を使うのではなく、ばらつきの範囲を考慮して考える必要があります。

 図7のプロットから、引張強さが1000[MPa]以下の領域では、疲労限度は引張強さの0.35倍と考えたらよいと思っています。これであれば、もう鉄鋼材料の疲労限度を調べる必要がないので便利ですね。

 次は切欠係数βです。応力集中係数αと切欠係数βは一致せず、β≦αだと、今まで何度も言ってきましたね。図8にそのデータを示します。参考文献[2]の図は日本機械学会の文献などでも多く引用されています。そのまま掲載できないので、意図をくみ取って筆者が作りました。

応力集中係数αと切欠係数βの関係(参考文献[2])
図8 応力集中係数αと切欠係数βの関係(参考文献[2])[クリックで拡大]

 今回は引張強さが400[MPa]なので、応力集中係数αが2以上で、切欠係数βはだいたい2[-]ですね。

 次に、平均応力の影響を考慮します。図9に応力の時間変化を示します。図9左図は平均応力がゼロの場合です。

 今、何らかの理由で時間変化のない引張応力が作用していて、それに繰り返し荷重が重畳している場合を考えます。例えば、溶接部の残留応力がこれに相当します。最初に引っ張られているときの応力、つまり平均応力が材料の引張強さに近かったとすると、少しの刺激によってその材料は破断しますね。

 ということは、平均応力が作用しているときの疲労破断しないギリギリの応力振幅(疲労限度)は、平均応力がないときの応力振幅より小さくなります。小さくなる度合いを調べましょう。

応力の時間変化
図9 応力の時間変化[クリックで拡大]

 以前紹介した疲労限度線図のうち、修正グッドン線図を使いましょう。これを図10に示します。平均応力とは図9のσmです。

修正グッドン線図(参考文献[1])
図10 修正グッドン線図(参考文献[1])[クリックで拡大]

 溶接部の平均応力(時間変化のない重畳された応力)を推定しましょう。一般的に溶接部には残留応力があるといわれています。平均応力はその大きさとなります。

 溶接ビードが溶けているときの形状を初期形状とすると、室温まで冷えたときには熱収縮しています。というと、鉄の融点(1538[℃])から室温までの熱変形解析が考えられますが、赤い鉄はたたくと簡単に変形することから、冷却過程のうち高温では溶接ビードはかなり容易に塑性変形します。この分を考慮して、A1線近傍の900[℃]から熱収縮解析をスタートしましょう。

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