シャープ河村新社長「脱ハードウェアは不要」、鴻海製AIサーバとEVで描く再成長:製造マネジメントニュース
シャープは2026年4月1日付で、社長交代の役員人事を実施。新社長に河村哲治氏が就任し、現社長の沖津雅浩氏は代表取締役副会長に就く。親会社の鴻海と連携を深めAIサーバーやEV、B2B領域を強化する。
シャープは2026年3月31日、大阪本社とオンラインで記者会見を開き、同年4月1日付で実施する社長交代をはじめとする役員人事について説明した。専務執行役員 CBDO(Chief Business Development Officer)の河村哲治氏が社長執行役員 CEOに昇格し、約2年間社長を務めた沖津雅浩氏は代表取締役副会長に就く。
河村氏率いる新体制では、液晶パネル事業などの構造改革に一定のめどがついたことを受け、新たな経営フェーズへの移行を示した。新体制では、親会社である台湾の鴻海精密工業(以下、鴻海)との連携強化や、AI(人工知能)/EV(電気自動車)分野での新規事業創出を進め、BtoB(B2B)事業の拡大を狙う。
液晶パネル事業、赤字「収束」で2027年度最終黒字化目指す
シャープは液晶パネル事業の不振が続き、2023年3月期と2024年3月期には2期連続の最終赤字に陥った。沖津氏の下で業績回復に向けデバイス事業ではアセットライト化を掲げ、液晶パネル事業の縮小など構造改革を進めてきた。
構造改革の一環として、2027年度までの中期経営計画では、液晶パネル事業を白山工場(石川県白山市)と亀山第1工場(三重県亀山市)へ集約する方針を打ち出した。しかし、鴻海へ売却予定だった亀山第2工場については、鴻海側の意向により売却交渉が不成立となったことを2026年2月10日に発表。第2工場は同年8月をめどに生産を停止することになった。一連の改革や、Windows 11への切り替え特需によるPC事業の好調で、全社業績は回復基調にあるが、足元では液晶パネル事業単体の赤字が依然として残っている状況だ。
退任する沖津氏は会見において、「液晶事業は赤字が続いているものの、収束させることを決めたため、これ以降赤字が出ることはない」と言及し、「中期経営計画で定めたデバイス事業全体の計画には何も変更はないため、新社長がしっかりとやってくれると思っている」と語った。亀山第2工場の閉鎖などを経て、液晶パネル事業は2026年度の営業黒字化、2027年度の最終黒字化を目指す方針である。
「脱ハードウェアは考えていない」、AIの掛け合わせで新しい形へ
バトンを受け継ぐ河村新体制は、次なる成長に向けた新しい事業創出と事業構造の転換へ本格的に舵を切ることになる。従来のBtoC(B2C)家電や液晶デバイスを中心とした事業モデルから脱却し、BtoB領域を強力に推進していく方針だ。
河村氏は今後の成長をけん引する「キーテクノロジーはAI」と語った。その布石として、2026年4月1日付でCTO(最高技術責任者)を新設し、現スマートビジネスソリューション事業本部長の徳山満氏が執行役員 CTOとして就任する。徳山氏を中心に、全社的なAIとDX(デジタルトランスフォーメーション)サービスの体制強化を主導する。直近の同年3月23日にはIT企業であるシナプスイノベーションの買収も発表しており、一連の投資を通じて、AI/DXサービス関連の売上高を2024年度の310億円から、2027年度には約600億円へと倍増させる目標を掲げた。
一方で河村氏は、BtoC事業からの完全な撤退は否定した。「決して『脱ハードウェア』とは考えていない。例えばテレビにおいても、AIを掛け合わせることで、単なる電波の受像機から新たな価値や役割を持った表示装置になる可能性がある」(河村氏)と語り、ハードウェアの知見とAIの融合により、次世代の成長基盤を確立していく考えを示した。
親会社の鴻海と連携強化しAIサーバとEVで新規事業検討
新規事業創出の中核に据えるのが、親会社である鴻海との連携強化だ。2016年にシャープが傘下入りした鴻海グループは現在、全事業の4割をAIサーバ関連のソリューションが占めており、半導体、ロボティクス、宇宙、次世代通信といった領域にも多角的に展開している。また、インド市場を「第3の地域」と位置付け、政府関係者や現地企業とネットワークを構築している。
河村氏は、鴻海との今までとこれからの関係性について次のように語った。
「グループ入り当初は、鴻海の調達力を生かしたEMS(電子機器受託製造サービス)としての付き合い方が中心であり、十分すぎるほどサポートしてもらった。しかし、当社側の貪欲さが欠けていた。今後はシャープからより踏み込んだ提案を行い、新規事業の足掛かりにしたい。彼らの事業やリソースを深く理解し、それをシャープの事業へと落とし込んでいく」(河村氏)
具体的な新規事業として現在検討段階にあるのが、AIとEVの分野である。AI領域においては、まず日本市場でのAIサーバ展開を広げていく方針だ。「鴻海が日本の国産AIサーバを製造することは決定している。日本のAI計算能力の需要が『学習』から『推論』へと移行しつつある市況を捉えながら、具体的にどのような製品を作り込むべきか活発な議論を進めている」(河村氏)としている。
EV事業については、2026年度中に事業化の最終判断を下す方針だ。シャープはすでに、鴻海グループが展開するEV用オープンプラットフォーム「MIH」を活用したコンセプトモデル「LDK+(エルディーケープラス)」を発表している。河村氏は「日本のEV普及率が1%程度にとどまる中、当社は車両そのものではなく『車内演出』という新たなコンセプトを打ち出す」と言及。市場規模に見合う適切な投資規模をシミュレーションした上で、事業化の可否を早期に見極める構えだ。
25年の海外経験を武器に、新生シャープを「次のステージ」へ
河村氏は1984年の入社以降、欧州統括会社や米国販売会社などで責任者を歴任し、2025年4月から専務執行役員 CBDOを務めている。会見で河村氏は自らの強みを、「グローバルでの関係構築をはじめとするコミュニケーション能力と、実行力、決断力にある」と自己評価した。
新体制での再成長に向けて「これまでの経験を全て注ぎ込み、シャープを次のステージに導けるよう全力で取り組んでいく」と力強く語った。
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