シャープはPC特需で損益回復、次の柱としてAIサーバやEVの事業化を急ぐ:製造マネジメントニュース
シャープは、2025年度第2四半期の連結業績を発表した。Windows 11への切り替え需要で好調だったPC事業などがけん引し、利益が大幅に改善した。
シャープは2025年11月10日、2026年3月期(2025年度)第2四半期の連結業績を発表した。売上高は前年同期比で減少したが、Windows 11への切り替え需要で好調だったPC事業などがけん引し、利益が大幅に改善した。
Windows 10サポート終了の特需でPC事業が好調
シャープの2025年度第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比15.3%減の4778億円、営業利益が同117.1%増の136億円、経常利益が同28.7%増の149億円、最終利益が同24.8%減の182億円となり、減収増益となった。
シャープ 代表取締役 社長執行役員 CEOの沖津雅浩氏は第1〜2四半期合計の業績について「ブランド事業は売上高は前年に及ばなかったものの、営業利益は前年同期に比べて約1.5倍となった。デバイス事業もSDP(堺ディスプレイプロダクト)の終息などアセットライトの方向性から売り上げは減少したが、営業利益は前年同期の4億円から289億円に大きく伸びた」と述べている。
懸念された米国関税による営業利益への影響も、価格転嫁などを進めたことで改善が進んだ。当初は37億円のマイナス影響がある見込みだったが、25億円に抑えた。「米国関税の影響を受ける事業は大きく2つあるが、最も大きいのはMFPだ。これは業界全体で売価アップを進める動きがあったので、価格転嫁ができた。もう1つは調理家電だが、これもある程度の売価アップを実現できた。原価面もコストダウンを進められたことも効果を発揮した」と沖津氏は述べている。
この結果を受け、2025年度通期の業績予想は、損益面で上方修正を行った。営業利益は前回予想比150億円引き上げ450億円、経常利益は同180億円改善し450億円、最終利益は210億円改善し530億円としている。
AIサーバやEVで次の収益の柱を作る
シャープでは、2027年度に、全社の営業利益を800億円に引き上げることなどを中心とした中期経営計画を進行中だが、その進捗具合についても「財務面では、営業利益が当初想定を上回るペースで改善している他、資産売却も順調に進み、自己資本比率は大きく改善した」(沖津氏)としている。
2025年5月に鴻海精密工業(以下、鴻海)への売却を発表した亀山第2工場については、同年9月15日にMOUを締結し、2025年内に最終契約を締結する見通しだ。2026年8月までに譲渡を完了し、その後、AIサーバの製造拠点として活用していく方針だ。「AIデータセンターに関連するソリューションは新産業として成長させていく。製造については亀山第2工場で鴻海が行い、販売についてシャープが新たな付加価値を生み出せるように検討を進める。時期は正式譲渡後になるため早くても2027年度になる」と沖津氏は述べている。
また「Japan Mobility Show 2025」で発表した独自のEV(電気自動車)コンセプトモデル「LDK+」については「既存の自動車メーカーと競い合うことは考えていない。シャープらしさを前面に出したい。既存事業で利益ベースを作り、次の柱の1つとしてEVを考えている」(沖津氏)としていた。
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