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「既存の棚」を活用したピッキングAGV誕生 シャープが挑む物流自動化国際物流総合展2025(1/2 ページ)

シャープは「国際物流総合展2025 第4回 INNOVATION EXPO」において、物流現場の省人化や自動化を支援するソリューションとして、倉庫でのピッキング作業を効率化する「スリムスタッカー・ロボットストレージシステム」などを披露した。

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 シャープは「国際物流総合展2025 第4回 INNOVATION EXPO」(2025年9月10〜12日、東京ビッグサイト)において、物流現場の省人化や自動化を支援するソリューションとして、倉庫でのピッキング作業を効率化する「スリムスタッカー・ロボットストレージシステム」などを披露した。同展示会に出展するのは今回が初めてである。

既存の棚をそのまま活用できるロボットシステム

 スリムスタッカー・ロボットストレージシステムは、倉庫の稼働を続けながらGTP(Goods to Person)方式の搬送システムを導入できる倉庫内搬送の自動化システムで、既存の設備をそのまま使える。

「スリム型スタッカー自動搬送ロボット(ストレージ仕様)」
「スリム型スタッカー自動搬送ロボット(ストレージ仕様)」[クリックして拡大]

 同システムは、ケース移載アーム付きAGV(自動搬送ロボット)「スリム型スタッカー自動搬送ロボット(ストレージ仕様)」、シャープが展開する集中制御システム「AOS」、システム制御用のサーバPC、AGVがピックした荷物を集約する「ピックステーション」、作業者を守る安全柵、AGVを充電する自動充電器で構成されている。2025年9月2日から受注を開始している。

システム構成例
システム構成例[クリックして拡大]出所:シャープ

 物流業界ではEC(電子商取引)の拡大などにより物流量が増加し、人手不足が深刻化している。物流倉庫においては、DX(デジタルトランスフォーメーション)やロボット活用による省人化/自動化のニーズが高まっており、自動搬送ロボットがピッキング作業者の下に商品棚やパレットを運ぶGTP方式の搬送システムが注目されている。

 一方で、GTP方式のシステム導入には既存の設備を一時撤去させた後に搬送システムを設置する必要があるため、倉庫稼働を止められない現場には導入が難しいという課題があった。これらの背景からシャープはスリムスタッカー・ロボットストレージシステムの展開を決めた。「中小企業や地方の倉庫がGTP方式の搬送システムを導入するために倉庫稼働を止めた場合に、会社にとって大きなマイナスが発生し、自動化がなかなか進まなかった。今回のスリムスタッカー・ロボットストレージシステムはこの問題を解決するために開発した」(シャープの担当者)

 同システムの要であるスリム型スタッカー自動搬送ロボット(ストレージ仕様)の一番の特徴は、既存の棚をそのまま活用できる点である。同自動搬送ロボットは、幅700×奥行き1800×高さ2400mmのスリム設計になっており、一般的な倉庫の通路(幅900〜1200mm程度)をそのまま通行できる。これにより、小規模な倉庫や天井が低い倉庫などでも導入ができ、様子を見ながら段階的にシステムを設置することも可能である。

 「何人かで広い倉庫内を歩き回ってモノを集める代わりに、ロボットが倉庫を走り回って作業者の前に持ってきてくれるコンセプトで開発をした。一般的な棚で活用できるように、搬送ロボットは下から10cmぐらいの高さからモノを取り出せるようにし、高さ2mぐらいの棚に直接アクセスできるように設計している」(シャープの担当者)

「スリム型スタッカー自動搬送ロボット(ストレージ仕様)」が棚の間に入る様子
「スリム型スタッカー自動搬送ロボット(ストレージ仕様)」が棚の間に入る様子[クリックして拡大]

 スリム型スタッカー自動搬送ロボット(ストレージ仕様)は、移載アームを昇降させて棚からケースをピックし、収納部に格納して荷物を搬送する。サイズや形態の異なるケースを収納でき、1ケース当たり最大20kgまで積載可能で、6段収納部がある場合は120kgまでの荷物を運ぶことができる。作業者の元にたどり着いたら、ケース収納部を分離させて一括で荷物を届けて、そのまま次の作業に向かう。これにより作業者は倉庫内を歩き回ってピッキングをする必要がなくなり、大幅な業務効率化が実現できる。また、必要な荷物だけをロボットが集めた棚からピッキングするため、ヒューマンエラーによる業務トラブルを防ぐことができる。

「スリム型スタッカー自動搬送ロボット(ストレージ仕様)」が可能にすること
「スリム型スタッカー自動搬送ロボット(ストレージ仕様)」が可能にすること[クリックして拡大]出所:シャープ

 今回の新システムを展開にすることついて、「自動搬送システムについては後発であり、大手メーカーがいる中でどうやって戦っていくかを考えている。シャープが人気を得るためには、多くの顧客に使ってもらうことが必要である」(シャープの担当者)と述べる。シャープはロボティクス事業で2027年に向けて売上高を100億円アップさせるという目標を立てている。このような背景がある中で、自動化の導入を諦めていた層にスリムスタッカー・ロボットストレージシステムを展開し、同社の目標達成に向けて後押ししていく。

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