米国での損失は16兆円、小売店での窃盗をテクノロジーで防ぐ:スマートリテール(2/2 ページ)
小売店での窃盗による損失が、グローバルで小売業の問題になっている。小売りの業界団体である全米小売業協会が発表した2022年の米国での被害額は1120億ドル(約16.5兆円)に上る。小売り事業者の78%が窃盗などの損失を最小化することが重大な課題だと認識しており、76%がこれに対応するテクノロジーへの投資を進めている。
買い物客のさまざまなニーズが高まる一方で、従業員の85%、経営者の81%が店舗により多くの人手が必要だと強く感じているなど人手不足は深刻だ。買い物客は、世代別にみても7割以上の買い物客が店員との直接的な対話を希望しており、店員側も買い物客に対して一人一人に合わせて商品を提案するなど接客したいと考えている。
カメラやRFIDを使ったソリューション
膨大な被害額への対策と買い物客の満足度向上の両方が求められる小売業界に向けて、ゼブラ・テクノロジーズ・ジャパンはセルフレジに関連したさまざまなソリューションを用意している。
セルフレジの不正利用では、バーコードを指などで隠してスキャンしたふりをして会計を終わらせるという手口がある。これに対し、カメラによって正しくバーコードをスキャンしたかをその場で判定し、スキャンしていない場合に店員にアラートを出せるシステムを製品化する。「すでにセルフレジ付近にカメラは設置されており、抑止力になっているが、スキャンしなかった証拠を残すところまではできていない」(古川氏)
米国など海外の大手小売店でRFIDタグが普及していることを踏まえたシステムもある。レシートの情報とセルフレジでの会計後の買い物かごや買い物袋の中身を照合する際に、商品に貼付されたRFIDタグをリーダー機能付きの業務用端末で読み取る。かごや袋の周囲からスキャンするだけで読み取れるため、照合の作業が簡易になる。また、セルフレジでスキャンしていない商品が見つかった場合は、その場で業務用端末で決済することもできる。
RFIDタグは、会計だけでなく在庫管理、出荷や検品の業務などでも活用できる。日本のRFIDタグの活用は、製造から販売まで自社で手掛ける大手アパレルが主だが、米国では大手小売り事業者が仕入れ先にRFIDタグを貼付して納品するよう要求しており、スーパーの店頭ではさまざまな商品にRFIDタグがつけられている。用途が増え、業務コストの削減や損失の低減につながっていけば、RFIDタグの費用対効果も高まりそうだ。
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