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CO2の回収と再循環まで踏み込むデンソーのサステナ戦略、なぜ必要なのか製造業は環境にどこまで本気で取り組むべきか(4/4 ページ)

自動車部品メーカーとしてCO2回収や再循環などより本質的なカーボンニュートラルに向けて積極的な技術開発を進めているのがデンソーだ。デンソー 安全・品質・環境本部 安全衛生環境部 サステナブル環境戦略室 室長の小林俊介氏に、環境問題への取り組みとその考え方について話を聞いた。

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モビリティ製品としてのカーボンニュートラル

MONOist 残る3本柱であるモビリティ製品のカーボンニュートラルについてはどういう取り組みを進めているのですか。

小林氏 モビリティそのものの電動化や省エネ技術などを追及していくということがまずあります。加えて、スコープ3のカーボンニュートラルを考えると、サプライチェーンのCO2を削減することも重要なポイントだと考えています。デンソーとしてCO2削減目標を示し、それに向けてサプライヤーと一緒に削減できるように説明会を開催し、話し合いを進めています。具体的にサプライヤーの省エネ支援なども取り組み始めています。

 これらに加えて、CO2排出情報などをサプライヤーから収集する仕組み作りにも取り組んでいます。現在は定期的にサプライヤーからもらう形としていますが、将来的には自動でデータを共有するような仕組みを検討しています。データは、それぞれの製造ラインから実際に取得した1次データを収集したいと考えていますが、現状は全てを1次データで収集することは難しく、業界平均値などの2次データも含めて活用しています。2次データでは、削減努力が反映されないので、できる限り1次データを集め、それぞれの削減努力が反映される形で進めたいと考えています。

 デンソーとしては、自社のカーボンフットプリントなどは、CDPで1次データを開示していますので、顧客企業に対して情報を開示できる体制は既に整っています。これらのノウハウなどをサプライヤーにも示しつつ、サプライチェーンにおけるカーボンフットプリントのデータをより正確に集められるようにしていきます。

 環境情報の収集という点では、欧州ではデータ共有に関して、Catena-Xや欧州バッテリーパスポートなどの動きが出ていますが、日本自動車部品工業会で経済産業省が推進するウラノス・エコシステムを活用してこれらと連携していく動きが進んでいます。デンソー1社で何かをするというのではなく、業界一枚岩で対応していきます。

環境対策の理想は企業活動の全てがニュートラルになること

MONOist 冒頭でコストの問題なども指摘がありましたが、環境対策と事業活動がぶつかり合う場面もあると考えますが、どのように折り合いをつけて取り組みを進めているのでしょうか。

小林氏 1つは技術開発を行う際に、必要性や社会全体の価値はどうかということを考えるようにしています。将来的に欠かせないものになり、やらなければならないということがいえるかどうかがまず重要だと考えています。

 そして、もう1つがデンソー1社だけでなく、できる限り業界全体の課題として取り組めるようにしていくということです。日本自動車部品工業会など業界全体で課題に取り組み、みんなでやっていけるようにします。その理解を促したり、主導したりするこでコストの問題を解決できるようにすることが重要だと考えます。

 環境問題で難しいのは、コストも含めて活動の価値を測ることができる指標がないということです。こういう指標作りなども活動を広げるためには重要で、共有していく必要があると考えています。例を挙げるとすると、費用対効果において、カーボンプライシングを当てはめるとある程度の効果が算出できます。これに対し見える化や対策にかかる費用を当てはめれば、費用対効果を示すこともできます。議論を早めるにはこうした指標が共通理解として定着することが求められます。

MONOist 現在の取り組みの中で課題についてはどう考えていますか。

小林氏 繰り返しになりますが、再生可能エネルギーそのものの普及を拡大することが本当に重要だと考えています。奪い合いをしても意味がないと思いますので、無理をせずに再生可能エネルギーを取り入れていけるような環境を作ることが重要だと考えています。1社でできることではないので、業界や政府で話し合いを進めていくつもりです。

 もう1つは、スコープ3のカーボンニュートラルについては、まだまだ課題が多いと考えています。サプライチェーンや取引先など全てが関わることになるので、デンソーの都合だけで動かすことはできませんので、それぞれの立場や課題などを把握した上で、合理的に実現性のある取り組みを進めていくつもりです。そのために対話を進めていきたいと考えています。サプライチェーン全体をリードしていく立場にあると認識しているので、前もって動いて貢献していきたいと考えています。

MONOist 今後の抱負について教えてください。

小林氏 環境への取り組みはさまざまな課題が山積していますが、企業として目指す理想は、全てがニュートラルになることです。企業活動があっても環境への影響を抑え、元に戻せるというのが究極の姿だと考えており、そういう姿を目指していきます。ただ、それを真剣に目指しすぎると課題が多すぎて動けなくなってしまいます。優先順位を付けて成立性のあるものから順番に取り組んでいくということが重要になると考えています。

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