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ソニーが取り組むサステナビリティ、素材開発などテクノロジーで限界突破へ製造業は環境にどこまで本気で取り組むべきか(1/4 ページ)

ソニーグループでは2050年の環境負荷ゼロを目指しそこから逆算でさまざまな取り組みを進める「Road to Zero」を推進。今回は製造業として、テレビやカメラなどのエンタテインメント機器の開発や製造を行う「ソニー株式会社」の環境に対する取り組みを、サステナビリティ推進部門 部門長の鶴田健志氏に聞いた。

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 環境への取り組みがより強く製造業に求められ、多くの製造業が優先順位や技術的な課題などに向き合いながら進めている。その中で、周囲の機運に流されずに、長年環境への取り組みを一歩一歩進めてきたのが、ソニーグループだ。

 ソニーグループでは2050年の環境負荷ゼロを目指し、逆算でさまざまな取り組みを進める「Road to Zero」を推進。5年ごとの中期環境目標を掲げ、現在は2025年度(2026年3月期)を最終年度とする「Green Management 2025」を進めているところだ。今回は、ソニーグループの中で製造業としてテレビやカメラなどの製品開発や製造を行う「ソニー株式会社」の環境に対する取り組みについて、サステナビリティ推進部門 部門長の鶴田健志氏に話を聞いた。

連載「製造業は環境にどこまで本気で取り組むべきか」の企画趣旨

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環境問題に対する取り組みが、製造業としてのビジネス面で無視できないものとなってきています。しかし、これらは収益性や事業性とトレードオフの関係になる場合も多く、やみくもに進められるものではありません。そこで、MONOistでは、環境特集「カーボンニュートラルへの挑戦およびサステナブルなモノづくりの実現の中心企画として、製造業として環境への取り組みにどのように向き合い、どのような優先順位で進めているのかを各企業のキーマンに伺う本連載を企画しました。
⇒連載のバックナンバーはこちらから

バックキャストで5年ごとに中期計画を推進

MONOist 現在の製造業に対する環境問題についての外部の圧力や、捉え方の変化についてどのように感じていますか。

鶴田氏 もともと世の中で公害問題などがあったため、製造業として環境への取り組みはずっと以前から行っていました。それが、1990年代から公害問題から一歩踏み込んだ形で「環境経営」を進める機運が出てきました。製造業として生み出したものが、リサイクルなどを進めないと最終的にごみを増やし続けることになり、これらへの対応策をどう進めるのかという観点での取り組みが求められるようになりました。その中で、環境マネジメントシステムについての国際規格である「ISO 14001」なども登場しましたが、ソニーでは、現在のソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ 幸田サイト(愛知県幸田町)が国内製造業で初めてISO 14001を取得するなど、早くからこうした環境への要求に積極的に応えてきました。

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ソニー サステナビリティ推進部門 部門長の鶴田健志氏
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ソニーグループが2010年から推進する「Road to Zero」のWebサイト[クリックでWebサイトへ] 出所:ソニーグループ

 ただ、従来は「できることを積み上げていく」という形で環境への取り組みを進めていました。しかし、環境への影響度を考えるとそれだけではなく「環境負荷ゼロ」から逆算で取り組み、フォーキャストからバックキャストに変える動きが求められるようになってきました。そこで、ソニーグループでは2010年に、2050年までに自らの事業活動および製品のライフサイクルを通して、「環境負荷ゼロ」を目指す「Road to Zero」を策定しました。さらに、5年ごとに環境中期目標を掲げ、その達成を目指してさまざまな取り組みを行っています。現在は2025年度を最終年度とする「Green Management 2025」を進めているところです。

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2025年度を最終年度とする中期環境目標「Green Management 2025」の進捗状況[クリックで拡大] 出所:ソニーグループ

MONOist 従来の環境問題への取り組みと最近の動きで変化を感じますか。

鶴田氏 私は長い期間、環境分野を担当していますので、環境問題への取り組みはいくつかの波があったと感じています。例えば、京都議定書の頃は一般消費者からの関心も高まり、日本は大きく盛り上がりましたし、ブラジルのリオデジャネイロで開催されたリオサミットの頃も盛り上がりました。そうした動きに比べると今は大きな盛り上がりがあるとはそれほど思っていません。

 ただ、外部要因として企業への環境関連情報の開示規制は確実に厳しくなっているとは感じます。米国証券取引委員会によるスコープ1、2の連結での開示要求であったり、EUのCSRD(企業サステナビリティ報告指令)であったり、より幅広く深い情報まで開示していくことが求められています。従来は環境関連部門のメンバーが努力して情報収集しレポートを作ればよかった状況から、企業経営に非常に近いところで連携して開示していく必要があり、業務としての難易度は上がっていると感じています。

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