検索
連載

ソニーが取り組むサステナビリティ、素材開発などテクノロジーで限界突破へ製造業は環境にどこまで本気で取り組むべきか(3/4 ページ)

ソニーグループでは2050年の環境負荷ゼロを目指しそこから逆算でさまざまな取り組みを進める「Road to Zero」を推進。今回は製造業として、テレビやカメラなどのエンタテインメント機器の開発や製造を行う「ソニー株式会社」の環境に対する取り組みを、サステナビリティ推進部門 部門長の鶴田健志氏に聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

資源循環を行うための新たな技術開発を推進

MONOist 資源循環についてはどう考えていますか。

鶴田氏 ソニーグループでは「Road to Zero」で「新たな採掘資源の使用ゼロ」を目標として掲げており、資源循環にも積極的な取り組みを行っています。特に力を入れているのが再生材の導入で、製品でもよく使う再生プラスチックの導入に力を入れています。

photo
ソニーグループが独自開発した再生プラスチック材「SORPLAS」[クリックで拡大] 出所:ソニーグループ

 その1つが、モノづくりと品質の両面で基準を満たすために2014年に独自開発した再生プラスチック材「SORPLAS(ソープラス)」です。ソープラスは、市場から回収された使用済みの水ボトルや、工場や市場から排出された廃ディスク、独自開発した難燃剤などを原料に作られており、テレビやカメラ、スマートフォン端末など、幅広い製品で採用されています。

 ただ、製品への再生プラスチックの導入は単純に置き換えればよいというものではありません。例えば、オーディオ製品では、再生材とバージン材では、音が大きく変わるために、製品開発における音のチューニング技術なども合わせて開発しています。その他の製品でも、製品品質を満たすために、設計段階でのシミュレーション技術を開発するなど、再生材を取り入れるためのテクノロジーの開発も同時に進めています。

MONOist 資源循環と脱炭素がぶつかり合うようなことはありませんか。

鶴田氏 以前は脱炭素と資源循環の両立が難しいという指摘もありましたが、現在は再生材比率が高いほどライフサイクル全体でのCO2排出量が少ないことが計算で証明できるようになってきています。資源循環は、従来は石油資源を使わないことだけにフォーカスしていましたが、再生プラスチックの方が、石油からプラスチックを作るより、環境負荷が少ないことが分かり、脱炭素と資源循環の両面で効果があることが明らかとなりました。ソープラスは再生材比率が高く、CO2排出量も少ないため、その点で新たな製品の価値を生み出すことができ、コミュニケーションなどにつなげていけると考えています。

資源循環をより行いやすくし、環境負荷を下げる取り組みを

MONOist 資源循環をしっかり行っていくためには、製品設計においても「リサイクルしやすさ」に配慮した設計が必要になります。

鶴田氏 その点については、日本の家電リサイクル法が、メーカーにリサイクルの義務を与えていることで、良い効果が生まれていると感じています。メーカーリサイクルを行うためには簡単に分解できるようにすることが必要で、製品アセスメントの項目として「リサイクル容易性」があります。例えば、「ビスが同じ方向に向いている」や「1種類のドライバーで全てのネジが外せる」「接着していない」などのポイントがあり、ソニー製品もその点を意識した設計となっています。

 ソニーグループでは名古屋市で家電リサイクル工場(グリーンサイクル)を運営していますが、テレビの設計者などはこのリサイクル工場に実際に行き、自分が設計した製品の解体を行ったり、解体現場での困りごとなどの意見を聞いたりして、フィードバックをもらう活動を何年もやっています。そのため、特にテレビなどについては、マテリアルリサイクルを行うための解体容易性は確保できていると考えます。

 今後の課題は、資源循環の考えをさらに進め、部品の再利用や、それを行うためのモジュール設計を推進することだと考えています。部品単位でのリユースを意識した設計は、今までは考えてこなかったので、今後はそういうやり方や方法論を確立していく必要があると考えています。また、テレビ以外の製品についても、制度や体制なども含めて検討していきます。

 一方で、ソニーでは製品以外の資源循環にも積極的に取り組んでいます。プラスチック削減に向けて包装材の脱プラスチックを進めており、その取り組みの1つとしてソニーが開発した環境に配慮した紙素材「オリジナルブレンドマテリアル」です。これは竹、さとうきびの搾りかす、リサイクルペーパーをブレンドして作っている素材で、原材料の産地もソニーグループで確認して作っているオリジナル素材となります。ユニークなのが、3種類の素材の配合を変えることで、材料としての特性を変えられる点で、ヘッドフォンの包装材なども含め、幅広い用途での採用が進んでいます。1kg以下の小型製品の包装については、基本的にはこのオリジナルブレンドマテリアルなどを採用しながら、包装材の100%脱プラスチック化を進めていましたが、2023年度で新規設計品については前倒しで達成できました。

photo
再生材や生分解素材を活用した包装材の置き換えが進む[クリックで拡大] 出所:ソニーグループ

 加えて、一部の大型テレビに採用している発泡スチロール製の緩衝材を撤廃し、カネカの生分解性バイオポリマー「Green Planet」を採用する取り組みなども行っています。テレビについては、全ての包装材を脱プラスチックにすることは難しいのですが、そこでも協業などを通じて、環境負荷の低い素材に置き換える取り組みを進めています。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る