検索
連載

CO2の回収と再循環まで踏み込むデンソーのサステナ戦略、なぜ必要なのか製造業は環境にどこまで本気で取り組むべきか(3/4 ページ)

自動車部品メーカーとしてCO2回収や再循環などより本質的なカーボンニュートラルに向けて積極的な技術開発を進めているのがデンソーだ。デンソー 安全・品質・環境本部 安全衛生環境部 サステナブル環境戦略室 室長の小林俊介氏に、環境問題への取り組みとその考え方について話を聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

新領域となるエネルギー循環やCO2回収への取り組み

MONOist 今話のあった3本柱の1つである新たなエネルギー循環の仕組みとしてはどのようなことに取り組んでいるのですか。

小林氏 エネルギーを「つくる」「はこぶ」「ためる」のそれぞれでデンソーの技術が生かせる部分が多いと考えています。「つくる」については、代表的な取り組みとして燃料電池システムがあります。具体的にはSOFC(固体酸化物燃料電池)により、水素から電力を取り出すことができる仕組みです。「ためる」については、SOEC(固体酸化物形水電解用セル)の開発を進めています。電力と水で水素を作り出し、エネルギーを貯蔵できるようにします。これらを組み合わせることで、余剰再生可能エネルギーにより水素を作り、それを発電に使用してクリーンな電力を得るようなサイクルを作ることができます。

 「ためる」については、V2Xの研究開発にも取り組んでおり、再生可能エネルギーで発電した電力を、定置型蓄電池だけでなく、EVのバッテリーにためるシステム開発などに取り組み、実証などを進めています。

 CO2回収などの技術開発も進めています。回収したCO2と水素からメタンを合成するメタネーションなどの検証を進めており、CO2をエネルギーに戻すことを目指しています。これらの技術を組み合わせ、CO2を回収して再資源化する「CO2循環プラント」の実証なども安城製作所(愛知県安城市)で行っています。

photo
デンソー 安城製作所に設置されたCO2循環プラント

 さらに、水素をいかに効率的に活用するかを検証するために、トヨタ自動車と共同で、デンソー福島(福島県田村市)でグリーン水素の製造と工場での水素活用の実証を行っています。需要地に近いところでいかにエネルギーの循環を行うかという観点で各地でさまざまな実証を行い、仕組み作りを進めているところです。

photo
デンソー福島の水電解装置実証施設 出所:デンソー

 これら以外にも、自社開発ではありませんが、京セラと共同で軽い太陽光発電システムの共同開発を進めています。2024年10月〜2025年9月まで、西尾製作所(愛知県西尾市)にて軽量太陽光発電システムの実証実験を行っています。再生可能エネルギー由来の電力が不足する可能性がある中で発電能力を高めようとすると、屋根上(オンサイト)での発電能力を高める必要がありますが、重い太陽光発電システムでは屋根の強度の問題で設置できません。そのために軽量の太陽光発電システムが有効だと考え、共同開発を進めています。

 われわれがこうしたエネルギーそのものに積極的にアプローチしているのは、モノづくり企業としての責任を果たすという部分で、カーボンニュートラルに関するシナリオを描くと、どうしてもクリーンなエネルギーが足りなくなるというのがボトルネックになると考えるからです。目標年度までまだ時間がある中で、エネルギーの「つくる」「はこぶ」「ためる」という根幹の部分にコミットしていくべきだと考えています。

 デンソーでは、従来も自動車において環境性能に関わるシステム開発を行ってきました。エンジンの燃焼効率を引き上げるシステム開発や電動化などもそうですが、その延長線上として環境を維持していくソリューションが重要になると捉えています。また、われわれが困るということは、他社も困っているということで、共通課題になり得る部分だと見ています。そのため、社会に貢献できるところに一歩先に取り組むという点でも意義があると考えています。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る