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CO2の回収と再循環まで踏み込むデンソーのサステナ戦略、なぜ必要なのか製造業は環境にどこまで本気で取り組むべきか(2/4 ページ)

自動車部品メーカーとしてCO2回収や再循環などより本質的なカーボンニュートラルに向けて積極的な技術開発を進めているのがデンソーだ。デンソー 安全・品質・環境本部 安全衛生環境部 サステナブル環境戦略室 室長の小林俊介氏に、環境問題への取り組みとその考え方について話を聞いた。

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デンソーが取り組む「エコビジョン2025」

MONOist そういう変化がある中で、環境への対応としてデンソーはどのような取り組みを進めていますか。

小林氏 デンソーでは環境経営に向けた長期的なコミットメントや方針を示す「デンソーエコビジョン」を10年ごとに策定しており、さらにこれらの行動を具体化するために「環境行動計画」を5年ごとに策定しています。2025年度を目標年度とした「エコビジョン2025」については「エネルギー2分の1」「クリーン2倍」「グリーン2倍」の3つの目標を掲げています。

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デンソーのエコビジョン2025における10のアクションを示した「アクション10」[クリックで拡大] 出所:デンソー

 カーボンニュートラルについては、デンソーとして3つの切り口で考えています。1つ目は、製造業としてモノづくりのカーボンニュートラルを実現していくということです。2つ目が、主力分野であるモビリティ製品でカーボンニュートラルに貢献していくということです。3つ目が、これらのモノづくりやモビリティ製品両方に影響する領域で、エネルギーそのものをクリーンな形にするためのさまざまな技術開発です。これらを3本柱として取り組んでいます。

モノづくりのカーボンニュートラル

MONOist 3本柱の内、モノづくりのカーボンニュートラル化の進捗についてはどう見ていますか。

小林氏 工場のカーボンニュートラルについては2025年度に証書やクレジットを活用した実質ゼロの達成を目指しています。さらに、2035年にはクレジットなどなしでゼロにする目標を掲げています。この目標に向けて年次での目標を明確化して取り組んでいますが、2025年度の目標についてはほぼ達成が見えてきました。ただ、2035年目標については、技術的なブレークスルーも必要となりますので、それらの開発について今力を入れているところです。自社だけでは難しい面もあるため、社外との連携なども積極的に進めています。

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カーボンニュートラル工場へのロードマップ[クリックで拡大] 出所:デンソー

MONOist 「GHG(温室効果ガス)プロトコル」のスコープ1(直接排出)のカーボンニュートラル達成がかなり難しいという話も聞くことがありますが、デンソーではどう考えていますか。

小林氏 スコープ1のカーボンニュートラルを進める手段としては2つあると考えています。1つは現在使用しているガスなどを、カーボンニュートラルのガスなどに転換していくということです。日本で進められているものとしては、アンモニアや水素ガスなどになります。これらの活用方法についてまだまだ詰まっていない部分も多く議論の余地があるのが現実ですが、デンソーでは重要な要素だと捉えています。覚悟を持ってそこに取り組んでいくつもりです。

 もう1つが、どうしても温室効果ガス排出が避けられない場合は、それを回収して巡回する仕組みを作ることです。排出分を回収することができれば、本質的に温室効果ガスの排出をなくすことができます。この領域も必要になると考えて、現在さまざまな研究開発を進めているところです。

 スコープ1の温室効果ガス排出量削減の話になると、電化(電動設備に切り替え)をしてスコープ2に切り替えた上で、再生可能エネルギーの採用を広げるという考え方もよく聞きますが、デンソーとしてはそこには疑問を持っています。これらのエネルギーを全て電力に切り替え、さらにそれを再生可能エネルギーで賄うことを考えると、再生可能エネルギーの供給量が足りなくなると考えているからです。再生可能エネルギーを企業間で取り合うような状態も生まれるかもしれません。そう考えると電化は目の前の対策としてはよいですが、将来を考えると「寄り道投資」になる可能性があると見ています。1回投資をしても戻さないといけなくなるかもしれません。

 そのため、デンソーでは、3本柱として、エネルギー循環についての技術開発やCO2回収技術の開発にも取り組んでいるのです。もちろん、周辺の条件次第でどう転がるかは分かりませんが、現在のところはデンソーではそう見ています。

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