中国のEVメーカーは、車両開発の既存の手法を刷新し、新製品の投入にかかる期間はこれまでの半分となる20カ月に短縮しているという。中国以外のブランドと比較しても、市場投入は2〜3年早い。また、無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)の頻度は伝統的な自動車メーカーの20倍で、販売後の品質向上にもOTAを活用している。
中国ブランドのコスト面の優位性は垂直統合にある。例えばBYDは売上総利益率が23%で高い収益性を確保しているが、外部調達する部品は低価値部品のみで、75%の部品を自社製造することでコストを抑える。海外調達比率は8%にとどまる。コスト競争力によって、中国国外での関税措置を相殺することも可能になる。
ただ、コスト競争力は低賃金や長時間の残業にも支えられている。中国の自動車メーカーはBYDなど比較的歴史の長い企業でも日米欧の自動車メーカーより残業時間が多い。月に40時間以上、新興自動車メーカーであれば70時間以上の残業時間となっている。
中国自動車メーカーは、D2C(Direct-to-Consumer)の採用により、透明性と一貫性のある顧客体験を提供しているという。マーケティングと販売に複数のチャネルがあり、消費者エンゲージメントが高まっている。
SDVの4つのステージ
自動車産業をグローバル全体でみても、開発プロセスや販売手法の革新、リテールテックの積極的な導入などにより、コスト削減や市場投入までのスピードアップが図られると見込む。
SDV(ソフトウェアデファインドビークル)に関しては、4つのステージで発展し、高度化するにつれて自動車メーカーの収益化の機会が拡大するとしている。1つ目のステージは、無線でリアルタイムな情報を受信できるコネクテッドカーで、OTAには対応していない。外部接続は制限された状態で、ECUのデータ転送用の帯域幅も限られている。
2つ目のステージは、高度なADAS(先進運転支援システム)やデジタルコックピットを備えた状態だ。大容量で詳細なデータ転送機能を備えたドメインコントローラーが搭載されるようになり、積極的にソフトウェアをアップデートできる。3つ目のステージは、パーソナライズされた機能を持ち、常にダイナミックな進化が可能な状態だ。自動運転システムがソフトウェアスイートに含まれており、消費者は好きなときに好みの機能を追加できるとしている。セントラルコンピューティングアーキテクチャを採用し、クラウドや他の技術のインタフェースとの統合にも対応する。
4つ目のステージでは、完全自動運転やAI(人工知能)、オンデマンドサービスなどを備えており、サブスクリプションにも所有にも対応するため、リアルタイムデータコンピューティングに対応する。セントラルコンピューティングアーキテクチャ、センサーフュージョン、高性能な車載コンピュータによって意思決定にかかる時間を短縮したり、車両の運行にかかわるリアルタイムな判断を行ったりする。
自動車メーカーとサプライヤーの収益
グローバルでは、自動車メーカーは価格改定によって部品メーカーを上回る収益の伸びを示している。サプライヤーの営業利益率は平均10.6%で、自動車メーカーよりも2ポイント少ないという。なお、中国ではサプライヤーの利益率が10.4%で、自動車メーカーを3.3ポイント上回っている。
コロナ禍でのサプライチェーンの混乱を受けて、サプライヤーが在庫を増やす傾向にあり、コロナ禍前と比較するとサプライヤーでの在庫は250億ドル増加した。また、キャッシュコンバージョンサイクルを伸ばし、キャッシュを手元に残すサプライヤーが増えているという。
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