2030年の国内ELV由来プラスチック回収量は2023年比で大幅拡大:リサイクルニュース
矢野経済研究所は、自動車プラスチックリサイクル市場に関する2024年の調査結果を発表した。国内のELV由来プラスチック回収量は2023年で900t、2030年には中間ケースで4万tに増加すると予測する。
矢野経済研究所は2024年6月27日、自動車プラスチックリサイクル市場に関する2024年の調査結果を発表した。国内のELV(使用済自動車)由来プラスチック回収量は2023年で900t、2030年には中間ケースで4万tに増加すると予測する。
2023年の国内のELV由来プラスチック回収量は900tと見込む。現在、自動車に採用されているELV由来のリサイクルプラスチック材料は、解体工程で回収された内装材由来の材料が中心だ。
自動車メーカーにとってリサイクルプラスチック材料をいかに確保していくかは重要な課題であるため、これまで採用されてこなかった外装材由来のリサイクルプラスチック材料も一部用途ではあるが採用が始まっている。さらには、破砕工程やASR(Automobile Shredder Residue、自動車シュレッダーダスト)由来のリサイクルプラスチック材料の採用も検討されている。
これら採用拡大の程度によって、2030年までの国内におけるELV由来のプラスチック回収量を3ケース予測する。どのケースでも2026年の資源回収インセンティブ制度の導入により、プラスチック回収量は増加する。最小ケースは、解体工程での回収が中心で破砕工程やASRからの回収は進まない想定で、2030年のELV由来のプラスチック回収量は1万5000tになると予測する。
中間ケースは、解体工程に加えて破砕工程で回収したプラスチックの採用拡大が進むことを織り込み、2030年のELV由来のプラスチック回収量は4万tになると予測する。最大ケースは、自動車メーカーのリサイクルプラスチック材料の採用が加速し、破砕工程での硬質プラスチック回収やASRから回収したリサイクルプラスチック材料の需要増大を想定し、2030年のELV由来のプラスチック回収量は7万tになると予測する。
これまで国内のELV由来プラスチックリサイクルに関しては、コストや品質、安全性、安定調達が課題であった。ELVからプラスチック部品を取り外す際、精緻に解体するほどリサイクルプラスチック生産時の品質は向上されるが、解体事業者にとっての作業負担や人件費コストが増大する。
国内では2026年4月から資源回収インセンティブ制度が導入される。現行の自動車リサイクル法では、ASRから解体事業者がプラスチックなどを資源として回収した場合、ASR引取重量が回収した重量分減量し、その分再資源化費用が減額となる。同制度は、自動車所有者が預託するリサイクル料金を原資として、ASRの減量分に当たるリサイクル料金額を資源回収のための経済的インセンティブとして与えるもので、これによりコストや安定調達など解体事業者が抱える問題が改善すると期待されている。
カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの取り組みが先行する欧州では、2023年7月に欧州ELV指令の改正案(ELV規則案)が発表された。同規則を順守しない自動車メーカーは型式認証が得られず、欧州で自動車を販売できなくなる。さらには、同規則が施行された72カ月後から、欧州で販売される自動車にはPCR(ポストコンシューマーリサイクル材)由来のリサイクルプラスチック材料を25%、うちELV由来のリサイクルプラスチック材料を25%使用することが義務化される。
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