日産が新車生産で発生したアルミ端材をリサイクル、新車向けの部材で再出荷へ:材料技術
日産自動車は2021年1月22日、グローバルモデルでアルミニウム製部品のクローズドループリサイクルプロセスを初めて適用すると発表した。同プロセスは、生産時に発生した廃棄物やスクラップ、回収した自社の使用済み製品を、品質を維持した材料として再生し、自社製品の部品に採用する手法だ。
日産自動車は2021年1月22日、グローバルモデルでアルミニウム製部品のクローズドループリサイクルプロセスを初めて適用すると発表した。同プロセスは、生産時に発生した廃棄物やスクラップ、回収した自社の使用済み製品を、品質を維持した材料として再生し、自社製品の部品に採用する手法だ。対象車種は「ローグ」の新モデルで、アルミニウムの端材スクラップを自動車用アルミ板にリサイクルする。ローグを生産する日産自動車九州では神戸製鋼所やUACJと、北米日産のスマーナ工場ではArconicやNovelisと協業して取り組む。
新型ローグでは車両の軽量化のためフードやドアなどのパネル部品にアルミニウム板を採用している。クローズドループリサイクルにより、原材料から同程度のアルミニウムを作るのに必要なエネルギーの90%以上削減し、CO2排出量も大幅に低減できる。また、新規採掘資源に頼らない材料への代替や、工場で発生する廃棄物の抑制にもつながる。
クローズドループリサイクルのカギを握るのは、大型のエア搬送システムだ。ボンネットやドアを型抜きした後のスクラップがエア搬送システムによって裁断され、材種ごとに区別された状態で回収する。分離回収プロセスにより、不純物の混入を抑えた高品質のスクラップをサプライヤーに還元。サプライヤーで再処理したアルミスクラップは従来の材料と同等の品質を持つアルミ板に加工され、新型ローグのパネル部品など向けに再出荷される。
日産では「グリーンプログラム2022」において、2022年に生産するクルマに使用する原料のうち、30%を新規採掘資源に頼らない材料にすることを目指している。達成に向けて、リサイクル材の使用やバイオ材の開発、サプライヤーも含めたリサイクル活動、車体軽量化に取り組む。
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