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資源循環で経済価値を生み出す、ホンダが描く持続可能な材料戦略材料技術(1/3 ページ)

ホンダは「自由な移動の喜び」を永続的に提供し続けるために環境負荷ゼロの実現を目指し、リソースサーキュレーションに取り組んでいる。

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 ホンダは「自由な移動の喜び」を永続的に提供し続けるために環境負荷ゼロの実現を目指し、リソースサーキュレーションに取り組んでいる。天然資源の採掘や利用を減らすだけでなく、資源の再利用によって経済合理性を生み出すことが重要だとし、社会的価値と経済的価値の両立を目指す。

 ホンダ コーポレート戦略本部 コーポレート事業開発統括部 リソースサーキュレーション企画部 部長の多賀渉氏が、「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」(2024年5月22〜24日、パシフィコ横浜)において、ホンダの取り組みを語った。

自動車のスクラップはどこへ

 ホンダは環境負荷ゼロに加えて、交通事故死者ゼロも目指す。パワーユニットのカーボンニュートラル化やエネルギーマネジメント、自動運転/ADAS(先進運転支援システム)、IoT(モノのインターネット)/コネクテッドと並んで、リソースサーキュレーションは注力するキーファクターの1つとなっている。

 環境への取り組みのコンセプトは「Triple Action to ZERO」というテーマの通り、CO2排出を実質ゼロにすること、カーボンフリーエネルギーの活用率を100%とすること、サステナブルマテリアル使用率を100%にすることの3つだ。

 ホンダは2040年にEV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)を合わせた販売比率をグローバルで100%とする目標を掲げているが、電動化が進むことで、使用する資源は大きく変化している。

 年間200万台を生産する場合で比較すると、ホンダの試算ではレアメタルが400倍、銅は4倍、レアアースは6倍に使用量が増える。エンジンでは鉄やアルミニウムがメインだったが、モーターなど電装部品で銅やレアアースの使用量が増加。走行に使用するエネルギーは、エンジン車では化石燃料だったが、EVのバッテリーでもレアメタルが多用される。

 現状ではホンダ車の場合、自動車の生産に使用する素材は90%のバージン材と、10%のリサイクル材やバイオマス材で構成されている。バージン材の採掘や製錬ではCO2が発生しており、このまま電動化を進めれば環境負荷の増大が懸念される。

 使用済み車両の処理後をみると、素材の7割が他産業での再利用されている。ただ、リサイクルできずに焼却や埋め立てなどで廃棄されるのが3割を占める。他産業で再利用されているのは、自動車での再利用では経済合理性が成立しないためだ。また、自動車に使用されるプラスチックはほぼ全量がシュレッダーで破砕の上、廃棄される。

バージン材を減らす、廃棄物も減らす

 ホンダが目指すリソースサーキュレーションは、バージン材の使用の最小化と、廃棄物の削減の2本柱だ。現状で9割を占めるバージン材の使用と、リサイクルされない3割の素材を減らしていく。

 自動車由来の素材を他産業でリサイクルしてもらっている状況を踏まえ、自動車メーカーとしてリサイクル材を活用していくことに取り組む。ただ、現状では自動車で再利用できるリサイクル材が市中に存在しない。使用済み車両から発生した資源の循環を自動車産業につなげていくには、リサイクル材を生み出すスクラップの扱いにも踏み込む必要がある。

 資源循環をにらんだ動きは海外でも活発で、欧州では関連する法規が整備されている。バッテリーの資源循環を推進する欧州バッテリー規制、自動車で使われたプラスチックの水平リサイクルを対象とする欧州ELV規制、バッテリーやモーター、磁石などの重要資源を欧州域内で循環させるCRMAなどがその例だ。

 リニアエコノミー(直線型経済。大量に生産、消費、廃棄すること)のまま2040年の目標である電動化100%を達成しようとすると、走行中のCO2排出は減らせるものの、モノづくり由来のCO2排出が増えていく。材料や資源も含めると製造時のCO2排出は現状の2倍まで増える見通しだ。工場の電源に再生可能エネルギーを導入するだけでなく、リソースサーキュレーションもCO2排出削減の手段として有効活用していかなければならないと位置付けている。

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