検索
連載

目標の部品コストを目指して設計していますか?ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル(10)(2/2 ページ)

連載「ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル」では、「オリジナルの製品を作りたい」「斬新なアイデアを形にしたい」と考え、製品化を目指す際に、絶対に押さえておかなければならないポイントを解説する。連載第10回は、目標となる合計の部品コストを上回らないように設計を進める方法を伝授する。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

部品表で個々の部品コストと合計の部品コストを管理する

 図3にように、部品表に個々の部品コストと合計の部品コストを記載する。

個々の部品コストと合計の部品コストを部品表で管理する
図3 個々の部品コストと合計の部品コストを部品表で管理する[クリックで拡大] ※画像提供:筆者

 部品表の作成で注意すべき点が2つある。一つは、製品を構成する部品は製品本体以外にもあることだ。梱包(こんぽう)材や取扱説明書、乾電池などの付属品/消耗品である。生産台数の少ない製品の場合、特に印刷物のコストが高額になることがあるため、部品表に入れるのを忘れてはならない。

 もう一つは、予備費の項目を作っておくことだ。一般的に、設計が進み生産開始が近づいてくると、合計の部品コストはアップしている。その理由は、量産部品や金型が出来上がるとコストダウンのための変更がしづらくなったり、想定外の問題が発生して対策部品が必要になったりするからだ。そのため、筆者は合計の部品コストの約10%を予備費としている。

コスト管理/維持のためのコストダウン

 コスト管理とは、製品企画の製品コストから算出された目標の合計部品コストを、イベントごとに見積もった合計部品コストが上回らないように管理/維持することである。上回ったときは、コストダウンする。その際、大切なのは合計の部品コストで考えることだ。例えば、1つの部品が目標の部品コストを上回ったとしても、他の部品コストが下回るなどして、きちんと目標の合計部品コスト内に収まっていれば問題ない。

 以下に、一般的なコストダウンの3つの例を紹介する。

  1. 設計でコストダウン
  2. 梱包材でコストダウン
  3. 見積明細書でコストダウン

1.設計でコストダウン(かっこ内はデメリット)

  • 安価な材料に変更する(再試験が必要になる)
  • 塗装ありを塗装なしにする(体裁が悪くなる)
  • 印刷を刻印にする(文字が見えにくくなる)
  • 金型なしで生産する予定の部品の金型を作製する(金型費の投資が必要になる)
  • 2部品を1部品にする(製造性が悪くなる)

 ここでは、コストダウン額とデメリットを比較して判断してほしい。

2.梱包でコストダウン

  • カートンの外形寸法をコンテナに効率良く入る大きさにする⇒製品の輸送費削減
  • カートンの印刷をラベル化、もしくは製造ラインで印刷する⇒印刷ロボットを使用

 前者の場合、カートンを小さくすると緩衝性が低下するため、製品本体の設計者との連携が不可欠だ。一方、後者のケースでは製造技術者との連携が必要になる。

3.見積明細書でコストダウン

 見積明細書とは、材料費、加工費、不良費、輸送費などの内訳が記載されたものである。前提として、見積もり時にはこれを入手しておかなければならない。

  • 加工時間の見直し
  • まとめ発注

 前者は、部品メーカーの生産体制が整った時点で加工時間を部品メーカーで確認し、実際の値に修正する。ただし、かえってコストアップになる場合もあるので要注意だ。後者は、毎月購入している部品を、2カ月分以上まとめて購入することだ。在庫スペースが必要になるので、大物部品の場合は倉庫スペースの確認が欠かせない。また、経時変化する化学物質を使った部品、例えば、接着剤が塗布された両面テープやインキの付いた印刷物などは、在庫管理が難しいので注意が必要である。 (次回へ続く

⇒ 連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール

小田淳

オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)

上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。

ロジカル・エンジニアリング Webサイトhttps://roji.global/

著書

製品化 5つの壁の越え方: 自社オリジナル製品を作るための教科書中国工場トラブル回避術 原因の9割は日本人

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る