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目標の部品コストを目指して設計していますか?ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル(10)(1/2 ページ)

連載「ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル」では、「オリジナルの製品を作りたい」「斬新なアイデアを形にしたい」と考え、製品化を目指す際に、絶対に押さえておかなければならないポイントを解説する。連載第10回は、目標となる合計の部品コストを上回らないように設計を進める方法を伝授する。

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 製品のコストは、設計次第で決まる。100円のボールペンもあれば、3000円のボールペンもあるのだ。その違いはターゲットユーザーだ。

 この場合、前者は市役所などに置かれているボールペンで、ターゲットユーザーは市役所の備品の購買担当だ。後者は贈答用のボールペンで、ターゲットユーザーは贈答品を購入する人(プレゼントを贈る人)である。つまり、製品のコストは、ターゲットユーザーで決まるのだ。よって、製品企画の段階でターゲットユーザーを決めていなければ、製品化の設計を進めることはできない。

 ターゲットユーザーが決まれば、そのユーザーが購入できる価格や競合製品の価格から製品コストが決まる。一般的には、製品コストの30〜35%が部品コストなので、製品コストから目標とする合計の部品コストは算出できる。

 以降で、目標となる合計の部品コストを上回らないように設計を進める方法を説明する。

製品化プロセスの各イベントで部品コストを管理する

 図1は、標準的な製品化プロセスである。コスト管理は少なくとも3回行う。

製品化プロセスの3つのイベントでコストを管理する
図1 製品化プロセスの3つのイベントでコストを管理する[クリックで拡大]

 1回目のタイミングは設計構想の段階だ。設計構想とは、製品企画で決まった製品仕様、日程、コストをより詳細にするものだ。このときには3Dデータも2D図面もないが、部品のイラスト(図2)から部品コストを見積もれる。

設計構想でイラストを描き、部品コストを見積もる
図2 設計構想でイラストを描き、部品コストを見積もる[クリックで拡大] ※画像提供:筆者

 基本的にイラストは、その後に行う3D CADでの設計を円滑に進めるために描くものだが、設計構想段階での見積もりにも活用できる。なぜなら、イラストだけでも大まかな部品サイズや厚み、材料を決めることが可能だからだ。これだけ分かれば、おおよその部品コストと金型費を見積もれるはずである。

 イラストができたら、自分で部品コストを推測したり、設計仲間に相談したりして見積もる。過去の類似部品のコストを参考にするとより良い。また、なじみの部品メーカーに相談してもよいだろう。部品コストは生産数によって変わるため、参考にした部品よりも生産数が少なければ部品コストを1.2倍したり、逆に生産数が多ければ0.8倍したりして調整する。

 もし、この見積もりで目標とする合計部品コストを上回っていたら部品仕様や部品構成の見直しが必要になる。もしくは製品企画の見直しだ。

 2回目のタイミングは最初の試作設計の段階だ。このときには、試作のための3Dデータや2D図面ができているので、それらを基に部品メーカーから見積もりを取る。その際、2〜3社の部品メーカーに相見積もりをして、その結果で量産の部品メーカーを選定する。複数のメーカーで見積もりを取れば、部品コストの精査もできる。

 この2回目の見積もり段階では、材質や塗装、印刷などの詳細の部品仕様が決まっていない場合が多いが、見積もり時には仮でもよいので2D図面にこれらを描いておくべきだ。その理由は、製品の最終価格が見積もれないからである。例えば、塗装を後から追加すると、200円の部品コストが400円になる場合もあるのだ。

 3回目は、量産部品メーカーの選定後のタイミングだ。ここで最終コストを見積もるが、2回目の部品仕様から特に変更がなければこの見積もりは不要だ。しかし、部品仕様に大きな変更があれば、必ず再見積もりしなければならない。

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