リブ部分のみを発泡させ樹脂部品の軽量化と強度向上を実現する新たな発泡成形技術:材料技術
マクセルは、マクセルの発泡成形技術「RIC−FOAM(Resilient & Innovative Cellular Foam)」を応用し、補強構造体であるリブのみを部分的に発泡させることで、軽量化と曲げ荷重による変形抑制およびきれいな外観を実現する新たな発泡成形技術を開発したと発表した。
マクセルは2024年4月16日、マクセルの発泡成形技術「RIC−FOAM(Resilient & Innovative Cellular Foam)」を応用し、補強構造体であるリブのみを部分的に発泡させることで、軽量化と曲げ荷重による変形抑制およびきれいな外観を実現する新たな発泡成形技術を開発したと発表した。
現在、マクセルのグループ会社であるMDCNおよび協力メーカーで、電気自動車(EV)が多く生産される中国向け製品を中心に、同発泡成形技術を実用化する準備を進めている。
従来の発泡成形機をそのまま使用可能
樹脂使用量の削減と軽量化はカーボンニュートラル達成のためにEVなどのモビリティ分野を中心に世界的なトレンドとなっている。樹脂使用量の削減と軽量化を達成する方法の1つとして、樹脂を発泡させる発泡成形技術がある。
発泡成形技術については、近年リサイクルや環境負荷の観点から、窒素やCO2を用いた物理発泡成形技術の実用化が進んでいる。マクセルでは2017年に京都大学と共同で開発した低圧の物理発泡成形技術であるRIC−FOAMを応用した装置を射出成形装置メーカーから現在販売している。その装置を用いて、軽量化や高精度化などを目的に自動車、家電、スポーツなどの分野で使われる部品が製品化されている。
一方、RIC-FOAMを含めた発泡成形技術では、樹脂の強度が低下する点、発泡剤起因のガスにより外観が悪化する点が以前より課題として挙げられていた。そこで樹脂成形品の強度を高めるために、基材を厚くする方法やリブという補強構造体が広く採用されている。
マクセルでは、これらの課題を解決する方法として、リブのみを発泡させる部分発泡成形技術を開発した。同技術では基材は発泡させず、リブのみを発泡させることで、強度ときれいな外観を両立する。
今回開発した技術を用いることで、従来の発泡成形機をそのまま使用し、射出成形時に金型内でリブのみ部分発泡させることが可能だ。部分発泡の技術は、マクセルがコアコンピタンスとするアナログコア技術「混合分散」「精密塗布」「高精度成形」のうち、「高精度成形」技術である金型/成形技術を進化させることにより実現した。今後、同技術をブラッシュアップすることで、軽さ、外観、強度を実現した新しい構造設計およびそれに基づいた樹脂部品の創出に貢献していく。
なお、リブを設けた成形品の曲げ剛性は、リブの高さに応じて高くなる。そのため、高いリブを形成することで軽くて強い部品を作ることができる。しかし、発泡させていない樹脂の成形では、リブを高くするとリブ根本の樹脂圧力が不足することで樹脂の収縮に伴うへこみ(ヒケ)が生じる。また、従来の発泡成形では発泡によりヒケを解消できるが、基材も発泡するため強度や外観を維持することが困難だった。
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