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バイオプラスチックの現状と問題点、注目される生分解性ポリアミド引き伸ばすほど強度が増す新たなバイオプラ(2)(1/2 ページ)

本連載ではバイオマス由来の2種のプラスチックを組み合わせ開発した、引き伸ばすほど強度が増す透明なフィルム素材を紹介します。今回は、バイオプラスチックの種類や特徴について説明します。

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 前回は、バイオプラスチックとは何か、またそれらに寄せられている期待について解説しました。今回は、具体的にはどのようなバイオプラスチックがあるのかを見ていきます。

代表的バイオプラスチックの分類とそれらの例。黒文字はポリオレフィン、赤文字はポリエステル、青文字はポリアミドを表す
代表的バイオプラスチックの分類とそれらの例。黒文字はポリオレフィン、赤文字はポリエステル、青文字はポリアミドを表す[クリックで拡大]

 バイオマスを原料とするバイオプラスチックは、既存のプラスチックを、再生可能資源である生物生産物から合成したものが主流です。その代表的なものが、ポリエチレン(PE)です。ポリエチレンの原料となるエチレンを、バイオエタノールから作ることによって、化石資源を使うことなくプラスチックの生産が可能となっています。この生物由来のものは特にバイオPEと呼ばれます。

 ポリエチレンテレフタレート(PET)は、同じくバイオエタノールを原料として骨格の一部を合成することで、市販品として部分的なバイオプラスチック化がなされており、さらに試作段階ではありますが、100%バイオのPET製造も既に報告され、現在その製品化が内外で取り組まれています。これらは原料の由来にかかわらず、製品としては同じ性能をもつため、プラスチック原料のバイオマスへの転換は、理論的には容易です。

 しかし、バイオマスは、化石資源由来品よりもコストがかかる傾向にあり、性能上全く同じものであるだけに付加価値をつけにくいことが普及への課題の1つと考えられています。加えて、バイオエタノールの製造は、一般的には可食物を原料にするため、食料問題との競合といった懸念もあります。現在のPEにおけるバイオプラスチックへの転換率は10%程度であり、今後の生産能力の向上による普及拡大が期待されます。

 生分解性をもつバイオプラスチックもあります。その代表といえるものが、ポリ乳酸(PLA)です。PLAは、乳酸菌が代謝することで生産される乳酸が重合した高分子です。既にストローやカトラリー、トレーや農業用フィルムなどさまざまな目的で利用されています。その生産量は、世界で年間およそ30万トン(t)程度であり、バイオプラスチックの主力製品の1つです。

 乳酸は、ヒドロキシ基(-OH)とカルボキシ基(-COOH)を持つ、ヒドロキシアルキルカルボン酸(HA)の1つですが、このHAのポリマーであるPHAはPLA以外にも生分解性を示すものがいくつかあります。例えば、カネカが初めて工業化したPHBHと呼ばれるPHAは高い生分解性および海洋生分解性を示し、商品名「Green Planet」として製品化されています。

 石油由来プラスチック製品の中にも、生分解性を示すものがあります。ポリカプロラクトン(PCL)や、ポリブチレンサクシネート(PBS)などがそれに当たります。PBSは、もともと石油由来製品として開発されてきた歴史がありますが、これまでにそのうち50%をバイオマス化したBioPBSTMが開発されています。

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