プラスチックの問題とバイオプラの基礎:引き伸ばすほど強度が増す新たなバイオプラ(1)(1/2 ページ)
本連載ではバイオマス由来の2種のプラスチックを組み合わせ開発した、引き伸ばすほど強度が増す透明なフィルム素材を紹介します。今回は、プラスチックの問題や解決策として期待されるバイオプラスチックの基礎について説明します。
日本のプラスチック廃棄物量は年間約1000万t
私たちの生活は、衣料品、電子機器、食器類、包装フィルムなどに含まれるさまざまな「プラスチック」に支えられています。ここでは、プラスチックとは合成樹脂全般を指します。有機原料から合成されるプラスチックは、有機合成化学技術、高分子化学技術の発展に伴って、多彩な機能を実現するとともに、安価に大量生産が可能となりました。
プラスチックは多くの場合、軽量で成形しやすいばかりではなく、耐候性や耐腐食性にも優れています。これらに加えて、基本的に可燃性であるため、使用後には焼却処理することができます。
このように便利に使えてかつ気軽に捨てられることは、長きに渡りプラスチックの最大の利点と考えられ、さまざまな製品に利用されてきました。まさに、大量生産、大量消費社会を支えてきた立役者といえるでしょう。その生産量は世界で年間4億トン(t)以上にもおよび、今後もさらに増加していくと予想されます。今や、プラスチックなくしてはわれわれの生活は成り立たないといっても過言ではありません。
しかし、近年この大量に生産/廃棄されるワンウェイプラスチック経済が見直されつつあります。多くの製品がプラスチック製に置き換えられた現在では、日本における生活ごみ全体に占めるプラスチックごみの割合は、容積比としておよそ4割に達するといわれており、廃棄物の中心となっています。
これを重量で示した場合、プラスチック廃棄物量は、日本において年間1000万t近く、世界全体では、3.5億tにもなります。今後の生産量の増加に伴って、これらの廃棄物量は一層増加すると予測されます。その結果、適切に廃棄されなかったプラスチックごみの量も増えることとなり、これが環境に悪影響を及ぼす可能性が問題視されています。
プラスチックの安定な性質があだとなり、自然環境に漏出すると簡単には分解されず、蓄積されていきます。これらのごみは河川を流れて最終的に海洋にたどり着くことが多く、回収が困難となるため、とくに海洋環境汚染が深刻です。海洋に流出するプラスチックは、年間およそ800万tとされ、2050年には海洋に存在する生物よりも蓄積したプラスチックの量が多くなるともいわれています。
軽量であるプラスチックは海中を漂うため、海洋生物による誤食が起こったり、ゴーストフィッシング現象が起きたりするなど生物を危険にさらします。風化して発生するマイクロプラスチックによる生態系の破壊も懸念されています。たとえ廃棄が適切でも、焼却時には、温室効果ガスが発生する問題もあります。
これらに加えて、石油資源を原料とするために資源枯渇の問題や、カントリーリスクの問題も指摘されています。このように、プラスチックの継続的な利用に対して警鐘が鳴らされている中で、いかにして問題を回避しつつ経済を発展させていくかが喫緊の課題となっています。
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