クラレがCFRP成形品のボイドを減らすシートと熱膨張で隙間を埋めるシートを開発：材料技術

クラレは、「SANPE Japan 先端材料技術展2023」で、開発品の酸無水物のエポキシ樹脂硬化剤と表面平滑性付与シート、熱膨張シートを披露した。

[遠藤和宏，MONOist]

　クラレは、「SANPE Japan 先端材料技術展2023」（2023年11月29日〜12月1日、東京ビッグサイト）で、開発品の酸無水物のエポキシ樹脂硬化剤と表面平滑性付与シート、熱膨張シートを披露した。

　酸無水物のエポキシ樹脂硬化剤は、従来品よりも低粘度化に対応し幅広い配合に対応する他、粘度変化が小さく良好な作業性と安定した品質を実現している。さらに、硬化物に配合することで柔軟性を付与でき耐衝撃性も高められる。クラレの説明員は「当社における酸無水物の開発は今回のエポキシ樹脂硬化剤が初となる。ニーズを探る目的で今展で初披露した。今後は引き合いがある企業とともに物性などを調べ、採用につなげていきたい」と話す。

酸無水物のエポキシ樹脂硬化剤のイメージ［クリックで拡大］ 出所：クラレ

　フェノキシ樹脂製メルトブローン不織布を用いた表面平滑性付与シートは、炭素繊維強化プラスチック（CFRP）のプリプレグ（中間材料）の表面に乗せて熱プレスすることで、表面平滑性付与シート不使用の成形品と比べ表面のボイドと粗さを減らせ、きれいな外観に仕上げられ、光の反射も均一にできる。

表面平滑性付与シートを用いたCFRP［クリックで拡大］

ボイドが発生した成形品（左）とこの成形品に表面平滑性付与シートを使用したもの（右）［クリックで拡大］ 出所：クラレ

　同社の説明員は「このシートは常温保管にも対応しているため管理しやすい。さらに、一般的なフィルムシートや他原料の不織布シートと比べ、柔軟性もあり追従性に優れ、エポキシ樹脂との相性も良好だ」と語った。用途としては、自動車や自転車、釣り竿のCFRPを想定している。

　熱膨張シートは、短くカットし混合した熱可塑性繊維とガラス繊維（GF）などの強化繊維の紙（混抄紙）を熱プレスした混抄紙コンポジットだ。加熱することで厚さ方向に膨張するため、このシートを部材同士の隙間に配置し、熱をかけると隙間を埋める形でシートが膨張し、部材同士が接着する。

熱膨張シートの膨張前（左）と膨張後（右）［クリックで拡大］

熱膨張シートの膨張前（上）と膨張後（下）のイメージ［クリックで拡大］ 出所：クラレ

　同社の説明員は「このシートは、硬化のために高温で長時間維持する必要はなく、短時間で接着可能だ。加えて、冷蔵／冷凍での保管が必要な接着剤も市場にはあるが、このシートは、熱可塑性の接着剤であるため常温保管に応じ、離型フィルムなどの副資材も必要ない。シート形状のため液漏れの心配もなく必要な場所のみに配置できる。また、発泡剤を使用せずに厚さ方向にのみ膨張することが特徴だ。そのため、膨張時に接着剤がはみださない」とコメントした。用途としてはモーターのローター磁石などの部材接着を想定している。

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