新しいバイオプラスチック「PBS-mb-PA4」の機能:引き伸ばすほど強度が増す新たなバイオプラ(4)(1/2 ページ)
本連載ではバイオマス由来の2種のプラスチックを組み合わせ開発した、引き伸ばすほど強度が増す透明なフィルム素材を紹介します。今回は、バイオマス由来の2種のプラスチックを組み合わせた「PBS-mb-PA4」の特性や機能を調査した結果を紹介します。
前回は、ポリブチレンサクシネート(PBS)とポリアミド(PA4)から成るマルチブロック共重合体「PBS-mb-PA4」の設計と合成について紹介しました。
今回は、PBS-mb-PA4の特性や機能を調査した結果を紹介します。まず、PBS-mb-PA4で使用する9種類の共重合体の熱特性を評価しました。熱重量/示差熱同時測定(TG-DTA)法により、温度上昇に対する重量変化と示差熱を追跡しました。例えば、短/短型共重合体からは、図1のような曲線が得られました。
図1の示差熱曲線(赤色)から融点と分解温度を見積もることができます。これによると、短/短型共重合体は101℃(Tm1)と211℃(Tm2)の2つの融点を持つことが分かります。これは、PBSとPA4のドメインが、それぞれ独立に存在していて、互いに異なる温度で融解していることを示しています。文献値との比較から、低温側のTm1がPBSドメイン、高温側のTm2がPA4ドメインの融点に相当します。
さらに高温になると、重量曲線(青色)において重量減少の観測を伴う吸熱的な示差熱が2つ観測されました。これらはPA4とPBSの分解温度に相当すると考えられます。同様に全ての熱特性を調査した結果、2つの融点および2つの熱分解温度が一様に観測されました。特筆すべき点として、Tm2はPA4のブロック長に対して依存性が高く、短いPA4ブロック長をもつ共重合体は、他と比べて融点が大きく低下しており、分解温度よりも100℃程度低くなっていることが分かりました。このように、融点と分解温度に差があることは、精密な温度制御により、熱分解を抑制しながら熱成形が可能になることを意味します。
これらの共重合体を材料に溶液キャスト法を行いフィルムを得ました。それらのフィルムは目視でも透明性に違いがあることが容易に分かりました。短/短型のフィルムは透き通っており、背後のロゴがよく見えるのに対して、中、長とブロックサイズが大きくなるとフィルムは白濁していきます。実際に、可視光透過率を測定したところ、見た目通り短/短型(青線)は特に高い透過率を示しました。よって、ブロックサイズが透明性にも大きく影響することが分かりました。
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