東武ストアが指静脈による手ぶら決済を開始、酒類対応でセルフレジ利用率60%も:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
東武鉄道と日立製作所は、両社が共同開発する生体認証を活用したデジタルアイデンティティーの共通プラットフォームを採用する初の事例として、東武ストアの越谷店に指静脈認証によるクレジットカード決済が可能なセルフレジを導入し、報道陣に公開した。
まずは数千人が指静脈決済を利用できるように
現時点では越谷店での運用が始まったばかりだが、アイデンティティポータルでの事前登録で約300人、指静脈を登録して決済可能な状態になっている人数が約180人という状況だ。越谷店ではキャンペーン期間中に、指静脈認証による決済が可能な人数を300人以上に増やしたい考え。3店舗でのキャンペーンを経て、以降の認知度向上効果を含めて数千人が指静脈認証による決済を利用できるようになることを目指す。
なお、1日の平均乗降客数が約4万5000人の東武鉄道越谷駅と直結する商業施設「EQUIA」内に入居する東武ストアの越谷店は、1日の来店客数が平均3200〜3300人。通勤客の利用で増加する平日は約4000人に達する。特に、帰宅途中の通勤客が来店する夕刻から夜間がピークになるという。
越谷店は東京都、埼玉県、千葉県に60店舗展開する東武ストアの中でも、セルフレジの利用率は比較的高く45%になる。これは、帰宅途中の通勤客が顧客層の中心であることによるものだ。しかし、大きな課題となっていたのが、従来のセルフレジでは年齢確認が必要な酒類を販売できないことだった。越谷店は6台のセルフレジに対して、有人レジは通常2台(最大3台)という構成。しかし、帰宅途中の通勤客の購買行動としては、総菜と酒類など数点を購入することが多く、列車到着に合わせて来店客が増加するタイミングで有人レジに行列ができ、待たせることになってしまう。客によっては、酒類の購入を諦めてセルフレジを利用する場合もあり販売機会を逸失することになる。
越谷店は東武ストア60店舗の中でも総菜の売り上げが1〜2位を争うほどであり、併せて購入されることも多い酒類の販売にセルフレジを活用できることは大きなメリットがある。今回の指静脈認証による決済の導入により、セルフレジの利用率を現在の45%から60%に高めたい考えだ。「この60%という数字は十分に達成可能だと考えている」(東武ストア 取締役常務執行役員の友竹弘幸氏)。
この他にも、商品購入にかかる時間の短縮も見込める。セルフレジで商品購入にかかる時間は、商品バーコードのスキャンを除くと、ポイントカードの確認やクレジットカードの取り出しなどを含めて約50秒かかる。指静脈認証による決済であれば、2回行う指静脈認証にそれぞれ3秒ほどかかるもののトータルでは25秒と半減させられるという。
なお、東武グループとしては、3店舗での先行運用を通して東武ストアでの利用可能店舗を拡大するだけでなく、スポーツクラブの入退館認証をはじめ商業施設やホテル、アミューズメントなど幅広い分野に導入を広げていく考えだ。併せて、東武ストアの事例を起点に、東武グループにとどまらない導入企業の拡大に向けた提案も進めていく方針である。
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