誤認率は100億分の1以下、NECが顔と虹彩のマルチモーダル生体認証端末を開発:組み込み開発ニュース
NECは同社の顔認証技術と虹彩認証技術を組み込んだマルチモーダル生体認証端末を開発した。搭載した生体認証技術は。顔認証と虹彩認証の照合結果をNECが独自開発したアルゴリズムで統合的に判定することで、登録した本人と他人を誤認する割合(他人受入率)を100億分の1以下にまで減らした。
NECは2020年5月14日、米国国立標準技術研究所(NIST)から世界トップの評価を得ている顔認証と虹彩認証の技術を組み合わせたマルチモーダル生体認証端末を開発したと発表した。登録した本人と他人を誤認する割合(他人受入率)が100億分の1以下であるとともに、約2秒と高速に認証を行えることが特徴。
利用者の身長に合わせて内蔵カメラがカメラの向きや傾き、レンズの焦点、明るさを自動調整して顔と目の位置を捕捉、顔と虹彩を同時に検出する。顔と虹彩の特徴を登録済みの利用者の生体情報と照合し、両者の一致度をスコア結果として算出。これを基に本人確認を行う。従来、個人の身長差にはばらつきが存在することから、顔と比較すると虹彩の位置検出は難易度が高いとされていた。そこで、顔情報から虹彩の位置を迅速かつ正確に特定し、内蔵カメラのピントや照明を自動調整する技術を開発。身長が異なる利用者でも、約2秒と高速に認証を実行する仕組みを実現した。
認証時に端末のパネルに触れる必要はない。このため、両手がふさがっている場合や手袋を着用している状態でも利用可能。また顔認証は利用者がマスクを着用した状態でも実行できる。
マルチモーダル生体認証端末の主な用途としては、国や社会などでの大規模人数を対象としたシステムでの活用や高いセキュリティを求めるオフィスへの入退室、衛生面に配慮した服装やマスク着用が必要な食品工場、工場内のクリーンルーム、医療現場での入退室、ATMでの本人確認や店舗での迅速な決済などを想定。2021年度までに、まずは部屋の入退室や決済などの用途での実用化を目指す。
NECは現在、顔認証や虹彩認証以外にも、指紋/掌紋認証、指静脈認証、声認証に加えて、耳穴に送出した検査音とその反射音で認証を行う耳音響認証という同社が「Bio-IDiom(バイオイディオム)」と総称する6つの生体認証技術を開発している。中でも今回、マルチモーダル生体認証端末に搭載された顔認証技術と虹彩認証技術は、NISTが実施する認証技術のベンチマークテストで共に「第1位」を獲得するなど高い性能評価を与えられている。
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