手かざし決済の未来が近づく、富士通が生体認証ソフトをバージョンアップ:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
富士通は2019年11月18日、手のひら静脈認証を中心に認証機能を提供するソフトウェア製品「FUJITSU Security Solution AuthConductor V2」を発売した。同システムは、PCログオンや入退室管理など企業内の認証を統合管理する他、一般利用者向け大規模サービスへの生体認証機能組み込みも対応する。
富士通は2019年11月18日、手のひら静脈認証を中心に認証機能を提供するソフトウェア製品「FUJITSU Security Solution AuthConductor V2」を発売した。同システムは、PCログオンや入退室管理など企業内の認証を統合管理する他、一般利用者向け大規模サービスへの生体認証機能組み込みも対応する。手をかざすだけで決済が完了するといった次世代キャッシュレスの実現に向けて期待がかかる技術だ。
パスワードや認証カードなど、従来の認証手法で課題となる紛失(忘却)や漏えいのリスク。生体認証は体の特徴により個人を認証するため、これらのリスクを大幅に低減させられる。PCのログオンやスマートフォンのロック解除といったセキュリティ用途の他、勤怠管理や会員管理、ショッピングなど新たな分野でも生体認証活用の裾野が広がっている。
生体認証に用いる身体部位は、顔や指紋、虹彩、そして指や手のひらをめぐる静脈など多岐に渡る。同日開催の記者説明会に出席した富士通 デジタルビジネス推進本部 パームソリューション統括部 シニアマネージャーの森樹久氏は「生体認証は色々な方式があるが、それぞれ特徴や得意不得意がある。いろいろな利用シーンに全てマッチしている生体認証はない」と解説。認証精度の高低や、利用シーンがパブリックかパーソナルかといった評価軸で最適な手法を選定すべきと指摘する。
顔認証技術は監視カメラやWebカメラなど既設の装置を使って認証できるメリットがあるが、写真や動画を使った「なりすまし」に弱いデメリットもある。指紋認証はセンサーが小型かつ低価格なため、PCやスマートフォンで広い採用実績がある。一方で、手荒れなどによって指紋状態が変わりやすく認証精度に課題がある。
静脈認証は体内を走行する血管によって認証する。体外の生体情報を用いる生体認証手法と比較して、偽造が困難かつ、高い認証精度が期待できる。また、登録できない人が非常に少ないこともメリットとなる。富士通が開発する静脈認証技術「PalmSecure」は太い血管が走行する手のひらで非接触認証を行うため、精度が寒暖に左右されにくく衛生的な認証が可能だ。認証精度は他人受入率が0.00001%以下で、認証速度も体感で1秒を切る程度だという。
富士通は、手のひら静脈認証をこれまでに世界約60ヵ国、8200万人に利用される技術まで仕立て上げた。高いセキュリティが求められる金融系の採用事例が多く、大垣共立銀行のカードレスATMやJRA(日本中央競馬会)のキャッシュレス投票を実現する重要な要素技術となっている。
また、ブラジルのブラデスコ銀行と同国年金機構では年金不正受給対策として、手のひら静脈認証を採用している。ブラジルでは年金不正受給対策として、年金受給者に生存証明の提出を毎年求めており、年金受給者には大きな負担が発生していた。そこで、同銀行はATMに手のひら静脈認証機能を搭載し、同ATMを利用した年金受給者の利用記録を同国年金機構に提出することで、年金受給者の生存証明を免除する取り組みを始めた。2007年より稼働し、4万台以上のATMに手のひら静脈認証を搭載。登録ユーザー数は約1600万人だという。
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