デジタルトリプレットとは何か デジタル化で一周回って重要になる現場力の必要性:IVI公開シンポジウム2024春(2/2 ページ)
IVIは「IVI公開シンポジウム2024-Spring-」を開催。本稿では、IVI 理事長の西岡靖之氏が、IVIオピニオンとして講演した「デジタル時代、それでも現場! トリプレットにこだわる理由」の内容を紹介する。
最適な形でデジタル化を進めるためのツール
工場において、デジタルトリプレット化が進んだとしても、問題点を認識し定義する役割は人であることは変わらない。「デジタル化といっても現在ある要望をそのままシステム化やデジタル化をしてもそれほど意味はない。あるべき姿を定義してからシステム化していくことが重要だ」と西岡氏は訴える。
そこで、こうした問題点を見つけ出し、結び付け、解決に導くためのツールとして、IVIでは先述したようにさまざまなモデルを用意している。その1つが参照モデルであるIVRAだ。IVRAは、ドイツのインダストリー4.0で示された参照モデル「RAMI4.0」と同様に、製造工程を3次元の立方体モデルで表現したものだ。日本的なモノづくりの要素を盛り込み、Plan、Do、Check、ActionというPDCAサイクルや、クオリティー(Q)、コスト(C)、デリバリー(D)、環境(E)など、製造現場の改善活動で使われる要素を取り込んだことが特徴。加えて、これらの立方体モデル(SMU)を組み合わせることで製造業の多様な業務の全体像を捉えることができる。これらを活用することで、現在の姿とあるべき姿を容易に定義することができる。
これらに加えて、PSLXなどを通じて業務アプリをブロックとしてつなげていくことで全社最適のシステムを構築する。「個別最適に陥らないようにするためには、全てがつながる仕組みとしなければならない。そのためには共通部と個別部が切り分けられるシステム構成が必要であり、データとロジックが分離できていることが必要になる」と西岡氏は語る。
「まずはやってみる」でタブーにも挑戦
IVIではこれらを簡単に実現するために、さまざまな便利ツールを用意し、会員内外に提供している。例えば、PSLX共通辞書に対応するデータセットを持ち、業務アプリを組み立てるための部品となるアプリである「PSLXブロックアプリ(無償)」や、温度、湿度、照度、開閉、向き、加速度、電流値を定期的にサーバに送る「10万円CN-IoTキット(有償)」などを既に展開している。
こうしたツールを活用し「まずはやってみること」を西岡氏は訴える。「これからの製造業の勝ち筋はすり合わせと組み合わせで生まれる。とんがった個性、卓越した技術、大胆に合わせる勇気というサイクルで挑戦し続けることが重要だ」(西岡氏)。その上で「デジタルトリプレットの環境が定着すれば、あえてタブーに挑戦するということも可能となる。例えば、個別最適や属人化、自前主義なども、あえてそのリスクを踏まえた上で挑戦するのは重要だ」と西岡氏はエールを送っている。
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