2030年の製造業のあるべき姿と必要になる技術は何か、IVIが歩んだ8年の軌跡:IVI公開シンポジウム2023春(1/3 ページ)
IVIは「IVI公開シンポジウム2023-Spring-」を開催。本稿ではIVI 理事長の西岡靖之氏による講演「日本企業の大躍進2023〜つながるものづくりの実現シナリオとデジタル戦略ロードマップ」の内容を紹介する。
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加するIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は2023年3月9〜10日、「IVI公開シンポジウム2022-Spring-」を開催した。今回はその中から、IVI 理事長の西岡靖之氏(法政大学教授)が、IVIの今後の活動の方向性について語った「日本企業の大躍進2023〜つながるものづくりの実現シナリオとデジタル戦略ロードマップ」の内容を紹介する。
IVIは8年目を迎えさらに加速
IVIは、モノづくりとITの融合によって可能となる新たな姿を、現場の課題感を起点に“緩やかな標準”というコンセプトで実現しようとしている団体だ。日本機械学会 生産システム部門の「つながる工場」分科会を母体とし、2015年6月に設立された。
設立8年となるIVIについて西岡氏は、以下の10の特徴を訴える。
- 製造業のユーザーが主体で活動している
- 具体的な事例などが豊富にある
- 技術的に先進的な取り組みをしている
- 無償で使えるツールがある
- 先進的な情報やトレンドが知れる
- ツールや標準などの手法がある
- 海外に向けて積極的に発信している
- 現場の具体的な困りごとを理解している
- 中小企業や製造業のつながる機会が多い
- 技術を実際に試せる、トライできる環境
これらで示されているように、IVIは多くの製造業で実際にモノづくりを行っている担当者が参加し、その解決策を共同で解決する場として、実践的な取り組みを進めてきたことが特徴の1つだ。活動の根幹は「現場の困りごと」を起点としていることで、この困りごとごとに解決策を模索し、それを共通言語化していく「業務シナリオWG(ワーキンググループ)」が土台となっている。
一方で、国際連携活動や活用ツールや支援ツールの要因など、これらの個別の活動を全体的な価値につないでいく活動なども積極的に取り組んでいる。現場に寄り添いながらも、業界全体の大枠の話にも関与し、両面での課題解決を進めていることも特徴だといえる。
西岡氏は「8年目を迎え、設立当初の方向性を継続しながらさらに加速していく。製造現場の課題解決を起点とし現場に寄り添った解決手法などの構築を進めながら、少し先の将来を描いたビジョンの構築なども進んできた。これらに対する具体的な支援ツールや手法などもそろいつつあり、土台は整ってきた」と語っている。
「つながる工場」「コンビニ工場」「シェアリング工場」
活動を進めていく中で、2030年に向けたモノづくりの在り方についてのビジョンなども策定。その姿として「つながる工場(コネクテッド工場)」「シェアリング工場」「コンビニ工場」という3つの方向性を示している。
例えば、「コンビニ工場」は、消費者の本当に望むものだけを消費者のそばで作るというコンセプトの新たなモノづくりの姿だ。コンビニエンスストアのように身近な環境にデジタルファブリケーションなどを駆使した工場を設置することで、欲しいものをすぐに届けられる仕組みを構築する。個別の多様なモノづくりに対応するためにはマスカスタマイゼーションが注目されているが、これをさらに推し進め、販売後でもさまざまな「コト」に対応して製品機能が追加できる「オープンカスタマイゼーション」の世界へと変わることを描く。
西岡氏は「オープンカスタマイゼーションの世界が実現できるようになると、製造業のビジネスモデルも変わってくる。現在はモノづくりの仕組みとして多くのモノを大量に作った方が効率が良いため、大量生産に必要な資本を用意できる大企業が中心となり、その仕事の一部を中小企業に流すというような仕組みとなっている。しかし、モノづくりの効率が量によって変わらないようになると、多様なニーズに対応できる中小企業が身近な環境でそれらを拾い上げて形にする姿が生まれる。大企業と中小企業の位置関係が逆転する可能性もある。そういう姿がゴールのイメージだ」と語っている。
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