デジタルトリプレットとは何か デジタル化で一周回って重要になる現場力の必要性:IVI公開シンポジウム2024春(1/2 ページ)
IVIは「IVI公開シンポジウム2024-Spring-」を開催。本稿では、IVI 理事長の西岡靖之氏が、IVIオピニオンとして講演した「デジタル時代、それでも現場! トリプレットにこだわる理由」の内容を紹介する。
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加するIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は2024年3月14日、「IVI公開シンポジウム2024-Spring-」を開催した。本稿では、IVI 理事長の西岡靖之氏が、IVIオピニオンとして講演した「デジタル時代、それでも現場! トリプレットにこだわる理由」の内容を紹介する。
モノづくりのデジタル化を一歩一歩具体的に進めてきたIVI
IVIは、モノづくりとITの融合によって可能となる新たなモノづくりの姿を、現場の課題感を起点に“緩やかな標準”というコンセプトで実現する団体だ。日本機械学会 生産システム部門の「つながる工場」分科会を母体とし、2015年6月に設立された。2011年にインダストリー4.0が提唱され、あらゆる産業でデジタル技術による変革が進む中、日本機械学会では最初の参照モデルを2014年に作成。その後、IVIにおいて、生産現場をコアにした情報連携の仕組み作りに取り組んできた。
日本のモノづくりの良さを織り込んだスマート工場の基本モデル「Industrial Value Chain Reference Architecture (IVRA)」や、異種環境間でのデータ連携を実現する企業間オープン連携フレームワーク「コネクテッドインダストリーズオープンフレームワーク(CIOF)」など、さまざまな仕組みを実際に作り、国際的な発信なども進めてきている。
さらに、これらの仕組みを使いこなすために、社内での言葉やプロセスを形式知化し、標準化するための「スマートシンキング」や、製品ライフサイクル全体でのバリューチェーンを言語化する「PSLX(Product and Service Lifecycle Transformation)」など、プロセスの言語化や標準化に関係するツールなども用意し、製造業が真の意味で、モノづくりプロセスのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するのに必要な道具を用意してきた。西岡氏は「最初は絵に描いた餅のようなビジョンだったが、IVIの活動を通じて、徐々に具体的に動く仕組みを作ることができるようになった」と語る。
デジタルツインの正しい理解とデジタルトリプレットの位置付け
これらを推進する中でIVIが目指したのがモノづくりにおける「デジタルツイン」の実現だ。デジタルツインは「デジタルの双子」を意味し、フィジカル空間の情報をIoTなどを活用して、ほぼリアルタイムでサイバー空間に送り、サイバー空間内にフィジカル空間の環境を再現するというものだ。これらを実現するためには、まず暗黙知をドキュメント化して形式知化していかなければならない。「製造現場ではまずそのノウハウや暗黙知のようなものをドキュメント化するところが難しい。そういう使えそうな情報をデータ化し、それをサイバー空間に持っていくこと段階のハードルが高い」(西岡氏)。
こうしたデータの蓄積により「見える化」や「データ分析」は行うことができるが、製造現場の中で発生する「問題認識」や「目標設定」「問題解決」については、人が行う必要がある。つまり、デジタルツインはフィジカルと人をサイバーによりつなぐ位置付けになる。
これを押し進め、問題解決の領域についてもデジタル空間で行えるようにしたのが「デジタルトリプレット」だ。デジタルトリプレットは、デジタルツインにベテラン技術者の知恵やノウハウなど、人の要素を加えたものとなる。「デジタル化が進みデジタルツインが当たり前のものとなれば、その先であらためて現場力や人のノウハウがあらためて重要になる」と西岡氏は考えを述べている。
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