設計品質と量産品質の違いとは?:ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル(7)(2/2 ページ)
連載「ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル」では、「オリジナルの製品を作りたい」「斬新なアイデアを形にしたい」と考え、製品化を目指す際に、絶対に押さえておかなければならないポイントを解説する。連載第7回は「設計品質」と「量産品質」の違いについて取り上げる。
量産品質の維持と管理
QC工程表、作業標準書、治具を作成するのは、製品の組立メーカーの製造技術者であり、設計者はそれらを承認/確認する。また、これらの作成に対して、設計者から要望を出すときもある。例えば、図3の工程3で示した「トルク:0.8Nm」の設定値などだ。また、部品の位置決めに高い精度が必要であれば、治具の製作を依頼することもある。
そして、その承認/確認されたQC工程表、作業標準書、治具の状態を、量産期間中も維持し続けられるよう管理するのが品質管理部門だ。この品質管理部門も、製造技術者と同じ組立メーカーの所属部門となる。
中国で不良品が発生しやすい原因
中国で不良品が発生しやすい原因の一つに、QC工程表、作業標準書、治具が適切に作成されていないことが挙げられる。量産開始前に、日本の設計者がそれらの確認を行う必要があるが、優秀な日本の組立メーカーと一緒に仕事をしてきた日本の設計者は、この確認を怠りがちなのだ。その理由は、日本ではあまり不良品が発生しないので、量産開始前に詳細に確認する習慣がないからだ。
中国の製造ラインの作業者は頻繁に入れ替わる。また、中国人は国民性として、作業者の独自の判断で作業標準書に記載のない作業をしてしまうことがある。よって、品質管理部門による維持管理が日本と比較して難しいのだ。設計者のいるメーカーにも品質管理部門はあり、製造を依頼する側として定期監査を行うのが通常であるが、中国は近いといっても外国であり、頻繁に監査に行くことはできない。これらのことから、中国では不良品が発生しやすいのだ。
モノづくりベンチャー企業が量産にたどり着いた後
ベンチャー企業が、多くのハードルを乗り越えて量産までたどり着いたとしても、それから設計者の意図した製品や部品を数年にわたって作り続けることは簡単ではない。ベンチャー企業の多くは、製品の組み立てを外注するが、その際、設計を担うベンチャー企業の役割をしっかりと理解していただきたい。 (次回へ続く)
筆者プロフィール
オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)
上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。
◆ロジカル・エンジニアリング Webサイト ⇒ https://roji.global/
◆著書
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