レゾナックのKPRプラントの過去〜現在、プラからアンモニアを作れる量を拡大:リサイクルニュース
レゾナックは「nano tech 2024 第23回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」に出展し、川崎プラスチックリサイクル(KPR)事業で運営しているKPRプラント(神奈川県川崎市)の取り組みについて紹介した。
レゾナックは「nano tech 2024 第23回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」(2024年1月31日〜2月2日、東京ビッグサイト)に出展し、川崎プラスチックリサイクル(KPR)事業で運営しているKPRプラント(神奈川県川崎市)の取り組みについて紹介した。
使用済み衣料からアクリル繊維を生産する「繊維to繊維モデル」を構築中
同社はアンモニア製造で使う水素源を確保する目的で2003年に川崎市にKPRプラントを設立した。KPRプラントでは、低温/高温ガス化炉やガス洗浄設備、CO軟化設備、脱硫設備により、使用済みプラスチックを合成ガスとした後、水素とCO2へリサイクルしている。
再生した水素は、アンモニアの製造で利用され、アンモニアはアクリロニトリルの生産で使われている。アクリロニトリルはアクリル繊維の材料となり、アクリル繊維は衣料の素材として採用されている。
レゾナックのブース説明員は「KPRプラントは、年間のリサイクル処理量が7万t(トン)で、年間12万tのアンモニアを製造している。現在、KPRプラントにおけるアンモニアの製造では、全体のうち60〜70%は自治体から回収した使用済みプラスチックを、残り30〜40%は都市ガスを材料に利用している。KPRプラントの運用を開始したばかりの2003年では、使用済みプラスチックがアンモニアの材料として50%も利用されておらず、都市ガスが材料として主に使用されていた。生産プロセスの最適化などで使用済みプラスチックの利用率を上げていった」と話す。
使用済みプラスチックを原料にした上記のアンモニアは化石燃料由来のアンモニアに比べ80%強の温室効果ガス(GHG)を減らせることが判明している。GHGの算出で採用したCO2排出量の計算プロセスは第三者機関である日本LCA推進機構に環境配慮の国際規格に準拠することが認められている。さらに、持続可能な製品の国際的認証制度であるISCC PLUS認証を取得した。使用済みプラスチックを原料としたISCC PLUS認証の取得は国内初だという。
レゾナックのブース説明員は「KPRプラントで生産したアンモニアのうち30%はアクリルニトリルの製造をメインに当社が利用し70%は他社へ販売している。アンモニアの販売先で一番大きいのは電力会社で石炭で発電する際に必要な脱硝で使用されている」と語った。
一方、再生したCO2はドライアイスあるいは液化炭酸ガスの素材として利用され、そのドライアイスと液化炭酸ガスは商品化されている。
同施設では一部の産廃プラスチックの受け入れも開始している。2022年1月にはリサイクル受け入れ量が累積100万tに達した。現在はさらなる資源循環を実現するために、伊藤忠商事と協力して回収した使用済み衣料を元にアクリル繊維を生産する「繊維to繊維モデル」の構築を進めている。
繊維to繊維モデルでは、回収した使用済み衣料を中間処理した後、使用済みプラスチックと同様の手順で合成ガス化する体制の構築を目指し検証中だ。「使用済み衣料はアクリル繊維のみで構成されていないため効率的に合成ガス化するのが難しい。現状はこの問題を解消するために研究を進めている」(レゾナックのブース説明員)。
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