レゾナックが「共創の舞台」に半導体材料の開発を加速するVR技術を導入:マテリアルズインフォマティクス
レゾナックは、異なる材料の界面における分子挙動の解析などを実現するために、ヘッドマウントディスプレイを用いたVR技術を開発した。
レゾナックは2023年2月20日、横浜市神奈川区の研究施設「共創の舞台」で記者会見を開き、VR(仮想現実)技術を用いた材料開発を紹介し、体験会も開催した。
0.1nmのスケールで分子構造の3Dデータを直感的に操作可能
同社はこれまで、材料で生じる分子レベルの相互作用について、分子シミュレーションを用いて計算し、結果の解析は計算科学の専門家が持つ経験に頼っていたケースが少なくなかったと、レゾナック 理事 兼 計算情報科学研究センター長の奥野好成氏は指摘する。
「無機基板と有機分子の吸着性や接着性など、異なる材料の界面に対する相互作用については分子動力学計算を行う。計算結果は、グラフソフトなどを利用し2次元のイメージ画像に変換して解析する。しかし、2次元のイメージ画像では、熟練の計算科学専門家でも、分子結合をはじめとする挙動メカニズムの解明が困難で、統計的な解析にとどまることが多く、材料開発につながるレベルの分析が非常に難しかった」(奥野氏)。
このように複雑で困難だった、異なる材料の界面における分子挙動の解析などを実現するために、同社は、ヘッドマウントディスプレイを使用したVR技術活用の検討を2022年後半に開始し、2023年に入って実用化のめどをつけた。今回の技術は、異なる材料の界面に対する相互作用について分子動力学計算で導き出した結果などを市販のソフトウェアに取り込み3Dモデルとし、ヘッドマウントディスプレイで見られる。
この技術を導入することにより、0.1nmのスケールで分子構造の3Dデータを直感的に操作しながら、3次元的に基板と分子の界面を確かめられる。結果として、計算科学の専門家と材料開発の担当者が、基板の原子と有機分子の分子鎖が結合する様子などを理解しやすくなり、解析が容易になる。
奥野氏は、「従来、当社の計算情報科学研究センターは、シミュレーションベースで新素材の開発を達成しても、2次元のイメージ画像や計算データでは、素材開発の担当者がシミュレーションを深く理解できず、実際に開発されないというケースがあった。今回の技術により、素材開発の担当者がシミュレーション結果を把握しやすくなっただけでなく、計算科学と材料開発の専門家からさまざまなアイデアがもらえるようになり、新素材の開発がスムーズになった」と効果を語った。
今回の技術を応用し、自動車衝突時における部品および素材の変化をVRで確認できるシステムも開発し、運用を開始している。なお、同社の計算情報科学研究センターでは、新技術に利用するヘッドマウントディスプレイとして、「Meta Quest(メタクエスト)2」を4台備えているという。
体験会では、参加した記者がMeta Quest2を装着し、シリカ(SiO2)基板上におけるイノシン酸(C10H13N4O8P)の分子動力学計算結果をイメージしたVRを操作した。
居室エリアはフリーアドレスを採用
体験会後は会場を移して、共創の舞台内にある居室エリアと5階のラウンジを披露した。居室エリアは、共創の舞台に入居する計算情報科学研究センターや材料科学解析センター、プラントソリューションセンター、エンジニアリングセンター、化学品管理部 安全性評価グループのスタッフが執務を行うフロアで、フリーアドレスを採用しており、各センターとグループが情報交換やコミュニケーションが行えるようになっている。5階のラウンジは、オープンスペースで、食事や打ち合わせが行える他、隣接するカンファレンスルームは最大100人を収容できる。
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