“島津タイマー”や「標準正規分布表」など「品質」に注目が集まった2023年:MONOist 年間ランキング2023(2/2 ページ)
2023年にMONOistで最も読まれた記事は何だったのでしょうか。今回はMONOistの全記事の中で2023年に読まれた記事のトップ10を紹介します。
2位には5年以上読まれる「標準正規分布表」の記事がランクイン
2位には、飯沼ゲージ製作所の土橋善博氏に2015〜2018年に執筆いただいていた連載記事「3D設計推進者の眼」から、第31回の「3σと不良品発生の確率を予測する『標準正規分布表』」がランクインしました。
実に5年半前に掲載された記事なのですが、公開以降ずっと長く読み継がれている記事です。この記事は、製品品質に対して大きな影響を与える“バラツキ”をどう管理すべきかということを解説したものです。±3σや±6σで収まるような正規分布をどう管理し基準化していくかということを紹介しています。MONOistの読者調査などを見ても、人材不足や熟練技術者の引退などが進む中で「設計者の技能不足」や「基礎的な経験の不足」は上位に挙がってきています。この記事で説明されている内容は、新しいものではないですが、普遍的な内容を基礎から分かりやすく紹介しているため、長く評価を受けていると考えています。
3位はニデックの後継問題を示した記事
3位はニデック(旧:日本電産)の決算発表と併せて、前社長である関潤氏退社後のドタバタを紹介した「日本電産前社長が残した“負の遺産”、リコールに発展する可能性も」となりました。
関氏はニデック創業者で現代表取締役会長の永守重信氏に後継者として請われる形でニデックに入社し、2021年にCEOに就任しました。しかし、2022年4月には永守氏がCEOに復帰し、関氏はCOOに降格。その後、車載事業の業績悪化の責任を取らされる形で退社し、現在は台湾の鴻海精密工業でEV担当最高戦略責任者を務めています。この記事では、永守氏がこの関氏時代の業績を“負の遺産”として手厳しく糾弾している様子を紹介しています。一連の話題を通じて、創業社長からの後継問題の難しさが表れていると考えます。
4位はリチウムイオン電池の解説記事、同連載はトップ10に5本
4位は日本カーリットの川邉裕氏による連載「今こそ知りたい電池のあれこれ」の第2回「リチウムイオン電池で発熱や発火が起きる要因を整理しよう」がランクインしました。
ちなみに7位「電池の『セル』『モジュール』『パック』、その違いをおさらい」、8位「トヨタも採用する『バイポーラ型電池』、出力を向上できる仕組みとは」、9位「使用済みリチウムイオン電池のリサイクルは今、どうなっているのか」、10位「なぜリチウムイオン電池は膨らむ? 電解液を劣化させる『過充電』『過放電』とは」もこの連載からランクインしています。この連載も2021年1月に開始したものですが、それぞれの記事が非常に長く読まれている記事だといえます。
4位に入ったのは、さまざまな機器として普及が進んでいる一方で、事故などの話題もよく耳にするようになった、リチウムイオン電池の発火や発熱の仕組みについて分かりやすく解説した記事です。どういう仕組みで発熱や発火が起こり、それを抑えるためにどういうことを考えるべきかを説明しています。リチウムイオン電池の利用は自動車をはじめ、今後ますます増えることは明らかであり、あらためて基本的な仕組みを知りたいというニーズがあり、これらの連載記事が長く人気記事となっていると考えています。
事故や品質に関する記事がよく読まれた……?
さて、ここまで紹介した記事に加え、5位「品質管理に必須の統計的手法『X-R管理図』『P管理図』の作り方」、14位「ホンダが燃料ポンプで113万台のリコール、『検証を受けて対象を拡大』」、17位「ダイハツの認証不正、トヨタ社長『×を○に修正するより根が深い』」など、2023年は品質不正や事故、またその対策となる手法などについての記事がよく読まれた1年だったといえます。
品質不正について、新たな問題が露見することはそろそろ終わりにしてもらいたいと思いますが、現実を見るとおそらくこの問題は2024年以降も続くと見ています。その意味でMONOistとしても引き続き、この問題に役立つようなニュースや解説記事をさらに強化していくつもりです。2020年から続いてきたコロナ禍も2023年で一段落し、2024年はいよいよフラットな形でビジネスを加速させられる1年となります。MONOistでもこうした新たなビジネスの立ち上がりを加速させるような情報発信を進めていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。
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