日本電産前社長が残した“負の遺産”、リコールに発展する可能性も:製造マネジメントニュース(1/2 ページ)
日本電産は2023年3月期 第3四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比20.8%増の1兆6997億円、営業利益は同6.8%減の1244億円、当期純利益は同4.8%増の1040億円だった。
日本電産は2023年1月24日、オンラインで会見を開き、2023年3月期 第3四半期(2022年4月1日〜12月31日)の決算を発表した。売上高は前年同期比20.8%増の1兆6997億円、営業利益は同6.8%減の1244億円、当期純利益は同4.8%増の1040億円だった。
前年同期と比べて為替変動によるプラスの影響があったものの、部門別では精密小型モーターと「家電・商業・産業用」が減収だった。営業利益は構造改革費用の計上が響いた他、部門別では精密小型モーター、車載、家電・商業・産業用などが前年同期比で減益となった。
第3四半期としては売上高と当期純利益が過去最高を更新したものの、2023年3月期通期(2022年度)の業績予想は営業利益と当期純利益を下方修正した。営業利益は直近の予想から1000億円減の1100億円(前年度比35.4%減)に、当期純利益は1050億円減の600億円(前年度比55.8%減)を見込む。売上高は1000億円増の2兆2000億円(前年度比14.7%増)に上方修正した。想定為替レートは変更せず、1ドル=110円、1ユーロ=125円としている。
業績予想の下方修正の要因として、IT機器や家電などの出荷のピークアウト、自動車のグローバル生産台数の回復の遅れ、中国のロックダウンでEV(電気自動車)の生産が減速した点、米国の住宅着工件数のスローダウン、設備投資関連需要のピークアウトを挙げている。
また、構造改革費用の計上も下方修正に影響した。構造改革費用はおよそ500億円となる。製品の世代交代による収益構造の改善や、固定費の大幅低減など抜本的な改革を実施し、2023年度のV字回復を目指す。
新体制に向けて「ごみをきれいにする」
構造改革費用は、「欧州の負の遺産」(日本電産 代表取締役会長の永守重信氏)の片付けなどに充てられる。“負の遺産”による品質問題がリコールに発展することも想定して500億円程度を見込んでいる。
欧州には、ウオーターポンプやオイルポンプなど車載用モジュールの他、エンジン冷却やABS、ステアリングやシートの調整などの車載用モーターの製造拠点がドイツにある。フランスにはステランティスとの合弁会社であるeAxle(イーアクスル)の生産拠点もある(2022年9月から稼働)。また、2022年10月には駆動用モーターを生産するセルビア工場が完成した。
“負の遺産”について永守氏は次のように説明した。「創業から50年を迎え、垢がたまってきた。『量を作ったけれどもその量をもう使っていない』という小さな垢だけでなく、外部から招いた前の経営陣(関潤氏)が残していった負の遺産という大きな垢もある。このごみを2022年度中に全てきれいにしたい。2023年4月に社長候補となる副社長を5人選出し、2024年には新社長が就任する。その門出に向けて、全て始末する」と述べた。
また、車載事業本部については「欧州が問題を起こした。前の経営陣は物事の処理が遅く、客先や工場に出向かないなど現場主義が行われないまま、さまざまな問題が半年、1年と放置されてきた。品質問題を含めて、問題にすぐ対応すればよいが、放置すると腐って損害が広がり社内外に迷惑が掛かる。(関氏に影響を受けた)車載事業本部の企業文化が、大きな損害の要因である。現場での指導を重ねて、7割ほどはもともとの日本電産の文化に戻ったのではないか。これを完全に元に戻す」(永守氏)とコメントした。
日本電産 代表取締役社長執行役員の小部博志氏は「前社長の情報漏えいとみられる事実無根の記事がメディアに掲載されている。こうした記事により企業文化が毀損され、その対応に追われた」と述べた。これに伴い、東洋経済新報社に続いてダイヤモンド社が2023年1月24日に提訴された。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.