日本電産前社長が残した“負の遺産”、リコールに発展する可能性も:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
日本電産は2023年3月期 第3四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比20.8%増の1兆6997億円、営業利益は同6.8%減の1244億円、当期純利益は同4.8%増の1040億円だった。
利益度外視の第1世代eAxleを絞り、黒字化へ
車載事業は、“負の遺産”の清算だけでなく、駆動用モーターやeAxleの収益化が2023年度に向けた課題となる。
2022年度下期からeAxleの第2世代品を量産し、2023年度に年度単位でのeAxleの黒字化を達成する計画だ。第1世代品が利益度外視で早期投入やシェア拡大を優先していたのに対し、第2世代品は性能向上と原価低減にこだわった。また、2025年度に累損を解消し、競争力をさらに高めた第3世代品を2025〜2026年ごろに投入することによって高収益化を加速していくと見込んでいる。この戦略は前社長の関氏のころから変わっていない。
第1世代品は「無理な価格」(永守氏)で受注したものがあるため、納入先に値上げを認めてもらうか、値上げできないのであれば取引をやめることも視野に入れて、第1世代品の量を減らすことに注力する。
第2世代品は既に「コスト競争力が高く評価されている」(日本電産 常務執行役員で車載事業本部副本部長の早舩一弥氏)。第2世代品の生産は信頼性の確認などに時間を要して当初よりも遅くなったが、2023年2月からスタートする。出力100kWのタイプから量産を開始し、2023年度の第1四半期で150kWのタイプも量産する予定だ。第2世代品の比率を2023年度で74%まで増やすという。
2022年度は、納入先の自動車メーカーが見通しを引き下げたこと、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で工場の稼働率が低下したことなどから、eAxleの販売台数は当初の予想を下回る見通しだ。収益を重視したモデルミックスに転換していることも台数減に影響した。
2023年度も納入先の自動車メーカーが強気な見通しを引き下げたことなどが理由となって当初の予想よりもeAxleの販売台数は減少する。その一方で、モーター単体やインバーターの受注を増やしていく。2022年9月にはステランティスとの合弁会社で駆動用モーターの量産が始まっており、欧米市場での売り上げ拡大につながると見込む。
第2世代品によって黒字化を達成した後、第3世代品によって売り上げ規模を拡大していく考えだ。現在、2029〜2030年に投入する第4世代品も含めて全ての世代を並行して開発しており、第3世代品はコスト半減、最低でも30%以上のコスト削減を目指している。
eAxleの市場は、中国では「本格的な成長期に入る目前」であるという。今後、eAxle市場の成長期は、自動車メーカーによるeAxleの内製化や他のサプライヤーとのコスト競争なども見込まれる。これに対しては、大型設備投資による量的拡大、中国自動車メーカーの取引先5社への拡販、欧米自動車メーカーからの新規受注などによって手を打つという。「自動車メーカーの内製はコスト競争力が低く、サプライヤーへの外注が増える」(永守氏)と予測している。
中国では政府からの補助金終了や自動車メーカーの値上げによる新車販売の減速が懸念されている。これに対し、早舩氏は「直近では一部影響が出るかもしれないが、新エネルギー車への需要は根強い。2倍、3倍といった成長ではないにしても、成長は見込んでいる」と述べた。
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